#55 才能の集結
放課後、俺・昴・夢威・紫亜の4人で
「今日は何を組み合わせてみるか」って軽いミーティングをしてた。
そこへ――
部室の戸の隙間から、桃色の髪がそっと覗いた。
遥花だった。
昼休みに琉月さんと楽しそうに話してて、少し距離が縮まった気がしたけど……
今は胸の前で両手をぎゅっと握りしめて、やっぱり緊張してる。
「あ…あの……」
小さく震える声。
「桜さん? どうした?」
俺が声をかけると、遥花はさらにモジモジしながら、
「えっと……その……
ずっと迷ってたんですけど……
わ、私……入部したいなって……思って……」
その瞬間、空気がふわっと緩んだ。
昴が微笑む。
「前に悩んでたもんな。決心したんだね」
遥花はこくこく頷き、耳まで赤い。
「はい……。玲磁くんが……楽しそうで……
私も、力になれたらって……その……」
(……そんな風に見えてたのか)
ちょっとむずがゆい。でも悪くない。
「もちろん歓迎。手伝ってくれたら助かるよ」
そう言うと、遥花は胸に手を当てて、ほっとしたように微笑んだ。
「が、がんばりますっ……!」
その横で夢威がぽそっと、
「……遥花ちゃん、いい匂い……」
紫亜が肘でつつく。
「夢威、それは言わないのが礼儀」
夢威は「……ふにゃ……」とだけ返した。
ほんと、この部は個性が濃い。
遥花が加わって少ししたころ。
コンコン、と部室の扉が軽く叩かれた。
開けると――氷の気配。
「あれ、例の氷の子だ」
思わず口に出た。
明日香は俺の顔を一瞬だけ見て、すぐ横に視線を逸らす。
「……別に、あんたたちに興味があるわけじゃないんだけど」
その声を聞いただけで隣の昴がビクッ。
(まだ和解できてないもんな。あいつら)
明日香は続ける。
「……氷って希少属性でしょ。
その可能性、広げたくて……
ここなら……できるかなって……」
俺と夢威は顔を見合わせた。
「つまり、入りたいってことでいいのか?」
「……うるさい。そうよ。
ひとりで研究してても、進まないし」
昴が小声で
「あ、あすか……その……」
と言いかけたが、
「あなたに話してない」
と即切り捨てられていた。まあ、いつものことだ。
明日香は俺の方を見た。
「……部長さん、返事は?」
「もちろん歓迎。氷は未知が多いし、来てくれたら嬉しいよ」
明日香はそっぽ向いたまま、ぽつり。
「……ありがと」
夢威がまたぽそっとつぶやく。
「……氷、きれい……すき……」
紫亜は腕を組んで興味津々。
「闇×氷……これは面白いかも……」
「なに勝手に組み合わせようとしてんのよ!」
明日香のツッコミで場が少しにぎやかになった。
夕方。
部室の前に、どすんどすんと低い振動。
(……絶対大河だろ)
扉が開くと、やっぱり大河だった。
頭をかきながら入ってくる巨体。
「よォ、玲磁。今日ぶりだな」
「お、おう……大河」
大河は紙をひらひらさせる。
「沙羅先生からよ。“合研部を止める役やってくれ”って頼まれた」
「……まあうちの顧問でもあるしな……」
大河は豪快に笑った。
「いや、面白そうだから来たんだよ。
お前ら、頭おかしいくらい強いし危ねえし」
「褒められてる気がしねぇんだけど!?」
昴が苦笑。
「ストッパー役……確かにもう一人欲しかったから助かるよ」
夢威は見上げながらぽそ。
「……大河、大きい……なんか落ち着く……」
紫亜は真剣な顔になって、
「大河くんは制御力が高いわ。
合体魔法の“土台”として最適」
「なんだ土台ってよ。……ま、よろしく頼むわ!」
大河は照れくさそうに笑った。
こうして“安全性の化身”が加入し、
部は一気にバランスが整った感じがする。
気づけば――
玲磁
昴
夢威
紫亜
遥花
明日香
大河
この7人がそろっていた。
部室の空気が、
“部活”から“本気の研究チーム”へ変わっていくのがわかる。
廊下を歩く生徒たちもざわついていた。
「Aクラスの紫亜もいるらしいぞ」
「氷の明日香まで?」
「遥花ちゃん入ったの可愛すぎ」
「大河ってストッパー要員なの?草」
いや、もう噂で部が勝手に膨らんでる。
でも――俺は思った。
(……この部、絶対ただの研究部じゃ終わらねぇ)
ここから何かが動き出す。
そんな予感が、胸の奥でふつふつと湧いていた。
合体魔法研究部が7人揃い、研究が一気に進みます!




