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第五十八話 Courageous person

 ルジュナ師匠……どんな人だろうか。話から推測するにダンジョンを単独で攻略出来る程の力を持つのは間違いない。俺はその人に教わればそれほどの力を手にできるのだろうか?ならば……。


「ああ、頼むよ」

「その決断、後悔しないでね。君はもう後戻りの出来ない修羅の道を歩み始めたのだから」


 しばらく歩き緑豊かなミハール郊外にある一軒家を訪れた。するとフォーチュンはドアをノックして言った。


「ジジイーいる?」

「何の用だ?んん?あのちび助が男を連れてくるなんてな!」


 ルジュナさんは金髪に白髪混じりのおじさんだった。そう、ジジイ近いが決してジジイではない。にしても、仲が悪いのだろうか?師弟同士とは思えない口の悪さだ……。


「は?ちげーし。あんたの弟子になりたいって言うから連れてきただし。気持ち悪い勘違いすんなよ!」


 ああ、分かった。こりゃ、思春期の娘と父親の会話だわ。すると、ルジュナさんが言った。


「ほーう、グロピウス家とハルモニア家の坊ちゃんか。名前は?」

「俺はグロピウス・シンドバットと言います」

「僕はハルモニア・アリシャールです」

「一つ聞く。ここにやってきたということは力を求めているのだろう。その力の先に何を見る?」


 俺たち二人は声を揃えて言った。


「人々の自由を……!」

「そうか……。いいだろう、修行をつけてやろう。ただし、俺の修行は厳しいぞ?」

「はい!」


 そうして、地獄が始まった……。来る日も来る日もひたすら筋トレである。やっと落ち着いたと思えば今度は精神修行。そうして、修行がどんどん激化して二年。俺は一師団を圧倒する程の力を手に入れた。今なら二年前のフォーチュンの言葉を信じられる。


「色々、本当にありがとうございました。ルジュナ師匠!」

「お前たちは本当にいい弟子だったよ。フォーチュンの時なんて……」

「なにさ?」

「いや、何でもない。さあ、行っておいで。お前たちが見せてくれる未来を楽しみにしているよ」


 俺たちはルジュナ師匠の激励を受けダンジョンに向かった。


「さ、こっからはシンドバット一人だからね」

「ああ、分かっている。約束、忘れてないだろ?」

「もちろん、一人でダンジョンを攻略したら私が仲間になる。そうでしょ?」

「頼むよ。じゃあ、行ってくる」


 そう俺は言ってダンジョンの中に入っていった。ダンジョンの中は地下でありながら青空を模した天井のおかげで明るかった。さらに、最下層まで吹き抜けになっており最下層までは浮島を渡って降りていくようだ。その特異的環境からかモンスターは全て飛行能力を有している龍種や虫類が多数生息している。この小さな浮島でモンスターと戦うのは非常に大変だ。かつて、王が大量の奴隷と精鋭部隊を率いてこのダンジョンに挑んだが壊滅して終わったと聞いていたが理由が分かった。これではかえって人数が邪魔してしまう。


 このダンジョンは本来浮島を渡って降りていくものなのだろう、だが俺は試されているような気がした。というのも、底が見えないほど暗いのだ。つまり、浮島を渡って降りていくのでは時間が相当かかるのだろう。堅実に行くか博打に出るか……。俺は深呼吸をして浮島から飛び降りた。その判断は勇気がいるが迷いはない。俺一人で攻略するので大量のモンスターを相手にするのは体力的に不可能だからだ。


 飛び降りるとゴオオっという音とともに落下速度はどんどん加速していった。途中龍種や虫類が俺を襲おうとしたが、“未来視”がある以上躱すのは容易だった。気づけば落下速度は一定になり辺りは完全な闇に包まれた。もう底が近いのだろう。そう思い、“未来視”で周囲のモンスターから十秒先の未来を見てみると風魔法で減速している姿が見えた。


 俺は風魔法で減速し聖力を足に集めて衝撃に備えた。刹那、地面に凄まじい衝撃を感じた。聖力で防御していたとはいえ、足の骨はぐちゃぐちゃである。聖力で回復していると辺りの紫色の宝石が怪しく輝き始めた。俺は嫌な予感がして顔を上げると、そこには山のような黒い巨大な龍が……。


「数百年ぶりに生きているものが落ちて来たか。我が名はアイテール、力を求むものに審判を下す者。汝が力にふさわしき者か確かめさせてもらう、いざ!」


「面白かった」


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