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第八十一話 エピソード・零 楽園追放

「原初、世界に人類は存在しませんでした。そう、人類は今いる世界とは別の世界からやってきたのです。その世界の名をエデン。崩壊した世界はそう呼ばれていました」


 エデンって……確か……。そうだ、旧約聖書の楽園追放の所で出て来たな。まさか……!


「勘のいい方は気づきましたね。あの話は真実です。もちろん、時が経ち内容も若干違っていますが……。さて、旧世界人類がエデンを追われるようになった理由。それは今の世界で起き始めた原子核崩壊問題です」


 すると、マリが首を傾げて言った。


「原子核崩壊問題?」

「はい、現在この世界の原子核は百年以内に総じて崩壊すると予想されます」

「まさか……、前の世界が崩壊したって……!?」

「はい、前の世界でも同じ現象が起きたと計算上で明らかになっています。この結果は突然変異種が現れる前の時のことですので計算結果に狂いはありません」

「そんな……」

「そのため、旧世界人類は持てる科学の全てを用いて現在人類が存在している世界を探し出しました。ですが、異世界に移住できる人間には限りがありました。旧世界では特異点、現在では突然変異種と呼ばれる人類のみ移住を許されたのです」

「じゃあ……俺たちをすんなり“ラプラス”の元に案内したのって……」

「察しの通り、あなた方が人類最後の希望だからです。ここにいる五人のように新世界のアダムとイブになり人類の架け橋になってもらいます」


 ここにいる五人だって!?てことは……。


「ちょっと待て、五人のようにって……。そいつらは旧世界の人類だってのか!?

「はい。歴史の陰に彼らは常にかかわっていました。数千年の間、全ては再び“ラプラス”を建造し楽園を取り戻すために……」

「じゃあ、こいつらも新世界に行けるのか?」

「いえ、それは不可能です。新世界へは一度しか行けません。異世界への移動は次元移動と違い、非常に魂に負荷をかけます。もし、もう一度移動しようものなら確実に魂が崩壊します。ですから、あなた方が唯一の希望なのです」


 つまり、人類の絶滅を防ぐために異世界に行けってことか……。こいつらに噓をついてる様子はないが、果たして信用していいものか……。いや、それは今更か。


「それが真実として、証拠は?」

「私“ラプラス”の存在です。何故、旧約聖書では人類が楽園を追放されたか覚えていますか?」

「確か、林檎、善悪の知識の実を……ってまさか!」

「はい、人類が私“ラプラス”を建造した時から崩壊へのカウントダウンは始まりました。そして、蛇とは……」

「この五人ってわけか」

「はい」

「じゃあ、お前たちがそそのかしたせいで人類は滅ぶって事か?」


 すると、五人の内一人の男性が答えた。


「それは捉え方次第でしょう。我々がいなければ人類は絶滅する以前に存在すらしなかったのですから」

「だが、ラプラス建造という選択肢を取った事で人類が絶滅まで追い込まれているのは確かだろ?」

「あなたは根本から誤解していますね。“ラプラス”建造が悪だと思ってはいませんか?」

「ああ、思っているさ。そのせいで人類は絶滅しかけてるんだから」

「それが間違いです」

「なに?」

「これは世界の病のようなものです。考えても見てください、ウイルス感染を恐れて永遠に部屋に引きこもりますか?怪我を恐れて運動を諦めますか?」

「それは……」

「人類はこのシステムを克服しなければならないのです。そのためには我々のように情報を託して進むしかないのです。いつかシステムを克服し本当の意味で人類が自由を勝ち取れるように……!」

「色々言いたい事はあるが……まあいい。それで新世界へはどう行くんだ?」

「まずは死んでもらいます」


 その言葉を聞いた瞬間、全団員が戦闘態勢を取った。そりゃそうだ、この状況でその言葉は宣戦布告と同義だ。


「どういう意味だ?返答次第では……」

「分かっています。魂には原子核は存在しませんね?そして、新世界にも原子核と同じものはありますが原子核ではありません。そのため、世界のはざまに建造した転移装置に魂を入れる必要があるのですが……」

「そのために死ななきゃならないと」

「そういう事です。ですが、世界の壁を破る際に魂に世界の壁を突破する性質を持たせる特異点でなければなりません」

「そういえば、転移装置って何だ?魂でしかその場所に行けないのにどうやって建造したんだ?」

「それは我々にも分かりません。おそらく、我々旧世代人類よりも前の世代が建造したのでしょう。“ノア”、我々はその装置をそう呼んでいます」


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