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初期装備の最適解  作者: リリリリス


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第19話:金喰らいの砂漠と、所持金ゼロの最適解

第二の街『オアシス』は、その名の通り広大な砂漠の中心にある、巨大な湖を囲むように作られた異国情緒あふれる街だった。


日差しの強い砂岩の街並みを抜け、俺はタイムロスを最小限に抑えた直線ルートで『冒険者ギルド・オアシス支部』の扉を押し開けた。

カラン、と乾いたベルの音が鳴る。


ギルド内にはまだ他のプレイヤーの姿はない。後続の装甲馬車が到着するまで、あと数時間はかかるはずだから当然だ。


カウンターには、褐色の肌を持つ犬耳の獣人NPC(受付嬢)が暇そうに欠伸をしていた。

俺が足音も立てずにカウンターの前に立つと、彼女はビクッと耳を跳ね上げた。


「ひゃっ!? い、いらっしゃいませ! ……って、あれ? 次の馬車が着くのはお昼頃のはずじゃ……お客様、どうやってこの街へ?」


「歩いてきた」


「あ、歩き!? あの『死の大渓谷』を!? 嘘でしょ、あそこは高レベルのシールド職でもない限り、絶対に吹き飛ばされる仕様に……っ」


「いいから、無料タダの黒パンと、タダで飲める水をくれ」


俺が話を強引に打ち切ると、受付嬢は目を白黒させながらも、カウンターの下からカッチカチの黒パンと、木のコップに入った井戸水を出してくれた。


「あ、ありがとうございます……? って、お客様、ベルグの街の防衛戦を乗り越えてきたんですよね? もっと美味しいものを食べるお金、あるんじゃないですか……?」


「金を使うのは非効率の極みだ。食に時間を割くつもりはない」


俺は黒パンを水で胃に流し込みながら、ギルド内のクエストボードに視線を向けた。

新しい街に到着したなら、次に探すべきは『最もコスパの良い狩場』である。


「なあ、この街の周辺で『一番人気のない狩場』はどこだ?」


俺の問いに、受付嬢は首を傾げた。


「人気がない、ですか? ……それなら間違いなく『黄金喰らいの砂漠』ですね。最悪のエリアです」


彼女の説明によると、その砂漠に出現する『コインドロボー』という素早い魔物が、信じられないほど凶悪なシステム(ギミック)を持っているらしい。


「コインドロボーは、攻撃を当てるたびに『所持金の10%』を盗むんです。そして、一度でもお金を盗むと、即座に砂の中に潜って逃げてしまうんですよ」


なるほど。

プレイヤーにとって、ゴールドは命の次に大事なリソースだ。


しかも、防衛戦を終えて大量の資金を持っている今のプレイヤーたちがその砂漠に行けば、一撃食らうだけで数万Gから数十万Gという莫大な資金をかすめ取られ、倒す間もなく逃げられることになる。


「最悪ですね。倒せば奪われたお金を取り返せる上に、大量の経験値も手に入るんですが……奴らは逃げ足に特化していて、魔法を撃つ前に姿を消しちゃうんです」


受付嬢は「絶対に行かない方がいいですよ」と忠告してくれた。


だが、俺の脳内コンピューターは、その説明を聞いた瞬間に『完璧な最適解』を弾き出していた。

俺はステータス画面を開き、自分の所持金リソースを確認する。


昨日、数千万Gで売れるレア素材の山をすべてポイ捨てし、UR武器を他人に押し付け、馬車代の500Gすらケチった男の所持金。


【所持金:0 G】


見事なまでの無一文である。


「……おい。もし、そのコインドロボーとやらが『所持金ゼロ』のプレイヤーを攻撃した場合、どうなるんだ?」


俺の質問に、受付嬢はキョトンとした顔で答えた。


「えっと……所持金がゼロの人が攻撃されても、お金が盗めないので……盗めるまでずっと地上で攻撃し続ける(サンドバッグになる)かと。まあ、所持金が1Gもない冒険者なんて絶対に存在しませんけどね」


「ここにいるぞ」


「え?」


「完璧だな。横殴りするプレイヤーもいない貸し切りのVIPルームで、大量の経験値を持ったレアエネミーが、俺から逃げずにずっと目の前に留まり続けてくれるってことだ」


なんて素晴らしいシステムなんだ。

金を持たないドケチこそが最強の特効を持つ、究極のエコ狩場じゃないか。


「そ、そのクエストを受けます! 報酬はいりません!」


俺は興奮冷めやらぬまま、クエストボードから『黄金喰らいの砂漠』の張り紙をベリッと剥がし、受付嬢に叩きつけた。


「えっ……? えっ!? お、お客様、本当に所持金ゼロなんですか!? 防衛戦の報酬は……?」


「重いから全部捨てた。じゃあ行ってくる。昼飯の時間にはまた無料の黒パンをもらいに来るから、用意しておいてくれ」


俺は木の棒を肩に担ぎ、ウキウキとした足取りでギルドを後にした。


「重いから……捨てた……? お金、ゼロ……?」


後に残された獣耳の受付嬢は、最強のプレイヤーであるはずの男のあまりの極貧っぷりと、常軌を逸したプレイスタイルに、ただただポカンと口を開けて見送ることしかできなかった。

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