#76 魔法芸術部の公演
皓が「違ぇよ!!」と耳まで赤くしながら否定していたところに——
ガチャ。
寮の扉が開く、足音が二歩。
気配で誰か分かった。
「……お前らか」
陶之助だった。
いつも通り、感情が読めない目つきでこっちを見る。
「スエ、お前帰ってたのか」
皓が立ち上がるが、陶之助はあくまで淡々としたまま。
「さっき妹とすれ違ったが……何の話をしていた?」
「べ、別に何でもねえよ。
お前こそ弥来になんか言われたのか?」
陶之助は小さく首を振る。
「いや。
お前らが“まだ話してる”って言ってたから戻っただけだ」
(……妹経由で帰ってきたのかよ。
やっぱりこいつら仲良いじゃねぇか)
そんなことを思っていると——
「それより」
陶之助がカバンから一枚のパンフレットを取り出し、俺に渡してきた。
厚紙で、妙に凝ったデザイン。
銀の箔押し。
魔法芸術っぽい派手さ。
「昨日、クラスで宝生から渡された。
魔法芸術部の校内公演——明日だとよ」
「明日?」
皓がパンフレットを覗き込む。
「なになに……一年公演?
あー、これ毎年やってるやつか。見に行くと何か貰えるんだよな?」
陶之助が軽く肩をすくめる。
「参加賞は知らねぇ。
ただ、宝生が“ぜひ来てね”と言っていた」
「碧ちゃんか。あいつ丁寧だからなぁ」
俺はページをめくる。
舞台演目のリストに一年生の名前が並んでいる。
……お、見覚えのあるやつがいる。
「……朝、出るんだな」
皓も気づいたようで声を上げる。
「おお、ほんとだ!
切追 朝、ソロパフォーマンス“光糸”。
あいつ実技24位だっけ? 才能やべぇよな」
陶之助がもう一人の名前を指す。
「それと……天針 琉月」
「うわ、マジか。
あの完璧美少女も出んのか。絶対人来るじゃん」
ページには、光のステージで祈る姿の琉月の写真。
やっぱり天針家の子って雰囲気が違う。
なんとなく胸の奥がざわつく。
(……遥花、これ知ってるかな)
皓がパンと手を叩いた。
「じゃ、せっかくだし見に行くか!
休日の公演なんて楽しそうじゃん!」
陶之助も珍しく即答だった。
「……俺も行く。
宝生にも“行く”と返してしまった」
「素直かよ、あんた珍しいな!」
皓のツッコミに陶之助が眉をひそめる。
「勘違いするな。
あれは……義務だ。
……“期待してくれた相手を無下にしない”だけだ」
皓はニヤニヤしやがる。
「はい出ましたスエのツンデレ」
「殺すぞ雷ガキ」
「ほーらすぐそれ! 中学の時と変わんねぇ!」
俺は笑いながらパンフレットを閉じる。
「じゃ、明日三人で行くか。
一年生の公演なんて見逃したらもったいねぇし」
陶之助が軽く顎を引いた。
「ああ。
……どうせお前も“合体魔法のヒント”探しに行くつもりなんだろ?」
「何で分かんだよ」
「顔に書いてある」
皓が爆笑する。
「ははっ!確かにお前、なんか企む時そんな顔するわ!」
「お前もな」
「うるせぇ!」
そうして俺たちは散って、
明日の予定が一つ決まった。
――一年公演。
遥花や魅亜と行ってもいいが、
まずはこの二人と見ておきたい。
明日は、きっと波乱の予感しかしない。




