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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第一章 入学編

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#84 恐ろしいいたずら

授業が終わって、寮に戻る途中。

ふと、懐かしい“悪さの気配”が胸の奥でむくむくしてきた。


男子寮の裏手にある物置小屋。

壊れかけの扉を開けると、いつものメンツがもう揃っていた。


皓が俺を見るなり、口の端を吊り上げる。


「今日は暇だからな。……そろそろやるか?」


「ま、いいだろう」

陶之助がその気満々の顔で頷く。

いつもより機嫌がいい。こういう時はロクでもない。


久しぶりにいたずら心に火がついた俺は、つい笑ってしまった。


「前みたいに矢印に時差を発生させるか?

 それとも、もっとでかいことするか?」


皓が吹き出した。


「またあれやるのかよ。あの時、百合乃先生が五回同じ方向に曲がってて死ぬほど笑ったわ」


陶之助が指を一本立て、ニヤリと笑う。

その顔がもう“ヤバい時の陶之助”だった。


「くくく……俺に考えがある」


皓も俺も、背筋に心地よい悪寒が走る。


「なんだよ陶之助。お前また妙なもん思いついたんだろ」

皓が肘でつつく。


「選択科目で幻術学を取っていてな。今日、ちょうど“コツ”を覚えた」


陶之助は胸を張り、まるで自慢の発明品を披露するみたいに言った。


「——学校の敷地内から、今日一日だけ影を全て無くしてやる」


……。


皓が息を飲む。


「は? 影を、全部?」


俺も思わず声が裏返った。


「お前、発想からして危ないって知ってるか?」


陶之助は楽しそうに肩をすくめる。


「見たことがない光景だろう?

 人も建物も木も全て、影が消える。

 ……面白いと思わないか?」


いや、絶対怒られる。

特に沙羅あたりに殺される。


だが——


皓が悪党みたいに笑った。


「いいじゃねぇか。最高にアホで、最高にバレるぞ」


つられて俺も笑ってしまう。


「……まあ、俺ら三人でやるなら、もう一蓮托生だしな」


陶之助が手を差し出す。


「やるんだな?」


「やるっきゃねえ!」

皓が手を合わせ、


「ああ。面白そうだな」

俺も手を乗せた。


三人の手が重なった瞬間、ぞわりと空気が変わる。


陶之助が物置の奥から奇妙な魔方陣を引っ張り出し、

しゃがみ込んで魔力を流し込んでいく。


「まずは俺が“影奪い”の幻を敷地全体に張る。

 皓、お前は光量を微妙に調整しろ。違和感が出ないようにな」


「了解」


「玲磁は……俺の幻が破裂しないように、魔力の支柱になれ。

 魔力制御ならお手の物だろう」


「おうよ。面倒見てやる」


皓がにやにやしながら肩を叩いてくる。


「なぁ玲磁。どう考えてもこれ、後で沙羅先生に怒鳴られるやつだよな」


「確実に怒られるな。……でも、やる」


三人で頷き合った。


陶之助の指先から、淡い灰色の魔力が立ち昇る。

皓が光の魔力で補正し、俺はその土台を支えて随時調整。


物置小屋の中、三つの魔法陣が重なり合って震えていた。


「——さあやるぞ」

陶之助の声が低く響く。


「アルテリア魔法学校。

 本日限定——影、全消失だ」


男三人の悪だくみが、ついに走り出した。

完全にヤバい奴です。

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