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第八十四話 運命の女神

「あなたはアイリスと出会ったあの日。いや、正確には君がアイリスと昼食をとった時からずっと……。ループし続けているのよ、アイリスが求める結果に至るまでね」


 ループだって!?そんな、いつの間にそんな大魔法を……。


「事の発端はループする前の君が魔人を救うために“ノア”を訪れようとした事よ」

「つまり、俺の言わばオリジナルって事か」

「そう。もちろん、“ノア”の管理者は私。けれど、アイリスは君よりも先回りしてスキルの力で管理者権限を私から奪ってしまったの。私よりも高次元の存在になることでね」

「もしかして、オリジナルのアイリスも“ラプラス”を……」

「ええ。そして、完全に世界がアイリスの手に堕ちる寸前にこの空間を生み出したの。アイリスに干渉されない唯一の空間をね」


 そうなると、父さんが倒したかったのはアイリスという事になるのか……。そして、“創造者ラプラス”ってのはループシステムの創造者という意味になる。つまり、アイリスのブラフ……。


 いや、違う。スキルに刻まれているのだから時間的に矛盾する。この世界でアイリスよりも前にスキルに干渉出来たのは“ノア”のみ。つまり、スキルに“創造者ラプラス”と刻めるのはダチュラさんか二世代前の人類だけだ……。


「ところでダチュラさん。単刀直入に聞きます。“創造者ラプラス”って名前聞いた事ありますか?」

「いえ……、ないけれど……」


 ダチュラさんからの表情、そしてラプラスが生み出した新スキル“ヘルメス”によればダチュラさんが噓を付いていない事は明白だった。


 となれば、残る可能性は二世代前の人類か……。それにしても、ノアもスキルも生み出したのは二世代前の人類だ。一体どれほどの科学力を有していたのだろうか?


 きっと、俺には想像も付かない世界が広がっているんだろうな……。


「さて、話を戻すわね。そうして、無限のループに嵌められて無数の死と再生を繰り返す内に魂に意思が少しずつ刻まれていったの」

「意思?」

「聞こえたでしょ?君がシオンからスキルを取り除いてミハールに帰ろうとしたときに」

「もしかして、“アカデミーの木を切れ”って叫んでたやつですか?」

「そう、アカデミーの木を破壊する事。つまり、アイリスとの決別がループから抜け出す鍵だからね」

「決別?俺はそんなつもりじゃ……」

「君にその気持ちが無くても、アイリスからすれば決別なのよ。男性である君には分からないかもしれないけどね。それに、アイリスにとって君との初めてのデートスポットだから。ループの始まりにこの木ほど適したものは無いわ」


 そうダチュラさんが言い終えた刹那、突如真っ白い空間に黒い亀裂が入った。


「そんなところで二人共何をやってるのかな?」

「アイリス……!」

「リルにとっては久しぶりかな?さて、それはそうと……。そこの泥棒猫にお仕置きをしないとね!」

「ダチュラさんに何をするつもりなんだ!?」

「安心してリル。すぐに終わるから。今度こそ、ちゃんと消滅させるから!!」


 すると、ダチュラさんは微笑を浮かべて言った。


「私はここまでみたい。だから、後は全て託すわ」


 そう言って、ダチュラさんは俺の頬にキスをした……。


「さようなら、運命の女神に愛された特異点よ!」


 次の瞬間、アイリスが放った紫色の光線によってダチュラさんは跡形もなく消し飛んだ。


「最後にとんでもない事をしてくれたわね……。まあいいわ、これで邪魔者は居なくなったわけだし。さて、リル。あなたの長い長い旅の答えを教えて?」

「かつての俺の答えは分からない。けれど、今の俺の答えは世界から魔力と魔人に関する記憶を消す。でもそれは君が望む答えじゃない。そうでしょ?」

「そうよ。私は世界はあるがままに進むべきだと思うから……。だから、世界に干渉してこなかった。けれど、もういいや。これまでも無数に君はここまで来たけれど、全部似たような答えだった。きっと、これからも君の意思は変わらない……。ねえ、あの時の約束覚えてる?」

「約束?」

「初めてリルと本気で戦ったアカデミー一年生の時の実技試験。あの時、一つ賭けをしたよね?」

「ああ、たしか勝ったほうが言うことを一つだけ何でも言うことを聞くっていうのでしょ?あ、まさか……!」

「望みはもう分かるよね?始めようか、宿命の戦いを……!」


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