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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第一章 入学編

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#45 嵐の問題児

ひかる陶之助すえのすけが俺を茶化してわいわい騒いでいる、その瞬間だった。


ふわり、と風が揺れた。


――嫌な予感がした。


次の瞬間。


「ずいぶん楽しそうね、あなたたち」


三人まとめてビクッと振り返った。


案の定そこには沙羅さら先生がいた。

なんでこの人って、物音ひとつ立てず真後ろに現れんの?


俺は青ざめた。


「や、やべ……今の聞かれた……?」


皓がボソッと囁く。


「お前、心当たりありすぎるだろ」


いや、たしかに否定できねぇけど。


でも沙羅先生は、俺らのアホな会話には触れず――

ごく普通の口調で切り出した。


「……魔法倫理学、受けたようね」


「あ、はい……まぁ、その……なんとか生きて帰ってきました」


皓はすぐ愚痴モード。


「アイツほんっっっと厳しいっすよね!

 “返事が0.1秒遅い”だけで怒られるとか意味分かんねぇし!」


陶之助がため息。


「理屈は正しいから反論できねぇのが一番性質タチ悪い」


すると――


沙羅先生が、くすっと笑った。


「そうでしょうね。

 ――私も昔、散々しごかれたもの」


「……えっ?」


俺も皓も陶之助も同時に振り向いた。


しごかれた?

沙羅先生が?


「私が学生の頃、祭吏先生は今よりもっと厳しかったわよ。

 “嵐の問題児”だった私に、魔法倫理を徹底的に叩き込んだの」


“嵐の問題児”。


その2つ名は前に皓から聞いた。

でも――今、初めて意味が分かった。


(あ、マジの問題児だったんだ……)


皓も半口開けて言う。


「沙羅先生……本当に問題児だったの……?」


陶之助が小声で乗っかる。


「いや、あの雷の馬鹿親父といい、

 強ぇ大人ってのは意外と素行悪かったんじゃねえか…?」


俺は思わず先生を見る。


「先生、昔から風だったんすか?」


「ええ。今よりずっと荒れてたわ。

 風は気分に引っ張られやすい属性だから、

 思春期なんて最悪よ。

 雷属性と並んで“事故率ワースト2位”だもの」


……コワ。


沙羅先生はくすりと笑い、続けた。


「だからこそ言えるの。

 祭吏先生の授業は“理不尽に見えて理不尽じゃない”。

 あなたたちに魔法使いとして必要な現実を、

 できるだけ早いうちに叩き込もうとしてるのよ」


そう言ってから、

先生は少しだけ優しい目になった。


「玲磁。あなた、今日はよく頑張ったわ」


一瞬、胸の奥がギュッとした。


俺は無意識に背筋を伸ばす。

……この人、褒める時だけ妙に優しいのズルいんだよな。


皓がすぐに茶化す。


「ほら出た、玲磁にだけちょっと甘いやつ!」


「うっせぇよ! 特別扱いされてねぇし!」


陶之助が肩をすくめる。


「いや、されてるだろ」


「してねぇ!!」


俺が全力で否定するのを尻目に、

沙羅先生は風をまとったままくるりと背を向けた。


「……私は職員会議があるから行くわね。

 あなたたち、廊下で騒ぎすぎないように」


「「「はーーい……」」」


沙羅先生は本当に風みたいに消えていった。


その背中を見ながら、俺はぼそっとつぶやく。


「……あの人、やっぱりカッコよすぎる」


皓が即ツッコミ。


「お前ほんと担任のことになると語彙力消えるよな!」


陶之助も笑う。


「否定はしねぇけどな。あの人は強ぇよ」


俺たちはまた笑いながら階段を降りていった。


――祭吏先生と話した時は、胸が苦しかったのに。

今は不思議と軽い。


(……ああ、なるほど。

 こういうのが“支えられてる”って感じなのかもしれねぇな)


風が背中を押すみたいに、

ゆっくりと気持ちが前へ向いていくのが分かった。


如月きさらぎ 沙羅さらは高校時代荒れに荒れまくって、教師陣の手を焼いていました。

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