第七十六話 記憶操作
俺たちが世界最強パーティとして世界に認められて、さらに十年の月日が経った現在。俺達はとうとうロックの解除に至る……。
「ようやくここまで来たね……。これでニースもきっと浮かばれるよ……」
アイリスは今までの血の滲むような努力を思い出すように言った。ロックを正しく解除しないと聖力が暴走する仕組みになっているので、死刑囚とは言え十数名の死者を出してしまったのだ。
だが、それだけの代償を払った価値があると研究に携わった者たちは皆そう思っていた。というのも、ニースの”天上天下唯我独尊”やシンドバッド王の”未来視”でさえ誰でも扱えるようになるのだから……。
まず、俺達はシオンの元へと向かった。もちろん、ニースの願いを叶えるためだ。
「母さん、準備はいい?」
俺はシオンのロックを解除する最終確認をした。
「ええ、お願いね」
俺がスキルが刻まれている心臓に触れて聖力をもとにした魔法式によりスキルのロック解除を行った。すると、スキルの魔法式が光り輝いたのでスキルを消滅させる術式に書き換えると魔法式は蒸発するように消えた。
「これでスキルが消えたのね……なんだか実感が湧かないけれど」
「これで父さんも安心してあの世にいけたかな?」
「ええ、きっとね……」
さて、そうなれば残る課題は後一つ。あの時、魔人王に誓った世界から魔力を消し去る事だけだ。だが、俺は一つ疑問に思った……。本当にそれだけでいいのだろうか?互いに憎しみあった記憶が残っている以上、和解は難しいのではないだろうか?そうなれば種族間戦争に発展しかねない。戦争にならなくても確実に差別となってしまうだろう。前の世界でさえそうだったんだから……。
だが、世界から魔人という記憶を無くしてしまえば解決するだろう……。今ならそれが可能だ。全世界の記憶を操るというスキル設定にしてしまえばいいのだから。いや、世界にスキルが現れる前まで時間を戻しても悪くないかも知れない。
だが、その案をアイリスとアリシャールに話してみたが猛反対されてしまった……。まあ、想定通りではあるが。記憶の改竄など、やられる側からしたら気持ち悪いことこの上ないだろう。その気持ちは分からなくはない。だが、やらなければ歴史が繰り返されてしまう。前の世界の記憶を持つ俺にしか分からな……、いや魔人王ならあるいは……。
俺はそう思い時空間魔法で魔人王の元に向かった……。
「久しぶりだな魔人王。例の約束の件だ」
「まさか……とうとうやったのか……!」
「ああ、ただ魔力をこの世から消すだけでは足りないと思ってね」
「ほう……」
「魔人が存在したという記憶そのものを消そうと思うんだが……、魔人王としてどう思う?」
「記憶か……。それは全世界中のか?」
「そうだ。俺以外の全てだ」
「そうか……、とはいえ全てが無になるのは……。いや、神話の一部として語り継いでもらうか。その為にも俺と幹部の記憶は残して欲しい」
「分かった……」
もしかして、前の世界にある神話もこんな感じだったのだろうか……。
それはそうと俺は魔人王のお墨付きを貰った事をアイリスとアリシャールに報告する事で、再び賛同を得ようと試みたのだがやっぱりダメだった。本当は賛同して欲しかったが……、仕方ない。俺の独断で魔人族の記憶を消すことにしよう。それが善であれ悪であれ誰かがやらなければならないから……。
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