#71 決闘部
昼食 — 「キッチン・リコリス」
窓際の席に座ると、ハーブの香りとあたたかい日差しが混ざって、どこか安心する。魅亜がまた張り切って話題を振ってきた。
「ねえ、報告あるんだけどさ」
そう言ってからの間が妙に大仰で、こちらの身構えが勝手に高まる。
「昨日ね……決闘部、入った!」
言葉が放物線を描いて飛んできた気がした。俺は思わずフォークを止める。
遥花が目を真ん丸にして、「魅亜ちゃん……決闘部なんだ?」と子供みたいに驚く。彼女の驚きが嬉しそうで、こっちまで胸が温かくなる。
「皓くんと陶之介くんも一緒に入ったんだよ! 三人まとめて!」
なるほど、と頷きながらも、胸の奥でちょっとした懸念が芽生える。皓と陶之介だぞ。暴れん坊二人を相手にする部活動って、どう考えても安定しない。
「皓と陶之介まで入ったのか……」と俺が呟くと、魅亜は得意げに胸を張る。
「当然でしょ。あたし一人じゃ寂しいし、それに二人なら強くなれるって!」
いつの間にあの悪ガキ達とも接点があったのか。
遥花が窓の外に視線を落としながら、小さく笑った。
「うん……でも、みんなで力を合わせるのって……きっと楽しいよね」
その笑顔を見ていると、どうしたって頬が緩む。魅亜がそれを見逃さず、にやりとする。
「玲磁、顔赤いじゃん」
「赤くねえよ!」
「遥花の前だと赤いんだねぇ〜」
遥花は小さく顔を伏せ、指先でナイフを転がすみたいに恥ずかしがる。俺は焦って言い訳を探すけど、魅亜の得意そうな笑顔が止まらない。
「でもさ、玲磁。合研部も危なっかしいんでしょ? 装置壊したって聞いたよ」
「壊れたのは一回だけだし、沙羅先生も付いてるし、大河がなんとかしてくれたから大事にはならなかった」
遥花が真面目に頷く。彼女のその真剣なところが、やっぱり頼もしい。魅亜は途中で顔をしかめながらも笑っている。
「だからあたしは決闘部で燃えるの。玲磁は合研部で、面白いことしなよ?」
「燃えるって言うな!」
俺は笑いながらフォークを置いた。午前の不安が少し薄れて、代わりに穏やかな期待が心に広がっていく。




