#57 実験は続く
実験がひと段落したところで、
大河が腕をぐるぐる回しながら、にかっと笑った。
「なぁ、天竜。
俺、ストッパーで呼ばれたけどよ……
やってみてぇ! 合体魔法!」
「……出たなこの兄貴肌デカ怪獣」
俺は笑いながら言った。
紫亜が意外そうに眉を上げる。
「あなた……自分からやりたいって言うタイプなのね?」
「当たり前だろ! 面白そうなことは全部やる!」
(……この人、ほんとに強いし気持ちがいいやつだな)
紫亜は少し考えたあと、頷いた。
「……まあ、土×火なら安全性も十分あるわね。
昴、お願い」
昴が振り返って親指を立てる。
「任せろ。大河となら“ガチの火山”作れそうだしな」
「お前、不穏なこと言うなよ……!」
俺が突っ込むより早く、二人が構えた。
昴が真っ赤な魔力を立ち上げ、
大河が地面に掌を当てると、
土の魔力が“ドォン”と響くみたいに空気を震わせた。
次の瞬間、
二人の魔力が溶け合い――
ゴゴゴゴ……ッ!
部室の中央に、灼熱の“マグマ”の幻が立ち上がった。
大河の土の重さが、
昴の火の荒々しさと噛み合って……
まるで本物の火山噴流のミニチュア版。
紫亜が感心したように言う。
「……これは強い。“攻撃系合体”としては上位よ」
昴は嬉しそうに胸を張り、
大河はキラッキラした目で叫んだ。
「おおお!!すげぇ!!俺、火山になった!!」
「いやお前が火山なのは違うだろ」
俺は笑った。
マグマを消し終わる前から、夢威が手を挙げた。
「……次、やりたい……」
「夢威? 誰と組むんだ?」
俺が聞くと、彼女は自然と遥花の方を向いた。
「……遥花ちゃん。
風と土……相性、いい……気がする……」
遥花は少し驚いたように瞬きをした。
「え……わ、私……?」
「大丈夫よ遥花さん。風に合わせればいいだけ」
紫亜が優しく言った。
遥花は小さく深呼吸し、頷いた。
「やって……みます」
夢威の風は、強くないのに“美しい形”をつくる。
ふわっと集まった空気が渦を描き始め、
遥花はその渦にそっと土の魔力を流し込んだ。
すると――
ザザザザッ!!!
トルネードの中から“尖った葉”や“枝の欠片”みたいなものが
一斉に舞い散り始めた。
まるで 針葉樹の森が、渦ごと飛んできたような魔法。
紫亜の目がまた真剣になる。
「……やっぱり。
土なのに“木質の成分”が混ざってる……」
明日香も唸る。
「これは……ただの土じゃあり得ない……」
遥花本人だけがポカンとした顔で、
「え?え?そんな……!?
だ、だって私、土属性で……」
夢威はうっとりした声でつぶやいた。
「……森の匂い……した……」
俺は心の中で思う。
(……やっぱり、遥花……“眠ってる属性”がある)
まだ確定じゃない。
けど確信に近い感覚だった。
紫亜がゆっくり遥花に向き直る。
「遥花さん……あなた、本当に“まだ全部を知らない”のね」
遥花は胸に手を当て、少し震えていた。
「わ、私……まだ知らない自分がいるみたいで怖いけど……
でも、皆さんとなら……大丈夫かも……」
俺は自然と笑っていた。
「大丈夫。焦らなくていいって言ったろ。
――ここは研究部だし、答えはみんなで探す」
遥花は小さく微笑んだ。
その笑顔を見た瞬間、
今日の全部の疲れがすっと軽くなる気がした。
遥花が今後どうなるかは見てのお楽しみ。




