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ファミリー・トリップ・トラップ  作者: みずた わかば
第2章 未知の世界
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8.誘拐犯は何者?

 俺たちは、さっきも、コイツの話に唖然とさせられたけど、今のこの話は、その比じゃない。

 地球で拉致するなら、地球のやり方で、って、いったいなんやねん!

 それじゃ、まるで、自分は地球人じゃない、って言ってるようなもんやんか。

 異星人とか、宇宙人とか、そういうもんやて言うんか? どっかの小説サイトで、異世界の話が流行っていたけど、まさか異世界人とでも言うんやないやろな。

 冗談にも、ホドがあるやろ!


 ……と、俺は、無言でツッコミを入れる。けど、心の隅では、わかってた。もしかしたら、そういうこともあり得るんやないかと。

 ほんの何分か前、突然この場に現れたことを、俺自身、ワープや、と言った。ワープなんて、それこそ、普通に考えたら、ありえへん話や。深く考えず、とっさの思いつきで言ったことではある。けど、家のカーポートを出てからの、おかしな状況があってこその言葉やった。

 もちろん、コイツらが地球人ではない、ということを全面的に受け入れているわけじゃない。ただ、非現実的な出来事に次々に出くわす中で、この短い間にも、俺の中で、そういうもんに対する免疫が、少しついたみたいな気がするんや。

 オカンと百合香は、どうなんやろな。

 オカン、オカンのドッキリ説、やっぱハズレや。どう見ても、これは、現実やろ……


 オカンは、青ざめた顔で、誘拐犯を睨みつけている。

 そして、ふいに、オカンの中の小犬が、吠え出した。

「ちょっと、アンタ! さっきから、けったいなことばっか言うてるけどな、わけわからんこと言うて、ウチらを煙に巻こうとしても、そうはいかへんで!」

 オ、オカン……

「アンタみたいなもんの言うことなんか、信用できるわけないやろ!」

オカンの背中が小刻みに震え始める。

「とにかく、はよ、おとうちゃんに会わせてえな! おとうちゃんが、無事かどうか、おとうちゃんの顔見るまでわからへん!」


 今度は、誘拐犯が、オカンの剣幕に、動揺する。

「ワ、ワタシは、先ほど、拉致のときの状況を、正直にお伝えシマシタ。正直にお伝えスルことで、宮島圭介さんが、無事だということも、ワカッテいただけると思ったのデスが」

俺たちは、再びあっけにとられる。

「アンタ、アホか。そんなことで、誘拐犯の話、おいそれと信用すると思てたんか!」

俺と百合香は、うんうんとうなずく。

「し、しかし、コチラを信じていただかなくては……」

俺たちは、三人で、誘拐犯を睨みつける。

「実は、しかるべき時マデ、宮島美也子みやこさんを宮島圭介さんに会わせるなと、上の者カラ言われておりマス」

 俺たちは、ハッとして顔を見合わせる。興奮で、赤みがさしていたオカンの顔が、ふたたび青ざめる。

 コ、コイツが、ボスやなかったんか? ただの、手先やったんか?


 しばし止まっていたオカンの震えが、大きくなって復活する。それでもオカンは、唇をかんで、声をしぼり出した。

「そんなら、その親玉に言うたらいいやろ……」

「え?」

誘拐犯の反応に、オカンの声が大きくなる。

「ウチはな、アンタが信用できるかできひんかなんて、ホンマは、どうでもいいねん! ウチはただ、おとうちゃんに会わせて欲しいだけなんや!」

オカンの叫びに涙声が混じる。

「おとうちゃんにおうて、おとうちゃんが無事なこと、この目で確かめたいんや!」

オカンは、泣いたら負けや、とでもいうように、ぐっと唇をかんで、涙をこらえる。

「アンタも親玉も、人の子やったらわかるやろ。たとえ、アンタがホンマのこと言うてたとしても、自分の目で、おとうちゃんの無事を確かめたい、それが家族っていうもんや」

 俺も百合香も、涙をこらえて、オカンと一緒に、誘拐犯を睨みつける。この際、コイツらが、人の子やないかも、っていうツッコミは無粋やな。

 目の前の男が、黙り込む。


 しばしの沈黙のあと、

「わかりマシタ」

 男が、仲間の一人に、目で合図した。百合香の後ろにいた背の高い男が、男の方に歩み寄る。二人は、小声でなにやら、話し合っている。微かにもれ聞こえる言葉は、外国語のようだ。

 俺の後ろに張り付いている男が、目の前のヤツと同じように黒いスーツを着ているのに対し、この背の高い男の格好は違う。襟付きの薄いピンクのシャツに、白いパンツを爽やかに着こなしている。コイツは、実行犯やないんかな。


 少しして、背の高い男は、一人で、後ろのドアから出て行った。

 男が、こちらに向き直る。

「スミマセンが、少し時間をクダサイ」

俺たちは、顔を見合わせる。ここで冷静にならな、話は進まへん。

「わかりました」

オカンが、小さくうなずく。男は、ホッとした顔をした。

「後ほど、上の者ヨリ、今回のことについて、話がありマス」

俺たちは、ぐっと息をのむ。

「その前に、ワタシのほうカラ、この国について、ご説明をしたいと思いマス。上の者の話を理解していただくタメに、必要な話デス」

俺たちは、再び、顔を見合わせる。それは、こっちも知りたい話や。コイツが、宇宙人か、異世界人か、決着をつけてもらおうやないか。

「それでは、場所を移しマスので、コチラへ」


 俺たちは、目の前の男に従って、ガラスの自動ドアに向かう。

 あっ、そや。俺はふと思い出して、ドアを出る前に、車のほうを振り返った。そこには、光のない、いつものカローラがあった。

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