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第八十五話 聖戦

「望みはもう分かるよね?始めようか、宿命の戦いを……!」


 すると、一瞬俺の体が崩れたように見えた。


「やっぱり、“ラプラス”持ちね……。こりゃ地力での勝負になりそうね」


 地力での勝負?どういう事だろうか……。


「ラプラス、何が起こったんだ?」

「アイリス様のスキルを解析したところ、どうやら“崩壊眼”というスキルを使ったようです。能力は視覚に入った崩壊対象を原子核から崩壊させるというものです」

「つまり、アイリスの視覚に入った瞬間体が崩壊するって事か。それなら、なんで俺は大丈夫なんだ?」

「崩壊が開始した直後に“崩壊眼耐性”というスキルを生成したからです。おそらく、こういった事がこれから頻発します。要はスキルの押し付け合いです。アイリス様が新スキルを生成させれば対抗しうる新スキルを私が創造します。アイリス様が世界の法則を書き換えれば、私が上書きします。そうやって、鼬ごっこをすることしか私には出来ません」


 つまり、拮抗した力同士じゃ俺のサポートに回ることは出来ないという事だろう。だから、アイリスは地力での勝負って言ってたのか。


「リル、君は負けるよ。スキルが強みだった君にとって、この状況は最悪でしょ?」

「いや、負けないさ。魔術師の強さは知識量で決まる。確かに魔術の才能は君に劣るだろう。けれど、俺には人類七百万年分の知識があるからね」

「七百万年ってまさか……!」

「前の世界の知識だよ。知ってるかい?前の世界での禁忌兵器、核兵器を」

「核兵器?」


 そして、俺は複合魔法で前の世界と同じ方法で核反応を引き起こした。


「その輝き……、ただの魔法じゃない。まるで太陽のような……」

「やっぱり鋭いね。そう、俺は魔法で太陽を生み出したんだよ。もっとも火力は比じゃないけどね……」


 おそらく、このまま爆発させても防御系スキルを予め用意しているだろうからダメージはないだろう。だが、“ラプラス”は既知の存在から最適解を導く。つまり、事後対処だ。


「さようなら、アイリス。君が俺と同じ世界を生きていたら負けていただろうね」


 そう言って俺は恒星一つが塵になるほどの核爆発を引き起こした……。だが、アイリスは澄ました顔で立っている。おそらく熱耐性系のスキルでも持っているのだろう、あの超高温を平然と耐えてきた。


 だが、この世界にはまだ知られていない物質が存在する。そう、放射能だ……。


「これぐらいの攻撃じゃ私にはダメージは……。グフっ……。私が吐血!?リル、一体何をしたの!」

「放射能だよ。簡単に説明すると目に見えぬほどの小さい弾丸ってところかな?」

「まさか、スキルの力で物理ダメージは無いはずなのに……」

「物理ダメージ、それは何を想定して構築していると思う?」

「何って……。全部でしょ?」

「違う。ラプラスの知っている範囲の全てだ」

「にしても、ラプラスなら直ぐに対処……。そっか、今は出来ないのか……」

「……アイリス、君の負けだ」

「いや、それは違うわ。どうやら運が回ってきたみたいね……」


 そう言った直後、空間に亀裂が入った……。すると、亀裂の裂け目から黒髪の美少女が顔をのぞかせた。


「やあ、リル!神の空間に逃げたくらいで逃げれると思わないでね?」

「ライナ……!!」

「ライナ、後は全部託したわ。私は少し回復する」

「分かった。後は任せてアイリス」


 まずいな……。ラプラスに頼れない状況でどうやって勝つんだ!?ていうか、空間の亀裂から出て来たよな?てことは……、世界の壁に干渉できることになる。


 まさか、とは思うがライナも特異点なのだろうか……?いや、二代目が最後の特異点だったはず。おそらく、旧世界人類の最後の末裔という意味なんだろうが……。


 ああそうか、この世界で生まれた新しい特異点ってわけか。そうだよな、ラプラスが生まれた時点で新しい特異点が出て来たっておかしくない。


 それはそうと、この状況どうしたものか……。この空間でピンピンしてる時点で放射能にも耐性があるみたいだし。


 いや、よく考えればライナを倒す必要はないな。世界の法則を変えれるアイリスさえ倒せばいいのだから……。


 そして、そのアイリスはもう瀕死。聖力での回復も徐々に追いつかなくなっている……。


「ご報告がございます」

「どうした、ラプラス?」

「後、数十秒でアイリス様は絶命すると予想されます」

「そうか……。分かった……」

「後悔しているのですか?」

「自分で決めた事だ、後悔はない。ただ……。いや、何でもない。誰かがやらねばならなかった。その誰かが俺だっただけの話だ」


 そして、俺はアイリスの元へ近づいた……。だが、それをライナは許さない。そりゃそうだ、親友から全部託されたのだから。


「リル、アイリスに何するつもり?」

「最後に話したいことがあるんだ」

「その権利があると思ってるの?」

「……」


 すると、アイリスが手招きをした。


「いいの、ライナ。最後に少し話そう?リル……」

「アイリス……。私はアイリスがそういうなら否定はしない。しないけれど……、これじゃあんまりにも……!」

「ライナ、ありがとう。あなたは最高の親友でライバルだったわ」

「うん……。私もアイリスとの毎日はとっても楽しかったよ。だから、これからも……」


 すると、アイリスは静かに首を振った。


「私はここまでよ……。でも大丈夫、ライナなら……」


 そして、その言葉を聞き泣き崩れたライナを慰めながらアイリスは俺の方を向いて言った。


「リル……。愛してる……。これまでも、これからも……」

「俺も……。けど、俺は……君を死に追いやってしまった」

「今更気にしないで……。分かってるから……、それが英雄の宿命でしょ?」

「宿命……。そうか……、分かった……。ねえ、アイリス。新世界を作ろうか」


「面白かった」


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