第二十八話 特異点
ライナとアイリスが死にかけた俺を心配して駆けつけてきてくれた。すでに覚醒状態は解けており、聞くと俺が死にかけていることに驚き解けてしまったらしい。もし、俺が覚醒できていなかったら……。
一方その頃、シンドバッド王と牛鬼の戦闘は激化していた。かつて、シンドバッド王と旅をしていたパーティーメンバーの総力をもってしても中々倒せずにいる。
だが、その他の戦況はS級冒険者が集結していることもあり順調に進んでいたが、牛鬼はその状況を打破するために今出せる全力を持ってバグダッド国を潰すことにした。
「埒が明かないな……。来い!ソウロン、ルホウ!」
牛鬼が叫ぶと空を覆うほどの蛇のような龍と、黒く燃え盛る羽を持った大きさ10メートルほどの巨大な鳥が空から現れた。
「我が国の最高戦力が来た以上お前たちに勝ち目はない。シンドバット、最後に言う事はあるか?」
「牛鬼、俺とお前は思想も夢も戦術もよく似ている。ただ、唯一違うとすれば運命の歯車から外れた存在と関わっていたかどうかだ。そして、それがこの戦いの勝敗を決めたぞ?牛鬼。」
「まさか、特異点がこの世に降りたのか!?」
「特異点、お前たちはそう呼ぶのか。俺たちはそれを英雄と呼ぶ……」
「英雄か……。そんな都合のいい名前、いかにも人間らしいな。」
そう言うと、牛鬼は腕を振り下ろした。それが合図だったのだろう。空にいた巨竜は口から都市を覆うほどの火炎放射を吐いたが、アイリスの白炎によって相殺に成功した。
そして、トカゲに翼が生えたような魔物(俗にリザードマンと呼ばれる)と人ほどのサイズの鳥の大部隊が空から急襲してきた。
だが、こちらもシンドバッド王の指示のもと、まだ温存していた予備戦力であるS級冒険者6名は巨鳥を、事実上S級冒険者である俺たちのパーティーは巨竜の討伐にあたることになった。
それから、俺は軽く作戦をアイリスとライナに伝えた。
「アイリス、ライナを巨竜のもとに飛ばしたら引き続きライナの援護に回ってくれ。ライナは巨竜の気を俺から逸らしてくれ。その隙に俺が奴を消し飛ばす。」
その作戦に二人は頷いた。
「分かった。あ、そう言えば私のスキルの説明をしてなかったね。私のスキルは“天照”って言って自身を炎と同化させることが出来るの。ライナも覚醒してスキルを獲得できたんでしょ?どんなスキルなの?」
「それが獲得出来なかったんだよね……。」
その言葉に俺とアイリスは驚きすぎて顎が外れかけた。それもそのはず、スキルが獲得できないなんて前代未聞だ。
「でも、その代わりと言ったらなんだけど身体能力が以前の比じゃないの。見てて!」
ライナは凄まじい衝撃波と共に空中を蹴りあがっていくと一瞬で巨竜のもとにたどり着いた。
「見てて、これが今の私の最高出力!」
そう言うと、刀に莫大な聖力が集まっていく……。それを更に濃密にする事で聖力が輝き始めた。これほどの身体能力に聖力操作、戦士学院では敵なしじゃないだろうか?
すると、ライナの模眼でも目で追えないほどの超高速かつ鈍重な一撃で巨竜の首を斬った……はずだった。
「かったいな-。リル、多分シヴァじゃないと攻撃できないかも。」
「分かった、引き続き頼むよ。にしても、空中を蹴りあがれるなんて……。」
少し照れたライナを横目に俺は巨竜の首の近くまで飛び、剣に聖力を纏わせて巨竜の頭を真っ二つにした。そして、その横では巨鳥とS級冒険者達が激戦を繰り広げている……。
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