#63 悪ガキとガリ勉
錬金術の片付けが終わると、昴・朝・明日香・碧は
「また明日なー!」
「今日は疲れた、氷は繊細なのよ……」
「プリン食べに行こ」
などと言いながら、それぞれバラバラに帰っていった。
教室に残ったのは、俺と――
貴満、鉄駔、理紅虎の三人。
なんとなく同じ方向だったので、
帰りがてら雑談をしながら歩くことになった。
貴満は淡々としている。
「天竜くんの“時属性石”……興味深いです。
本当に時間を操作して生成しているなら、理論化できれば大発見ですよ」
理紅虎は楽しそうに笑った。
「すごかったよ、玲磁。
フェンリルも“なんじゃこりゃ”って顔してた」
(幻影のフェンリルが“なんじゃこりゃ”は面白いな……)
鉄駔は顎に手を当て、真顔で頷く。
「……時は、鉄を超える可能性がある」
「鉄を基準にするなよ……」
そんなふうに3人と歩いていると――
廊下の向こうから、見慣れた二人組がこっちへ歩いてきた。
皓と陶之助だ。
「あ、玲磁ー!……って、お前らもか」
皓が笑いながら手を上げた瞬間――
横で貴満がピタッと足を止めた。
同時に、陶之助も眉を寄せ、面倒くさそうに舌打ちする。
「……お前か、慈恩寺」
「……京極くん。今日も機嫌が悪そうですね」
二人の間に走る、目に見えるような火花。
(うわ、出た。中学から犬猿の仲って言ってたやつだ)
皓も苦笑いを浮かべる。
「おいおい、また始まるのかよ。
その“バチバチ視線ゲーム”いつまで続ける気だ?」
陶之助が肩を回す。
「別に。こいつの顔見ると反射でムカつくだけだ」
貴満はメガネを押し上げ、淡々と返す。
「僕も同じ気持ちです。
あなたの“野蛮な実技”を見てると、脳が腐るんですよ」
「黙れ、ガリ勉」
皓は吹き出しながら俺の肩を叩く。
「なあ玲磁。
お前、なんでこう……両極端なやつらを引き寄せるんだ?」
「俺のせいかよ」
理紅虎はおっとりした声で微笑む。
「うーん……相性最悪同士だけど、
なぜか似てるところもある気がするけどねぇ」
「は?」
「どこがですか?」
鉄駔だけは冷静に一言。
「同じ人間だ」
「そこ!?」
と、皓と俺が同時に突っ込んだ。
陶之助は貴満を横目で見ながら言う。
「まあ、ケンカ売られねえ限りは何もしねぇよ。
中学みたいなくだらねぇ騒ぎはしねぇ」
貴満もそっぽを向きながら小さく息を吐く。
「僕も、あなたに関わって得することは一つもないですからね。
……無駄な争いはごめんです」
一応、落ち着いた……のか?
皓は手を広げて笑う。
「で、玲磁。
今日はガリ勉達と帰りか?」
俺は肩を竦めた。
「まあ、たまにはこういうメンツも悪くないしな」
貴満は静かに頷き、鉄駔は「帰路までが錬金だ」と真顔で言う。
理紅虎はフェンリルの幻影を揺らしながら笑っている。
陶之助は渋い顔でため息をつき、
皓はどこか楽しげに頭をかいた。
「……なんか、このメンツが合わさると
“まともなの誰もいなくね?”って感じになるな」
「お前が言うな皓」
皓のツッコミで、なぜか全員が吹き出した。
こうして――
悪ガキトリオとガリ勉トリオの初遭遇は、
妙な緊張と笑いを残したまま終わった。




