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初期装備の最適解  作者: リリリリス


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14話:廃植物園のボトルネックと、無人の稼ぎ場

現実時間の20時ジャスト。

視界に表示されたカウントダウンがゼロになると同時に、『FRO』第一回公式イベントの火蓋が切って落とされ、第一の街『ベルグ』はかつてないほどの熱狂と怒号に包まれた。


「東門、ゴブリンの群れが来るぞ! 魔法使い、一斉射撃用意!」


「南門はオークの部隊だ! タンク職は絶対にラインを下げるな! 後衛にヘイトを向かわせるなよ!」


東西南の三つの門には、大手ギルドを中心とした数千人のプレイヤーが陣取り、押し寄せる魔物たちと激しい防衛戦を繰り広げていた。


前衛が傷つけば後衛が回復し、武器がこぼれれば即座に予備の武器に持ち替える。誰もが手持ちのポーションや修理キットという『資金リソース』を惜しみなく消費し、ひたすらにイベントポイントを稼いでいた。


だが、そんな熱血と喧騒から完全に切り離された場所が一つだけあった。

『北門』である。


北門の先には、かつて美しかったであろう『廃植物園』の広大な廃墟が広がっている。


崩れ落ちた巨大なガラスドームや、異常に繁殖した古代植物が絡みつくその場所は、薄暗く不気味な雰囲気が漂っており、プレイヤーからは「最悪の不人気エリア」として敬遠されていた。


理由は極めて単純だ。


そこから湧き出してくる魔物が、『ストーンゴーレム』や『アシッドスライム』といった、物理耐性が異常に高く、おまけに装備の耐久値をゴリゴリ削ってくる『リソースクラッシャー』ばかりだからである。


「北門の防衛なんて誰がやるかよ! 武器の修理費とポーション代で、イベント報酬をもらっても大赤字になるぞ!」


「どうせあっちの魔物は硬いだけで足が遅い。東西南の敵を狩り尽くしてから、最後にギルド連合で一気に処理すればいい!」


それが、一般プレイヤーたちの導き出した「最適解」だった。

誰も防衛に向かわない、無人の北門。

しかし、そこにただ一人。


『初期の布服』と『初期の木の棒』という、全プレイヤーの中で最もチープな装備を身にまとった男が立っていた。


「素晴らしい。他のプレイヤーが一人もいない。完全な貸し切り状態だ」


俺は崩れかけた廃植物園の巨大なアーチの前に陣取り、満足げにうなずいた。


ここは道が狭く、魔物が街へ向かうためには必ずこのアーチを通らなければならない。地形的にも最高の立地である。


ズズン……ズズン……!


地響きと共に、廃植物園の奥から大量のゴーレムとスライムが列をなして押し寄せてきた。


ざっと見積もっても、その数は数百。普通に戦えば、一つのギルドが全滅しかねないほどの絶望的な光景だ。


だが、俺の目にはそれが『回転寿司のレーン』か、あるいは『ベルトコンベアに乗って流れてくる無料の経験値』にしか見えなかった。


「さあ、出前の到着だ。効率よく処理させてもらおう」


先頭のストーンゴーレムがアーチをくぐり抜け、丸太のような巨大な拳を振り下ろしてくる。


俺は【マニュアル・オーバードライブ】の速度で半歩だけ軸足をずらし、拳を最小限の動きで回避。

同時に、下からすくい上げるように『木の棒』をフルスイングした。


『パァァァァンッッ!!!』


【ミニマリスト】の極大補正が乗った木の棒が、ゴーレムの分厚い岩盤を紙屑のように粉砕する。


岩の破片が散らばる前に、後続のアシッドスライムが強酸の飛沫を撒き散らしながら飛びかかってくるが、俺は木の棒を引かず、そのまま真っ直ぐに突き出した。


酸のゼリーをすり抜けた棒の先端が、スライムの中心にある核を的確にぶち抜く。

回避して、振る。

避けて、突く。


「次。次。はい、次」


スタミナを激しく消費する大技のスキルなど一切使わない。

ただ最小限の動きで、耐久値無限の木の棒を一定のテンポで振るい続けるだけ。


その姿は、まるで延々と単純作業を繰り返すために組まれた、高度な自動化プログラムのようだった。


俺の足元には、倒した魔物たちがドロップした『ゴーレムの核』や『強酸の粘液』といった高額なレア素材が山のように積み上がっていたが、拾う気は一切起きない。


「あんな重いものをインベントリに入れたら、重量オーバーでスタミナの消費量が増えるからな。拾う動作すらタイムロスの原因になる」


疲労もゼロ、装備の損耗もゼロ。

俺の立ち位置は、防衛戦が始まってから1ミリも動いていない。


向こうから勝手にやって来て、俺の棒に当たって消え、高得点のイベントポイントへと変換されていく。


「なるほど。ゴーレムやスライムは硬くて倒しにくい分、1体あたりの獲得ポイントがゴブリンなんかの数倍も高く設定されてるんだな。歩き回る手間も省けて、まさに最高の稼ぎ場じゃないか」


究極のエコだな。わざわざ歩き回って、わざわざポーション代を払って、低ポイントの敵を探している他のプレイヤーが可哀想になってくる。


俺がそんな悠長なことを考えながら、延々と廃植物園からの『出前』を自動処理し続けていた頃。


東西南の門で何時間も死闘を繰り広げ、疲労困憊になっていた全プレイヤーの視界に、イベントの中間ランキングがデカデカと表示された。


【第一回防衛戦:個人獲得ポイントランキング(中間発表)】

第2位:アルフレッド(聖剣の誓い) 15,200pt

第3位:爆炎のクリス 14,800pt

第4位:鉄壁のガルド 13,500pt

……


「よしっ! 現在2位だ! このままギルドの総力を挙げてトップを取るぞ!」


南門で大剣を振り下ろしながら、トップギルドのマスターであるアルフレッドが歓喜の声を上げた。

彼の周囲のプレイヤーたちも、自分たちの稼いだスコアに確かな手応えを感じて盛り上がる。


しかし。

彼らがランキングの『一番上』に視線を向けた瞬間。


第1位:ナナシ 58,000pt


「「「…………は?」」」


第一の街のあちこちで、数千人のプレイヤーたちの動きがピタリと止まった。


いくら高ポイントの敵とはいえ、たった一人のソロプレイヤーが、何十人ものギルドメンバーの支援を受けて戦うトッププレイヤーたちの3倍以上のスコアをぶっちぎりで叩き出している。


そんな、どう計算してもあり得ないバグのような数字を見て、全プレイヤーが絶句した瞬間だった。

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