第2部・15話後編『白雪の知らない夜。ストーカーの再接近と、レオン&猫の極秘作戦』
猫
『ニャア。(勝手に感動するな)』
ガラッ。
押し入れの中で正座していたセツナと、
カズマの目が合った。
セツナは、ほんの少しだけ瞬きをして――
低く、途切れ途切れに言った。
「……任務……中。
……気配……消してた。
……騒がしい……」
カズマ
「…………」
猫(棚の上)
『ニャア。(出たニャ……“押し入れセツナ”……)』
レオン
「セツナ!? なんで押し入れに……!」
シオン
「……麗奈の……影……?」
カズマは無言で、押し入れの戸を――
ス……ッ……
そっと閉めた。
ドタバタでぎゅうぎゅう詰めになった201号室。
カズマが押し入れをそっと閉めた直後――
ス……ッ……
押し入れの戸が、内側から静かに開いた。
セツナが、音もなく姿を現した。
レオン
「ひっ……!?」
猫(棚の上)
『ニャア。(出た……押し入れの亡霊……)』
セツナは棚の上の猫を一瞥し、
無言で手を伸ばした。
猫
『ニャッ!?(おい待て! 俺は抱っこされるタイプじゃ――)』
しかし抵抗する暇もなく、
セツナは猫をひょいと抱え上げた。
まるで“武器を回収する”ような動きで。
猫
『ニャアア!(扱いが完全に装備品だ!!)』
セツナは猫を抱えたまま、
部屋の中央へ静かに歩き出す。
その動きは、
“床に影が滑っている”ように静かだった。
そして――
シオンとセツナの視線がぶつかった。
空気が、一瞬で変わった。
シオンは、なぜか感動したように目を細めた。
「……麗奈の……影……?」
セツナは、猫を抱えたまま微動だにせず、
低く、途切れ途切れに言った。
「……誰……
……お前……」
シオンは胸に手を当て、うっとりと呟く。
「僕は……麗奈を守る者……
君も……そうだろう……?」
猫(セツナの腕の中で)
『ニャア。(いや違う。お前ら絶対分かり合えねぇ)』
セツナはまばたきもせず、
シオンをじっと見つめた。
その視線は、
“音のない刃”のように鋭い。
シオンはなぜかさらに感動して震えた。
「……その目……
麗奈を想う者の目だ……!」
レオン(カズマの背中に隠れながら)
「いや違うよ!?
セツナは“暗殺者の目”だよ!!」
カズマ
「……うん。僕もそう思う……」
猫(抱えられたまま)
『ニャア。(このままじゃ誰か死ぬ……)』
セツナは、猫を抱えたまま一歩前へ出た。
その瞬間――
空気が“ピキッ”と音を立てたように感じた。
シオンも、一歩前へ出る。
二人の間に、
“無言の殺気”が張り詰める。
猫(セツナの腕の中で)
『ニャア。(おいセツナ……俺を盾にするな……)』
セツナは、低く、途切れ途切れに言った。
「……邪魔……
……するな……」
シオンは、なぜか嬉しそうに微笑んだ。
「……同じだ……
僕も……麗奈の邪魔をする者は許さない……!」
猫『ニャアア!(いやお前ら絶対同じじゃねぇ!!)』
二人の間に、
“静かすぎる殺気”が渦巻いた。
カズマ
「……誰か……誰か止めて……」
レオン
「無理だよおにいちゃん……
あれは……“戦いの目”だよ……!」
猫
『ニャア。(俺を抱えたまま戦うな……)』
セツナは猫を抱えたまま、
音もなく、すっと方向転換した。
向かう先は――白雪の部屋。
レオン
「えっ……!? セツナ!?
どこ行くの!? なんで白雪の部屋に……!」
カズマ
「ちょ、ちょっと待って!?
なんで猫抱えてるの!? 返して!!」
猫(セツナの腕の中)
『ニャアア!(返せ!! 俺は荷物じゃねぇ!!)』
セツナは一切振り返らず、
ただ静かに歩き続ける。
その歩き方は、
“床に影が滑っている”ように静かだった。
シオンは、その背中を見て震えた。
「……あの歩き方……
麗奈を守る者の歩き方だ……!」
猫
『ニャア。(違う。あれは“暗殺者の歩き方”だ)』
レオンは半泣きでカズマの腕を引っ張る。
「おにいちゃん!!
追わないと!!
