第17話:『ホワイトデーの恐怖! レオンの逆襲と、カズマの「お返し」は時空を裂く。』
「――轟殿。前回のチョコ(筋肉レンガ)の対価……、今、ここに支払わせてもらう。」
拡張されたペントハウスの噴水前。
高級テントから這い出してきたバブル・マネーが、タキシード姿で大家さんの前に膝をつきました。
「バブルさん、それ……ホワイトデーのお返し?」
カズマが麦茶を飲みながら聞いてみると、バブルはキリッとした顔で頷く。
「そうだ。資産価値100億クレジットの希少金属で鋳造した特注品だ。……大家殿、貴様の筋肉には、この程度の『重み』が相応しい。」
その手には、眩い光を放つ**『プラチナ製のダンベル(100kg)』**が。
「ヌンッ!! ……バブルよ、貴様……。私の広背筋をそこまで高く評価していたのか! この輝き、まさに筋肉のダイヤモンド! 私のサイドチェストが、かつてない高騰を見せているぞ!!」
大家さんは感動のあまり、バブルを片腕で抱き上げ、空中高く放り投げました(高い高いの筋肉版)。
不動産王と大家。このアパートで最も「所有権」にうるさい二人が、今、奇跡の友情(あるいは経済協定)で結ばれた瞬間でした。
『……ワンッ!(おい、俺を置いてきぼりにするな! この犬状態をなんとかしろ!)』
犬化したままの猫――未来の俺は、カズマの足元で必死に訴えかけました。
尻尾を振るたびに、猫としてのプライドが音を立てて崩れていく。
「あ、猫ちゃん(犬)。お返しが欲しいんだね。長官さん、何かいいお返しありますか?」
「……やれやれ。仕方ない。……佐藤、私が用意したのはこれだ。『時空再構築・キャンディ』。
長官がポケットから取り出したのは、虹色に明滅する怪しい飴玉だった。
「これを食べれば、肉体の状態を一時間前……いや、任意の設定まで戻せる。……白雪、これをお前の『種族変換チョコ』の解毒剤として登録しておけ。」
「はーい、長官。ついでに私の『若返り成分』も足しておきました❤️」
『(嫌な予感しかしないが、犬よりはマシだ!)』 猫はキャンディを飲み込む。
直後、猫の体がまばゆい光に包まれ……。
「……あ。猫ちゃん、……なんか、めちゃくちゃ足が長くなってない?」
『……ニャ……?(えっ、なんだこの視点の高さは……?)』
そこには、猫の頭を持ちながら、身体だけが「モデル級の美脚」を持つ、シュール極まりない**【二足歩行の猫人間】**が立っていました。
「きゃあぁぁ! 猫ちゃんが足だけイケメンになった! レオン君、見て、ライバルだよ!」
結衣が騒ぎ立てる中、レオンはホワイトデーのお返しとして、彼女に「未来の防犯ブザー(重力拘束機能付き)」を渡す。
「これで僕に近づく時は、事前に申請してよね。……じゃないと、お姉さんの周りの重力を3倍にするよ?」
「……。……。レオン、それお返しじゃなくて『拒絶』だぞ。」
長官が冷静に突っ込みを入れる中、カズマがついに動きだす。
「みんな、僕からもお返しがあるんだ。……はい、これ。大家さん、長官さん、レオン君……結衣ちゃんも、バブルさんも。」
カズマが差し出したのは、何の変哲もない、白い袋に入った「マシュマロ」。
しかし、その袋を開けた瞬間、部屋中に**「究極の静寂」**が広がる。
「……これは。……佐藤、貴様、これに何を混ぜた。」
長官の眼鏡がピキリと割れました。
「え? コンビニで売ってる普通のマシュマロだよ。……ただ、心を込めて、みんなが明日も笑っていられるようにって、少しだけ『スルー・パッシブ』の耳栓を浸しておいたんだ」
「「「耳栓を浸した……!?」」」
全員が絶句する。
カズマの「悟り」を吸収し続けた耳栓のエキスが染み込んだマシュマロ。それを一口食べた瞬間、不動産王も、長官も、大家も、JKも……全員の脳内から「悩み」と「欲望」がスルーされ、真っ白な虚無(癒やし)に包まれた。
「……あぁ、……地上げなんて、どうでもいい。……私は、ただの『泡』になりたい……」
「……筋肉のカットなんて、小さなことだ。……世界は、一つの大胸筋なんだ……」
201号室に、史上最大の「平和な沈黙」が訪れました。 美脚猫人間になった俺は、その光景を眺めながら、自分の長い脚でカズマの肩をトントンと叩く。
『……お前、やっぱり一番恐ろしいよ。……未来警察も不動産王も、お前のマシュマロ一つで「廃人」同然の幸せ者になっちまった……』
カズマは、みんなの幸せそうな(魂の抜けたような)顔を見て、満足そうに頷く。
「お返し、喜んでもらえてよかった。……さ、おじや作ろうっと」




