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第2部・15話前編『白雪の知らない夜。ストーカーの再接近と、レオン&猫の極秘作戦』


白雪は知らない。


今夜、自分の部屋の前に置かれた花束が、

ただの“差し入れ”ではないことを。


そして、彼女はもっと知らない。


その花束を置いた人物が、

未来でも現在でも“接触禁止リスト”に載っていることも。


さらに言えば――


彼女の知らないところで、

レオンと猫が、静かに、しかし確実に、

“極秘作戦”を開始していることも。


白雪は、いつも通り机に向かい、

「この植物サンプル、面白いなぁ」とご機嫌でメモを取っていた。


その足元で、猫は尻尾をゆっくり揺らしながら、

低く、誰にも聞こえない声でつぶやいた。


『……ニャア。(白雪。……お前は本当に平和だな。

……その花束、未来でも現在でも“危険物扱い”なんだぞ。

……俺の人生、なんでこんなに忙しいんだ……)』


廊下の影。

そこに、ひとりの男が立っていた。

神宮寺シオン。


白雪の部屋の前に花束を置き、 壁に向かって、静かに、しかし異様な熱量で囁いている。


「麗奈……君の研究は僕が守る……  僕は君の影……君の光……」


猫は屋根の上からその姿を見下ろし、 耳を伏せて、深いため息をついた。


『……ニャア。(うわ……やってるぞ。 未来でも壁に愛を語ってたやつだ。……変わってねぇな)』


その横で、レオンが重力センサーを操作しながら、 真剣な顔でつぶやいた。


「ターゲット確認。神宮寺シオン。  未来でも接触禁止リスト入りの危険人物」


猫は尻尾をピンと立てて言った。


『……ニャア。(ほらな。言っただろ。 未来でもやらかしてたって。……あいつ、壁に愛を語る才能だけは 千年経っても衰えねぇな)』


レオンは猫を見ずに言い放つ。


「前と同じだ。俺の邪魔だけはするな」


猫は肩をすくめた。


『……ニャア。(はいはい。 どうせまた俺がフォローするんだろ……)』


そのとき。 シオンが、ゆっくりと振り返った。


「……誰だ?  麗奈の“観察者仲間”か?」


猫は即座に毛を逆立てた。


『ニャー!!(観察者じゃねぇ!!お前の仲間扱いされるのだけは絶対イヤだ!!)』


レオンは小声で猫を制した。


「声を抑えろ。白雪さんに気づかれたら終わりだ」 猫は呆れたように尻尾を叩いた。


『……ニャア。(お前の声のほうがデカいんだよ……)』 レオンは無視して、短く言った。


「……行くぞ。拘束する」


レオンが重力センサーを構えた瞬間、

シオンはふっと遠くを見るような目になった。


まるで、今この廊下ではなく、

別の時間を見ているように。


──回想:未来ショッピングモール。


神宮寺シオン

「麗奈は、あの日……あの男とショッピングモールを歩いていた」


白い光に満ちた未来の街。

透明なエスカレーター。

空中に浮かぶ広告。


その中を、白雪とカズマが並んで歩いていた。


白雪は楽しそうに未来のガジェットを説明し、

カズマは「え、これ何?」と困惑しながらもついていく。


シオンは、柱の影から二人を見つめていた。


「麗奈……君は僕に“試験”を与えてくれたんだね。

 嫉妬という名の……愛の課題を……」


猫(現在)

『……ニャア。(いや違う。あれ普通にデートだ。

 お前の“試験”じゃねぇ……)』


レオン

「黙れ。任務に集中しろ」


──回想:白雪が未来で停職中だった時期。


白雪は研究区画の外のベンチに座り、

ぼんやりと空を見上げていた。


その少し離れた場所で、

シオンは壁に隠れながら、じっと彼女を見守っていた。


「麗奈……研究から離れても、君は美しい。

 僕が支えなければ……そう思ったんだ」


白雪はため息をつき、

「はぁ……停職って暇だなぁ」と呟いた。


シオンは胸に手を当て、震える声で言った。


「麗奈……君の孤独は、僕が埋める……!」


猫(現在)

『……ニャア。(未来警察に通報されてた理由、

 今ので全部わかった……)』


レオン

「……やはり危険人物だ」


回想が終わると同時に、

シオンは突然、全身の筋肉を弾かせるようにして走り出した。


まるで“麗奈の気配”を追う猟犬のように――いや、猟犬よりタチが悪い。


猫は驚いて毛を逆立て、屋根から飛び降りた。


レオンも慌てて追いかけるが、

ショタの足ではどうしても追いつけない。


「待て! ……待てって言ってるだろ!!」


『ニャア!(レオン! お前、足短いんだから無理すんな!

