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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第一章 入学編

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#70 拮抗

学生街に入ると、

香ばしいパンの香りと、魔法インクの匂いが混じって漂ってくる。


魅亜がすぐにテンションを戻して、

俺の横にぴょん、と跳ねるように寄ってきた。


「ねえ玲磁、どこ先行く? なんか欲しいものある?」


「特にないけど……まあ文具屋でも行くか。

 合研部、何かと使うし」


「よし来た! 今日あたし玲磁にいっぱい聞きたいことあるんだよね〜!」


隣で遥花が、

ふわり、とだけ近づく。


「……わたしも、聞きたいな。色々……」


妙な静電気みたいな空気が、一瞬だけ走った。


俺は気づかないフリをして歩き続ける。


カラン、とドアを開ける前に、

魅亜が突然俺の腕に絡んできた。


がっつり腕組み。


「はいはい、今日は案内よろしくね、玲磁〜?」


遥花が、その瞬間——

「……あ」


小さく声を漏らして、俺の反対側の袖をすっとつまむ。

引っ張る力は弱いけど、

“離さない”って意思だけは強烈に伝わってくる。


魅亜が勝ち誇ったように俺を見る。


「ほら玲磁、どっちの腕が好き?」


「選ばせるな!!」


「だってさ〜、玲磁って鈍そうで案外鈍くないタイプじゃん?」


「それ褒めてねぇだろ」


遥花は腕を組むかわりに、

袖をつまんだまま、そっと俺の横顔を覗き込んだ。


「……玲磁くん、迷惑……?」


「い、いや、迷惑じゃねぇけど……」


「……そっか。よかった」


完全に“じわじわ攻めるタイプ”のそれだ。


魅亜は魅亜で、堂々と胸を張って俺の腕を抱えて離れない。


(……なんで俺、両サイドから圧かけられてんだ?)


と心の中で叫んでいると、

魅亜が本題を切り出した。


「でさ、玲磁。合研部、どうなの?

 いつの間に七人も集まってたの? あんた有名人?」


「いや、有名人じゃねぇよ……。気づいたら増えてたんだよ」


遥花が小さく補足してくれる。


「紫亜ちゃんも……明日香ちゃんも……自分から来てくれて……

 それで……大河くんもストッパーとして……」


魅亜は目を輝かせた。


「なにそれ! もう完全に“特別クラス”じゃん!

 なんか……青春してる〜って感じ!」


「青春って……装置一個壊しただけだぞ?」


「壊した時点で青春してるの! 大事件=青春!」


遥花がくすっと笑いながら続ける。


「うん……でも、ほんとに賑やかになったよね……。

 玲磁くんが、部長で……」


「いや部長じゃねぇよ」


「……勝手にみんながそう思ってるだけ、だよね?」


「そう言うなよ……」


魅亜は急に俺の顔を間近で覗き込んだ。


「……ねえ玲磁。

 あんたさ、自分の想像より“中心人物”なんだよ?」


「そ、そんなキャラじゃねぇって」


「してるって。

 天竜玲磁って“ふざけてるのに頼れる主人公タイプ”だもん」


「主人公じゃねぇし」


「いや、主人公だし?」


遥花もそっと言葉を添えてきた。


「……うん。玲磁くんがいると……安心する。

 昨日も……時空の魔法で助けてくれたし……」


声が柔らかい。

手も離れない。


魅亜は魅亜で、俺の腕を組んだままニヤッと笑う。


「ほーん……ねぇ玲磁。

 あたしから見ても“安心できる人”なんだよ? 一応?」


「なんで俺を取り合う流れになってんだよ!!」


どっちを見ても視線が刺さるので、

俺は文具屋のドアを押し開けて逃げるように店内へ入った。


「はいはい入るぞ!!」


「はーい」「……うん」


二人の返事は綺麗に重なった。


(あー……これは……絶対まだ何かあるやつだ)


そんな予感を抱えながら、

俺たちは魔法文具店の中へ消えていった。

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