第16話:『女子高生・結衣の逆襲。レオン争奪・バレンタイン前哨戦!』
「――おにぃさーん! 助けて! 玄関に『ピンク色の殺気』を持った女が立ってるよぉ!」
レオンが、拡張された201号室の噴水の陰に隠れて震えていた。
インターホンを連打し、ドアを筋肉でこじ開けようとしている(大家さんに教わった技)のは、本気になったJK、結衣だ。
「佐藤さーん! レオン君! 開けてください! 私、**『時空を超える本命チョコ』**作ってきたんです!」
「あはは……。結衣ちゃん、気合入ってるねぇ」
カズマがのんびりとドアを開けると、そこにはエプロン姿で、背景にバラを背負った結衣が立っている。
彼女の手には、未来のナノマシンが誤作動しそうなほど高密度な「手作りチョコ(物理)」が握られていた。
「レオン君! これを食べて、私の生涯のペット……じゃなくて、パートナーになって! はい、あーん!」
「嫌だぁぁぁ! 白雪、助けて! 監察官が捕獲されるぅ!」
「あら、いいじゃない。将来の有望な就職先が見つかって。私は私の『媚薬入り義理チョコ』を長官に飲ませるのに忙しいから」
白雪は白雪で、不穏な液体を長官のコーヒーに注入しようとしていた。
カオスすぎる室内で、長官は無機質な声で告げました。
「……佐藤。この部屋の糖分指数が、通常の1.5倍に上昇している。……特に、その女子高生が持っている物体。……成分の80%が『執着心』で構成されているぞ。危険だ」
『……おい。お前ら、チョコに何を込めてるんだよ。……俺は、その辺に落ちてる平和な煮干しが食べたいんだ……』
猫――未来の俺は、騒ぎをスルーするために、カズマの首元にある『スルー・パッシブ』をこっそり借りようと手を伸ばしている。
しかし、その時。
「あ、猫ちゃん。お腹空いたの? はい、これ。結衣ちゃんからもらったお裾分けのチョコ(猫用・マタタビ味)だよ」
カズマが、成分をよく確認せずに(悟りすぎて確認を怠った)チョコを猫の口に放り込む。
――モグッ。
……!?
『……ニャ、……ワフッ!? ……ワン、ワンワン!!(えっ、待て、何だこの感覚!? 喉の奥から「散歩に行きたい衝動」が……ッ!!)』
「ええっ!? 猫ちゃんが吠えた!? ……白雪さん、これ、猫が犬になっちゃうチョコだったの!?」
「あ、ごめん。それ、未来の『種族変換チョコ』の試作品だったわ」
猫カズマ、まさかの**【犬化】**。
性格まで従順になり、カズマの足元で尻尾を(猫なのに)激しく振って「お手!」を始めていた。
「……可愛い。……猫ちゃん、犬になっても可愛いよ」
カズマは、もはや種族が変わったことすらスルーして、犬になった猫を撫で始めました。
一方、レオンは結衣に追い詰められ、ついに「監察官としての奥の手」を使おうとしていた。
「……こうなったら、僕の『重力反転チョコ』を食べさせて、お姉さんを天井に張り付けてやる……!」
レオンがポッケから取り出した漆黒のチョコ。
しかし、そこへ大家の轟さんが壁を突き破って(本日二度目)現れた。
「ヌンッ!! チョコなどという、軟弱なエネルギー効率の悪いものを食うな! 漢なら、これだ!!」
大家さんが差し出したのは、カカオ100%の塊をプロテインで固めた、見た目が完全に**「黒いレンガ」**のような物体。
「これを食えば、チョコの甘さ(誘惑)を筋肉でスルーできるぞ! さあ、レオン! 結衣! 食べるのだ!!」
「「いらなーーーい!!」」
結衣とレオンの悲鳴が重なり、部屋の中では「本命チョコ」「媚薬チョコ」「種族変換チョコ」「筋肉レンガ」が入り乱れる大乱戦に突入。
騒動の終わり。
結局、みんなのチョコが混ざり合い、未来の家事ロボがそれらを全て回収して「平凡なガトーショコラ」に再構成。
「……美味しいね。みんなで作ると」カズマが、みんなで一つの皿を囲みながら言いました。
犬化した猫は、カズマの膝で「キャンッ!」と鳴き、レオンは結衣に手を繋がれながらも諦めたようにチョコを頬張り、長官は白雪の毒を無効化して淡々と完食。
不動産王のバブルも、高級テントから出てきて「……時価100万円の味だ」と涙を流しています。
「佐藤さん、来月は……レオン君の『身柄』をくださいね?」
「あはは……。前向きに検討しておくね」
カズマの「究極のスルー」は、恋の嵐さえも「楽しいティータイム」に変えてしまったのでした。