セツナ、白雪の部屋に行っちゃう!!」
カズマ
「いや僕も行くけど……
なんで猫抱えてるの……?」
猫
『ニャア!(俺に聞くな!!)』
セツナは白雪の部屋の前で立ち止まり、
猫を抱えたまま、無言で扉を見つめた。
その背中から、
“音のない殺気”がじわりと漏れ出す。
シオンはその殺気を受けて、
なぜか感動して胸に手を当てた。
「……美しい……
麗奈を想う者の……沈黙の殺気……!」
猫(セツナの腕の中)
『ニャア。(いやお前、殺気の意味わかってねぇ)』
レオンは震えながらカズマの背中に隠れる。
「おにいちゃん……
空気が……空気が痛い……!」
カズマ
「僕も痛いよ……」
セツナとシオンの視線がぶつかった。
一瞬で、廊下の空気が凍りつく。
セツナ
「…………」
シオン
「…………」
猫
『ニャア。(うわ……始まったニャ……“無言の殺気バトル”……)』
レオン
「おにいちゃん……!
あれ……止められないよ……!」
カズマ
「僕も止めたくない……怖い……」
セツナは、猫を抱えたまま
ゆっくりと一歩前へ出た。
シオンも、同じように一歩前へ出る。
二人の間に、
“静かすぎる殺気”が張り詰めた。
猫
『ニャアア!(おいセツナ!!
俺を抱えたまま殺気バトルすんな!!)』
レオン
「おにいちゃん……
白雪の部屋の前でやることじゃないよ……!」
カズマ
「ほんとにね……」
セツナは低く、途切れ途切れに言った。
「……退け……
……邪魔……」
シオンは、なぜか嬉しそうに微笑んだ。
「……同じだ……
僕も……麗奈の邪魔をする者は許さない……!」
猫
『ニャアア!!(いや絶対同じじゃねぇ!!)』
そして――
セツナは猫を抱えたまま、
白雪の部屋のドアノブに手を伸ばした。
レオン
「セツナ!!
開けちゃダメぇぇぇぇ!!」
カズマ
「白雪さん、絶対びっくりするよ!!」
猫
『ニャアアア!!(俺を盾にするな!!)』
白雪の部屋の前で、
セツナとシオンの“無言の殺気バトル”が続いていた。
レオンは半泣き。
カズマは困惑。
猫はセツナに抱えられたまま震えている。
そのとき――
カチャ。
白雪の部屋のドアが、静かに開いた。
白雪
「……なんか……騒がしいなぁ……
レポートが……ぜんぜん……」
そこまで言って、白雪の視線が
**セツナの後ろに立つシオン** を捉えた。
白雪
「…………」
シオンは、なぜか感動したように胸に手を当てた。
「麗奈……!
君の隣人たちが――」
白雪は無言で、指を――
パチン。
軽く鳴らした。
次の瞬間、
シオンの姿が“ふっ”と消えた。
レオン
「えっ!? えっ!? 未来転送!?
白雪、なんでそんな簡単に……!」
猫(セツナの腕の中)
『ニャア。(あいつ……未来に送られた……
白雪、容赦ねぇ……)』
カズマ
「白雪さん……今の……」
白雪はため息をつきながら言った。
「……あいついると、いつも騒々しい。
新しいデバイス……作っててよかった……」
レオン
「え、新しいデバイスって……
未来警察の転送装置……?」
白雪
「うん。
“危険人物を未来に返すだけ”の簡単なやつ」
猫
『ニャア。(簡単じゃねぇ……)』
白雪はセツナの腕の中の猫を見て、
少しだけ微笑んだ。
「セツナ、猫ちゃん返してあげて。
それ、佐藤さんのだから」
セツナは無言で頷き、
猫をそっとカズマに渡した。
猫
『ニャア。(助かった……)』
白雪はくるりと背を向け、
部屋に戻りながら言った。
「……レポートの続きするから。
静かにしてね」
セツナは無言で白雪の後ろに続き、
猫もカズマの腕の中でため息をついた。
レオンはぽつりと呟いた。
「……白雪……強い……」
猫(カズマの腕の中)
『ニャー。
(何の任務だったんだ……
白雪にやらせりゃよかったんじゃねーのか……)』
カズマ
「ホント。何だったんだろうね~。夜食のおじやつくろっか」
その頃――未来。 白い光の中に、シオンが突然放り出された。
「……え? ここは……未来……?」
状況を理解するより早く、 彼は胸に手を当て、空に向かって叫んだ。
「麗奈ーーーーーー!!!!!」
その声は、 未来のショッピングモールに虚しく響いた。




