第三十話 波動
海賊エドワード・ボネットが討伐された今、大和へ向かう最大の障壁となるのが牛鬼の獣人の国である。そのため、各国は一時的に連合軍を持って獣人の国の制圧に動くことに合意した……。
ミハール港が復興するまでの間、俺たちはシンドバッド王の勧めでシンドバッド王の師匠を訪ねることにした。師匠の家はミハールの郊外にある小鳥が時折さえずるような緑豊かなところだ。
「すいません、ナーガ・ルジュナさんはいらっしゃいますか?」
「ああ、事情はシンドバッドから聞いているぞ。どうぞどうぞ、中に入って……。」
家に上がらせて貰い軽い世間話をした後、早速波動の話になった。
「シンドバッドからは波動について教えてやってくれと頼まれていての。君たちはたしか、聖力覚醒と聖力操作はできていたかい?なら、聖力の流れは感じたことはあるじゃろ。今からする修行は波動を感じ取る修行じゃよ。ま、百聞は一見に如かずじゃ。外に出て実戦練習じゃ。」
外に出るとルジュナは杖を持って構えた。
「さあ、誰からでもいいからかかってきなさい。」
ということなので、ライナはルジュナさんに聖力の斬撃を飛ばした。高密度の聖力は轟音を響かせながら真っ直ぐにルジュナさんに向かっていく。とても、老人に躱せるスピードではなさそうだが……。
だが、そんな心配も杞憂に終わった。ルジュナさんは斬撃軽く躱し、ライナの超高速の連撃を全て躱し切った後ライナの頭をゴンっと叩いたのだ。
「こんな感じで、波動を感じ取ることで相手の動きが手に取るように分かる。ルホウとやらの動きを全部見切れたのもこのおかげじゃよ。さて、港が治るまでと言っても一か月しかない。その分キツイ修行になるが、その覚悟は良いな?」
そうして、波動の修行が始まった。相手の殺気を感じ取る練習や、自らの波動を調節したり……。
そんなこんなで一か月が過ぎ、俺たちは何とか波動を扱えるようになった。一方で港は無事完成し、連合艦隊もミハール港に到着。いよいよ牛鬼との全面戦争が始まろうとしていた……。
だが、その前に二人には俺の真実を打ち明けることにしよう。なんだか、嫌な予感がするのだ。この戦争が今生の別れになるような……。
「アイリス、ライナ。話がある」
俺はルジュナさんが数日留守の間、二人に打ち明けることにした。ここなら、誰にも聞かれまいと判断したのだ。
「どうしたの?真面目な顔して……」
アイリスが心配そうに言った。
「実は俺、異世界人なんだ……」
その事に皆、キョトンとしていた。そりゃそうだ、異世界人という言葉すら初めてなのだろう。だが、実際は違った。どこで知ったのかは謎だが、アイリスがその存在を知っていたのだ。
「あ、もしかして心当たりあるかも……。いい、これから言う事は絶対秘密だからね?」
俺たちは頷いた。
「小さい頃、お母さんが言っていたんだけど。その、昔……違う世界から特殊な力を持った人がこの世界にやって来て魔人王を退けたんだって。実はその人がみんなが知る、ブリソニア・アランの正体だったんだって。彼がモノ作りが得意なのも、スキルのおかげだったらしいわ」
ブリソニア・アラン……、言わずと知れた初代英雄だ……。最後にその話に触れたのはアカデミー時代の世界神話の授業だっけか。随分、懐かしい名前だ……。
俺が色々思い出していると、アイリスはさらに続けた。
「ねえ、前の世界ってどんな世界なの?」
その質問に俺は長くなるという前置きをして、前世の世界について説明した。特にライナは、自分同じくスキルがない人が大勢いる世界の文化に興味津々だ。一方で、アイリスはこちらの世界の科学や数学に興味津々だった。
それもそのはず。中世とは比べ物にならないほど技術が進んでいるのだから……。
一通り話して落ち着くころには夜が明けていた。まあ、二人が大満足して帰っていったので良しとしよう。
それから数日後、バグダッド宮殿で最終作戦会議を行った。さあ、いよいよ出港だ。
獣人の国が存在するのはバグダッド国の隣なので、陸部隊と海部隊で港を挟撃する作戦である。そして、俺たちのパーティーは海部隊の配属となった。
まずは、魔術師たちによる遠距離攻撃と砲撃で港を混乱状態に陥らせ、陸部隊の挟撃により港の制圧に成功。さらに、制圧した港に軍艦を寄せることにまでも成功した。
だが、俺たちは嫌な予感がしてならない。というのも、作戦が上手くいきすぎているのだ。通常、作戦なんてものは失敗して当たり前。そのために、第二、第三の作戦を立てたりするのだが……。
なんだか、これが罠のような気がしてならないのだった……。
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