重力フィールド使え!)』


レオン

「今使ったらカズマの部屋まで巻き込むだろ!!」


『ニャアア!(それは……そうだな……!)』


シオンは廊下を一直線に走り抜け、

曲がり角で一度だけ振り返った。


その顔は、なぜかキラキラしていた。


「麗奈……!

 君の“隣人”が僕を呼んでいる……!」


『ニャー!!(呼んでねぇ!!勝手に脳内で呼ばれてるだけだ!!)』


レオンは息を切らしながら叫ぶ。


「止まれぇぇぇ!!」


しかしシオンは止まらない。

むしろスピードを上げた。


廊下の床を蹴る音が、やたら軽やかだ。


『ニャッ!?(おい! なんで逃げ足だけは速いんだよ!

未来でも捕まらなかった理由、これだ……!)』


レオン

「猫! そっちから回り込め!!」


『ニャア!?(無理! 俺、猫だけど壁走りはできねぇ!!)』


レオン

「未来の猫ならできるだろ!!」


『俺は“未来のカズマ”でもあるんだよ!!

 運動神経はカズマ基準なんだよ!!』


レオン

「それは……確かに……!」


そんな会話をしている間に――


シオンは、ついに目的地へたどり着いた。


201号室。


カズマの部屋の前。


シオンはドアノブに手をかけ、

息を弾ませながら、うっとりと呟いた。


「……ここだ。

 麗奈の“隣人”。

 君なら……僕を理解してくれる……!」


『ニャー!!(理解しねぇ!!お前の脳内設定を押しつけんな!!)』


レオン

「おにいちゃーーん!!

 開けちゃダメ!!

 だめだよ!!」


カズマ(部屋の中)

「え、レオン!? なんでそんな必死なんだよ……!?」


シオンが飛び込んだ瞬間、

201号室は一気に“定員オーバーの満員電車”になった。


なにせ、今のカズマの部屋は――


空間拡張デバイスが壊れている。


つまり、本来の狭いワンルーム。


そこに大人3人とショタ1人と猫1匹が

一気に押し寄せたのだ。


シオンは勝手に部屋の中央に座り込み、

なぜか深呼吸を始めた。


「……ここだ……麗奈の隣人の部屋……

 なんて……なんて温かい……!」


カズマ

「いや僕の部屋だよ!? 温かいのは人が多いからだよ!!」


猫(棚の上に避難しながら)

『……ニャア。(カズマ。……お前の部屋、

今“酸素濃度”下がってる……)』


レオンはカズマの腰にしがみつき、

完全にパニック状態。


「おにいちゃん……!

 狭い……! 近い……! あの人の目が怖い……!」


カズマ

「僕も怖いよ!!」


シオンは立ち上がろうとしたが、

狭すぎて頭を棚にぶつけた。


ゴンッ。


「……っ……麗奈……

 君の隣人の部屋は……頭上注意なんだね……!」


『ニャア。(違う。お前が勝手に立っただけだ)』


レオンはカズマの背中に隠れながら叫んだ。


「おにいちゃん!!

 空間拡張が壊れてるから……

 逃げ場がないよぉぉぉ!!」


カズマ

「僕に言われても直せないよ!!」


シオンはなぜかカズマのベッドに手を伸ばし、

布団をそっと撫でた。


「……ここで……麗奈の隣人は眠るのか……

 なんて……なんて素朴で……」


カズマ

「触らないで!? 僕の寝床だから!!」


猫(棚の上から)

『ニャア。(お前の寝床を“素朴”って言うやつ、

未来でも現在でもヤバい奴だ)』


レオンはカズマの足にしがみついたまま、

涙目で叫んだ。


「おにいちゃん!!

 この部屋……狭いから……

 あの人に触られたら……逃げられないよ!!」


カズマ

「だから僕も逃げたいんだって!!」


シオンはカズマに近づこうとしたが、

狭すぎてレオンの頭を踏んだ。


レオン

「いったぁぁぁぁ!!」


シオン

「すまない……麗奈の隣人の弟……

 君の存在に気づかなかった……」


レオン

「弟じゃない!!」


『ニャア。(お前、ショタだから踏まれやすいんだ……)』


カズマは頭を抱えた。


「……わけわからんけど、スルーでいいよ」


『スルーすんなニャアアア!!

(この密室でスルーしたら死ぬ!!)』


その瞬間。


シオンがカズマの手を取ろうとした。


しかし――


狭すぎて、全員の手足が絡まり、

全員まとめて床に倒れ込んだ。


ドシャァァァァン!!


レオン

「おにいちゃーーん!!

 助けてぇぇぇぇぇ!!」


『ニャアアアア!!(酸素が……酸素が足りねぇ!!)』


カズマ

「誰か……誰かこの状況説明して……!!」


シオン(下敷きになりながら)

「麗奈……

 僕は……君の隣人の部屋で……

 今……生きている……!」


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