#85 校内騒然
最初に異変に気づいたのは——
誰よりも魔力量がバカみたいに大きい、この男だった。
リュウ校長は書類に目を通しながら、
窓から差し込む光にふと視線を向けた。
机の上に落ちるはずの影は——ない。
次の瞬間、爆笑した。
「ははははは!!
これは一本取られたな!
まさか“影を消す”とは!!」
まるで贈り物でももらったみたいなテンションだ。
そこへノックもそこそこに沙羅が入ってくる。
「校長、ちょっと来てください。校内が……」
沙羅は一瞬で状況を察し、眉間に皺を寄せた。
「……影が、消えている?」
校長はなぜか楽しげに椅子を回しながら言った。
「そうだ沙羅!どうだ、この光景!
これはもう芸術だぞ!!」
「笑い事ではありません」
沙羅はぴしゃりと切った。
声は冷たいが、怒っているというより“本気で呆れている”方だ。
「絶対またあの三人の仕業です。魔力で分かります」
校長の目がぱっと輝く。
「おお。沙羅、お前も“誰の魔力か”分かるようになったか!
ははは、教師も生徒も成長する!
こんな学校にしたかったんだ!」
「何を呑気なことを……。私は彼らを探してきます」
「待て、俺も行く」
校長はマントを翻し、実に楽しげに立ち上がった。
「悪さも教育のうちだ。
だが、けじめも教育のうちだ。行くぞ、沙羅!」
「……やれやれ」
二人は捜索に向かった——
と言っても、悪ガキトリオのアジトなんて全校が知っているので、
もはや“捜索”ですらない。
⸻
生徒会室。
騒ぎに気づいた四人も、窓の外を眺めていた。
木も建物も、生徒たちの足元も——影が存在しない。
■生徒会長:鷹波 右京
腕を組み、小さくため息。
「……何なんだこれは」
声は静かだが、完全に困惑している。
■副会長:高円寺 六華
美しい銀髪を揺らし、冷たく透き通った声で言う。
「おそらく一年生の仕業です。
この規模で無差別に影を消せる上級生は……いません」
六華がこう断言するあたり、かなり確信している。
右京は目を細める。
「天竜たちの仕業だろう。
やってくれたな」
とは言いつつ、怒っているわけではない。
あくまで冷静、むしろ“評価している眼”だった。
■会計:伊佐利 楽
細い目をさらに細め、笑顔のまま。
「やっぱり今年の一年、面白いなぁ〜」
この男は何を考えているか本当に分からない。
■広報:纏 彪我
「ははははは!こりゃすげぇ、影がねぇ」
笑い、喜んでいる。
横の美琴の肩を叩きながら、
「美琴ちゃん、今度一緒にやってみよう。
こういう“校内ジャック”、絶対楽しいから!」
■書記:白隹 美琴
風属性らしい鋭い瞳でひと言。
「氷の薔薇持ちながら変なことに誘わないで」
「はい……」
彪我は肩を落とした。
他の生徒たちは、おそらくもっとパニックになっています。




