第八十一話 エピソード・零 救済の十字架
「そういえば、転移装置って何だ?魂でしかその場所に行けないのにどうやって建造したんだ?」
「それは我々にも分かりません。おそらく、我々旧世代人類よりも前の世代が建造したのでしょう。“ノア”、我々はその装置をそう呼んでいます」
ノアか……。崩壊の荒波から人類をつなぐため、魂を異界に運ぶ箱舟。まさに、ピッタリな名前だ。
さて、それはそうと原子核の崩壊か……。人間相手だったら楽だったんだが、物理法則が相手となると人間では太刀打ちできないな。
「分かった、行こうか新世界に……」
「団長!?」
後方にいる三人の団員以外は激しく動揺していた……。
「団長どうしてそんな事……、死ぬんですよ!?それもこんな訳の分からないやつのために!」
「いや、俺には分かる……。違うな……、分かっていたんだよ。自分の役割ってやつが。そうだろ?マリ、スラエル、ダチュラ……。何となく、自分が特異点だと気づいていたはずだ」
「噓……でしょ?」
俺達四人以外の団員達は自身の抱く感情に戸惑っていた。俺たちを殺せば、この場にいる全員が何にも怯える事なく過ごせる。だが、これまでの戦友を殺すなど考えられない。そう考えていたはずだった……。
だが、ビオラの一言で全てが変わった……。
「全く、しょうがないわね……。団長がそういうなら私はついていくわ。一度救われた命を返すにはもってこいだもの」
「ビオラ……」
その一言で団員達の表情がガラリと変わった。きっと、皆も各々が持つ役割に気づいてくれたのだろう……。
「覚悟は決まったようですね……。それでは、今から死んでもらいましょう。それにあたり条件があります。自殺してはいけません。必ず他人の意思を持って殺されてください」
「ん?なんだそれ……。あ、そういう事か!ずっと、妙だと思っていた。わざわざペンタゴンを襲撃させなくても、そっちから迎えに来ればいいのにと思っていたんだが……。俺たちが殺されることを望んでいたのか?」
「その通りです。本来ペンタゴン襲撃で死ぬ予定だったのですけれどね。ここまで来れた以上、褒美として真実を教えたまでです」
そうだったのか……。それにしても殺されなければならないとはね。このシステムを作ったやつも酷な事をさせる……。さて、そういう事なら……。
「ビオラ……、俺たちを殺してくれないか?」
「え……、私が……」
「君になら殺されても良いと俺達四人は思っている。酷な事を言っているのは百も承知だ。けれど、君が殺せば世界は君を英雄として認めるだろう。違うかい?イスカリオテのビオラ?」
「何故それを……」
「君がスパイなのは入団して少し経った頃、君が話しているのをたまたま聞いていてね……」
「なら、なんですぐに私を始末しなかったの!?」
「君もレジスタンスの一員だからだよ。現に毒物を入れるなり、誤情報を流せばすぐに壊滅したものを君はそうしなかった。マリから聞いたよ。ビオラ、誰かさんを好きになっちまったんだろ?」
すると、ビオラはマリのことを一瞬睨み付けて言った。
「ち、違う!私はそんな事……!」
「ククク、これでマリの事言えないな」
「マリ、あんた!!」
「さーねー?」
「まあ、今はその恋が実ることはないが後十年もすれば法も許してくれるさ」
「本当に違うんだから!もう……!全く、意地悪なんだから。……さあ、四人とも覚悟はいい?」
「ああ」
「いいよ」
「もちろん」
「済まない、ビオラ。後は託した……」
バンッと言う発砲音とともに俺の意識は闇の中に吞まれていった……。
ふと気づけば、俺は星空の部屋の中にいた。
「ようこそ死後の世界へベルード・タイムさん!」
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