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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第一章 入学編

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#46 1-A 佐々峰 紫亜

放課後。

俺はいつものように、静かなはずの合研部の扉を開けた。


……が、中は妙に空気が濃かった。


すばるは資料をまとめてて、

夢威むいは窓際で眠そうに風を弄んでいる。

俺はというと、いつもどおり机の端に腰掛けるつもりだったのに、

なぜか部室の前を通った時点で“視線の多さ”を感じた。


夢威がふわ〜っと欠伸しながら言う。


「今日……部室の前、人多かった……」


昴は肩をすくめる。


「そりゃ噂になるさ。火と風の合体が成功したんだぞ。

 合体魔法は研究者すら“夢物語”扱いなのに、俺たちは数日で結果を出したんだ」


俺はニヤッとしながら言う。


「でもあれ、マジで芸術だったよな。

 風が火の軌道を描いて……夢威、お前の風、すげぇよ」


夢威は指先に小さな風をまとわせ、ぽそりと呟いた。


「……またやりたい……」


その瞬間、部室の扉が軽くノックされた。


コン、コン。


昴が眉を上げる。


「この部活を訪ねてくるやつなんて、まだほとんどいないはずだが……」


扉を開けた俺は、一瞬、言葉を失った。


佐々さざみね 紫亜しあが立っていた。

長い黒髪に琥珀色の瞳。

以前、廊下で少し話したことはあるが……

正直、あまり関わりたくないタイプの天才だ。


「こんにちは、合体魔法研究部。

 席をひとつ用意しておいてくれる?」


完璧な笑み。

あまりに自然で、拒否するという選択肢を最初から奪っている。


昴は驚きながらも丁寧に応じた。


「……噂を聞いたのかな?」


「ええ。“火×風”の成功。

 世界的にも前例がほぼないのに、あなたたちは数日で成し遂げた。

 こんな面白い現象、放っておく理由はないでしょう?」


俺は一歩後ずさる。

来たよ……学科最強の知識モンスター……

絶対めんどくさいタイプの天才じゃん……!


夢威は紫亜の気配を感じた瞬間、髪がピンと立った。


「……頭のいい匂いがする……」


紫亜はその反応すら楽しむみたいに微笑み、部室に入る。


「この部活、入部させてもらえる?

 “合体魔法”は歴史になる分野よ。そこに関わらない理由がないわ」


昴はほぼ即答だった。


「歓迎するよ。理論担当として力を借りたい」


夢威も小さく頷く。


「……よろしく……」


紫亜は最後に俺の前でぴたりと止まる。


「部長さん。あなた、時魔法を使うのよね?」


「……まあ、一応」


「その未知数、調べ尽くすのが楽しみ」


ぞわっと背筋が冷えた。


「……やりづれぇ部員が来た……」


紫亜は静かに笑っただけだった。



部室の外では、気配を隠した声が飛び交っていた。

遠くから聞こえるだけだが、内容はだいたい察せる。


“合研部に紫亜が入ったらしい”

“部長は1-Eの天竜?”

“時魔法って噂の?”

“火と風の合体魔法って、本当に……?”


その最後の声だけ、妙に胸に引っかかった。

さくら 遥花はるかの声だった。


扉のほうへ目を向けたが、

彼女はもう影に溶けていて姿は見えなかった。

……あの子、まだ自信がないんだろうな。



部室へ戻ると、すっかり場の空気が“研究所”になっていた。


昴は真剣な顔で言う。


「役割分担を決めよう。

 ここから先は本当の研究になる」


夢威は眠そうにしながらも、


「……むいは風担当で……眠くなければ……がんばる……」


紫亜は即座に言い切る。


「私は理論担当。

 魔力回路、術式解析、属性相関――全部任せて」


俺はそれを聞きながら苦笑する。


「たしかに……なんか本格的になってきたな。

 部活っていうか……研究チームだろこれ」


昴は笑って言った。


「世界初の“本物の研究部”になるかもな」


その時。

窓がコン、と鳴った。


振り向くと、鴇任ときとう 明日香あすかが外に立っている。

氷のような瞳。

昴を見ているようで、見ていない。


――会話はなくても、重い空気だけは伝わる。


彼女は静かに言った。


「……火と風ができたなら。

 氷でも実験できるはず。……手伝ってあげてもいい」


そう告げて、すぐに去っていく。


昴の表情がほんの一瞬、揺れた。

あの二人の間には、まだ解けていない氷がある。


「……なんだあの距離感。なんでああなるんだよ、昴」


「……全部、俺のせいだよ。でも……来てくれるなら、それでいい」


夢威は小さく呟いた。


「仲直り……できるといいね……」


紫亜は椅子に座りながら、状況を興味深く眺めていた。


「面白くなってきたわね、この部活。

 全員、何かしら抱えてるじゃない」


「褒められてる気がしねぇ!」


俺が叫ぶと、紫亜は楽しそうに微笑んだ。


――こうして、合研部は本格的に“動き始めた”。


いつの間にか、

この小さな部室が、学校中の視線を集める場所になっている。


そしてその渦の中心に、なぜか俺がいて――


(……まぁいいか。

 退屈しないのは間違いねぇし)


そんなことを思いながら、

俺は次の実験準備に手を伸ばした。

ここから一気に合研部が広がっていきます。

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