第二話 異世界
目が覚めると、綺麗な茶髪をした若い女性がこちらを見ている。女性は何か言っているようだったがよく分からない……。
周りが気になるので動こうとしたが上手く動けない、それどころか喋ることすらままならない。どういうことだろうかと考えていたら、若い女性に抱き上げられた。
ああ、そうか……。どうやら俺は赤ちゃんスタートらしい。
それから数日が過ぎたが一向に父親の姿が見えない。流石にそろそろというか、そもそも産まれた時点で居ないのがおかしいのだが……。
まさか、父親は死んでしまっているのだろうか?
そんな疑問を抱きながら月日が過ぎ、カレンダーがないので分からないが体感にして半月以上がすぎた。この世界の言語や体を動かすにも慣れてきてこの家のことが少し分かってきたので、紹介しようと思う。
まず家族構成だが、母と俺の二人暮らしだ。父親のことは未だによく分からないが、どうやら生きているらしい。
家は木造の二階建てで6程度の部屋があり、窓際に行くと広大な畑にぽつぽつと家が見える程度の田舎。気候は温暖で過ごしやすく、風が気持ちいいところだ。
また、一階は診療所となっており時々怪我をした人が訪ねてきた。どうやら一族経営みたいで俺の世話の合間に怪我人を治癒している。治癒には主に回復ポーションが使われていたが重症の患者には魔法を使っているみたいだった。だが、無詠唱魔法の類なのだろうか触れただけで患部を治していた。
しばらくして、ようやく家族の名前を把握することが出来た。
母親の名前はクレバトロン・シオン、俺の名前はクレバトロン・リベルテというらしい。自分で聞いてみるまではリルとよばれていたので、名前の把握に時間がかかってしまった。父に関しては時が来たらとのこと。
もし精神的な事なら見た目は子供、頭脳は大人なので大丈夫だとは思うが……、その場合異世界転生者だと告白しなければならない。ただ、この世界において異世界転生者が善か悪か分からないので時まで待つことにした。
さらに時が過ぎ、俺は文字が読めるようになっていた。医者だからか、すごく教育熱心だ。おかげで、俺は普通の赤ちゃんよりも早く本などを読めるようになっていた。
文字が読めるようになれば当然やることは一つ、この世界についての勉強だ。とはいえ、まだ本の内容を完璧に読めるわけではないが。
家には沢山の本があった。どれも興味深いもので、その多くは医学書と魔法教本だった。後は、小説と生物学書だ。
まず俺は初級魔法教本という本を読んでみた。そこにはこの世界の魔法のルールについて記述してあり、色々基本的なことが分かった。
とりあえず、庭で最初のページにあった基礎魔法のファイヤーボールを使ってみることにした。魔法教本の説明によると、片手に魔導書を持ち、もう片手で発射する方向を決めるとのこと。そして、魔導書に魔力を流すことで発動するらしい。
ちなみに魔力とは心の闇の力で、心の闇が深ければ深いほど魔力は増大していくらしい。ただ、元々魔力が多い人もいるみたいだ。そんな魔力を流すコツは血を流すイメージとのこと。
つまり、俺は魔導書なるものを手に入れないといけないのか……。だが、そんな憂いもすぐに晴れることになった。魔法教本の近くに魔導書があったからだ。
実際に外に出て右手に魔導書、左手を斜め上に突き出して魔力を流すと左手の前の魔法陣に火球ができた。発射は魔力の流れを止めると出来るので、止めると爆音と共に発射された。
「何の音!?」
その音にシオンが慌ててとんできた。だが、問題はない。何もないところに……、ってあれ?風向きが……。あ……ヤバいな、このままだと畑が大炎上する……。
するとシオンは高速で印を組み、畑を覆うように砂の壁を作った。なんとか無事ファイヤーボールは砂の壁に激突し、事なき……?を得た。
だが、事件を起こした子供に待つ末路は決まっている……。きっと怒られると思っていたのだが、ここは異世界。常識は通じない。俺の想定外の方向に話が進んだ。
「魔法が使えたの?凄いわ……、いつの間に覚えたの!?」
「実はついさっき……」
「ついさっき!?普通は魔導書を発動させるコツを掴むのに数日かかるのに……。流石、あの人の血を引いているだけはあるわね」
「あの人?」
「あの人についてはまた今度ね。それよりもファイヤーボールじゃなくてウォーターボールから試してほしかったわ」
「いいのよ、それよりも魔法が使えたのがビックリだわ」
シオンはニッコニッコしており、とても嬉しそうだった。
そういえば、印契を結んだ時は魔法陣が足元に出てきたのに治療の時に使った魔法には魔法陣が出てこなかったな……。一体あれは何だったのだろうか?すごく気になる……。
「治療の時に使っていた魔法は何で魔法陣が出なかったの?」
「それはね……。」
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