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第十一話 卒業試験

 アイリスの体の周りが黒いオーラにつつまれ、黒炎の巨竜を構築した。明らかに先程とは様子がおかしいので分析も兼ねてまた突撃させることにした。だが、水龍が黒炎の巨竜に触れた部分が蒸発してしまい、それを逆手に利用されて黒炎の巨竜が水龍に絡まってきた。


 このままだと、どんどん蒸発してしまうがあの黒炎の巨竜に対抗する魔法は今の所水龍しかない……。


 あれ、これ詰みじゃね?そもそも、あの黒炎は何なんだろう?魔力が物凄く禍々しい以外は何も分からない。もしや、魔人化を起こしかけているのだろうか?


 だとするなら、あれは一時的な魔力の増幅だ。なら、耐えればいけるか?魔力量には自信があるが蒸発スピードに魔力の補充が間に合うだろうか?


 いや、考えるのは辞めよう。選択肢は水龍を維持するしかない。


 そして、俺はどんどん蒸発するのにも構わず水龍を黒炎の巨竜にぶつけ続けた。それにより発せられる水蒸気で周辺はサウナ地獄である。だが、この状況は俺に名案を授けた。


 これだけ水蒸気で視界が悪ければ避けれるんじゃね?


 そうなれば行動は早い。即座に水龍を解き、アイリスに向かってライトニングボールを数発放った。が、信じられない出来事が起こった。黒いオーラがライトニングボールを防いだのだ。つまり、アイリスにダメージは与えられない。


「ククク……フハハハハ!」


 なんだか可笑しくなって笑ってしまった。分かっている、俺はまともじゃない。疲れと絶望で気がおかしくなってしまったんだ。それともアイリスの魔力に当てられたせいだろうか。


 そんなのはどうでもいい。だが、どうすればいいだろう。俺は気力も体力も魔力も底を尽きているのに、アイリスは元気。状況的には降参一択だが、負けるのは癪だ。


 最後にあがいてみるか……。


 俺は覚悟を決めて、今俺が放てる最速最高火力の魔法の使用を決意した。


龍砲火炎(りゅうほうかえん)


 そう唱えると、黒炎の巨竜を覆いつくすほどの超高温の火炎放射が起こった……。


 魔法には縛りを付与すると効果が上がる性質がある。だが、その性質を利用することは少ない。魔力を犠牲にした方が効率がいいからだ。だが、今は別。魔力が無いなら縛りを課すしかない。


 だから、俺は魔法を途中で止めないという縛りを付けた。この縛りは非常に強力だが、今の状況ならデメリットは無い。どうせ、一発しか放てないから……。


 さすがの黒いオーラでも守り切れないと判断したのか、黒炎の巨竜はとぐろを巻きアイリスを守った。だが、その巨竜も徐々に崩壊を始める。もう、お互い限界だ。


 しばらくするとお互い膝から崩れ落ちた。そして俺の意識が遠のき、ちょうど雨が降り始めたころ試合終了の合図が鳴った。


 気がつくと横にライナがいた。


「大丈夫?」


 と声をかけてきたので頷き、アイリスのことを聞くとまだ寝込んでいるとのことだった。その後、アイリスの意識が戻り二人で試合の結果を聞くと、同時に意識を失ったので引き分けだそうだ。試しにもし勝っていたら何をさせるつもりだったか聞いてみたが、はぐらかされてしまった。その後、試験結果発表があり見事進級することができた。


 翌日、いよいよ夏休みだ。夏休み中は魔法の練習や川遊び、祭りなどのイベントがありとても楽しかった。特にアイリスやライナの水着姿が見れたのは大きな収穫だった。そんな夏休みも終わりを告げ、二年生だ。俺とアイリスは魔術師クラスを選択しライナは戦士クラスを選択した。少し寂しいが頑張ってほしいと思う。


 魔術師クラスでは一年次とは違い魔法数学が増えたり、体術学がなくなるなど魔術師育成に特化したカリキュラムになっていた。教わる魔法のレベルも上がり中級魔法や支援魔法、人によっては上級魔法や精神魔法も扱うらしい。


 教室に入ってみると想定通り女子しかいない。だが、運のいいことにアイリスと同じクラス、しかも隣の席になることができた。


「今回は同じクラスになることができたね。」

「しかも隣の席だよ、凄い偶然だよね!」


 だが、これは必然であったことが後に担当の茶髪の女性の先生から語られた。どうやら成績順で席が決められていたらしく、同率一位であった俺とアイリスは一番前で隣同士になったらしい。また、二年間同じクラスで勉強するらしく期末試験も卒業試験と兼ねるそうだ。


 そして、二年間が過ぎ卒業試験の日がやってきた。一年次とは違い、魔法数学と社会学、国語学は筆記試験、魔法学は実技試験だ。また戦士クラスとは合同で試験はおこなわないようだった。推薦試験も兼ねているのでより正確に戦士としての実力の優劣を測るためだそうだ。


 難易度としては社会学と国語学は例年通りだが、魔法数学が少し難しい印象だ。一年次にやった一般数学とは違い魔法数学は言葉を数字と記号に置き換える学問なので、言うなれば新しい言語を学んでいるようだ。


 何故わざわざ置き換える必要があるかと言うと魔導書と印契は言葉を発する必要がないからだ。つまり、杖はイメージと呪文を必要とするのでイメージしやすい現地の言葉で呪文を唱えたほうがいいが、イメージを必要としない魔導書と印契は世界共通である数字と記号であるほうが伝達と構築において効率がいいからである。とはいえ、二年間真面目にやってきたので殆ど問題なく突破することが出来た。


 さて、またしても問題は実技試験である。前回とは違い一次試験は無くトーナメント戦のみとなっている。去年と同じくアイリスは構築速度の速さを、俺は魔力量と模眼を駆使して順調に勝ち進むことが出来た。そして、決勝戦の時がやってきた。


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