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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第一章 入学編

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#41 戦闘術の余韻

食堂のざわつきは、昼の匂いと混ざって妙に心地いい。

皓との戦闘で身体のあちこちが筋肉痛だけど、腹は普通に減る。


…今日は属性フェアはやってないらしい。


トレーを持って席を探していると、

ふと視界に異様な山が映った。


(……あれ、食いすぎじゃね?)


大盛り二杯のご飯と、肉料理二皿。

黙々とスプーンを動かしているのは、

戦闘術の最後に瑞翔を吹っ飛ばした――水無みずなし 寡燐かりん


火と水の同時発動。

静かな圧。

無表情なのに妙に目を引く雰囲気。


正直、気になる。


俺はほぼ無意識に口が動いていた。


水無みずなしさん、だよね。隣、いい?」


寡燐がわずかに顔を上げ、

淡いオッドアイがこちらを映す。


「……どうぞ」


短いけど、拒まれてはいない。


向かいに腰を下ろすと、

近くで見る彼女は思ったより華奢で、

それなのに食う量だけは規格外だった。


「俺、天竜てんりゅう 玲磁れいじ

 戦闘術……見てたけど、すげぇな。

 二属性ってああなるんだな」


寡燐はご飯を飲み込んでから、一度だけ頷いた。


「あなたも……見えました。

 時の……“ゆがみ”」


「マジで?」


驚いて声が上ずった時、

ふわっと柔らかい声が近づいた。


「あ、玲磁くん……! ここにいたんだ」


遥花はるかだ。

ピンクの髪が昼の光で淡く揺れてる。


俺と寡燐を交互に見て、少し緊張しながら笑った。


「二人ともここで食べてたから……

 えへへ、混ぜてもいい?」


寡燐がほんの少し表情を緩めたように見えた。


「……別に」


そのひと言に、遥花は嬉しそうに席へ。


次に――背中から遠慮のなさの塊が聞こえてきた。


「お、珍しい組み合わせじゃん。

 昼から濃いメンツ揃ってるな!」


振り返る前に分かった。

昴だ。


「お前はどこにでも混ざるな」と俺が言うと、


「いや玲磁、お前のとこに行けば絶対面白いこと起きるんだよ。

 引力みたいなやつ」


「はいはい太陽かよ」


「褒めてんのに!」


昴が笑って座る。


最後に、そっと影が差した。


「……むいも……ここ、座る……?」


夢威むいが眠そうな目をこすりながら椅子にすべり込む。


「絶対寝る気で来ただろ」


「むい……お腹いっぱいだと……眠くなる……

 いや、減ってても眠い……」


「常に眠いだけだろ」


昴が吹き出し、遥花が笑い、寡燐は黙々とご飯を食べ続けた。


自然と、輪ができていく。



遥花が俺を見つめて、小声で言った。


「玲磁くん……さっきの戦闘、本当にすごかったよ。

 あんな雷を相手に……」


「いや俺、普通に吹っ飛ばされたけど?」


「それでも……なんか“余裕”に見えたよ」


……余裕は“見せてただけ”なんだけどな。


昴が腕を組む。


「俺はアレだな。

 玲磁の水時計? あれが一番ヤバかった。

 雷の中であんな滑らかな時間のズレ、どうやるんだよ」


「ズレてないっての。遅らせただけだし」


夢威がぽそっと言った。


「ううん……風、逆になってた……

 玲磁の、時の膜に風が吸われてた……」


(……マジでこの子、何でも見えるな)


遥花が寡燐に話を振る。


「寡燐さんも……すごかったよ。

 火と水、あんな綺麗に出せるんだね」


寡燐は少しだけ箸を止めた。


「……感覚。

 右手と左手を動かすみたいな……それだけ」


昴が椅子からずり落ちそうになった。


「“それだけ”で瑞翔吹っ飛ばしたのかよ!?」


夢威がぼそっと呟く。


「むい……寡燐ちゃん、むいに似てる……

 ふたつ同時に動かすの……考えるより、手が勝手……」


「天才組だな、お前ら……」


俺が苦笑すると、

寡燐は小さく首を横に振った。


「……違う。

 ただ……生まれただけ。

 そういう体に」


その言葉は淡々としてるのに、

どこか自分を遠ざけてるみたいで、

聞いた俺の胸がちょっとだけ痛くなる。


遥花がそっと微笑んだ。


「でも……寡燐さんの魔法、本当に綺麗だったよ」


寡燐はほんの一瞬だけ目を伏せ――


「……ありがとう」


その声は小さいけど、さっきより柔らかかった。


昴が大げさにテーブルを叩いた。


「いやー、豪華メンツすぎるだろ今日!

 玲磁に寡燐に夢威って、なんだこの才能テーブル!」


「俺は普段150位だって!」


「その150位が時止めそうなのが問題なんだよ!」


夢威は船をこぎはじめ、


「むい……ご飯……残ってる……でも……眠……」


「食え!!!」

と昴が揺さぶる。


遥花は楽しそうに笑い、

寡燐も気づかれないくらいの小さな仕草で、

ほんの一瞬だけ口元を緩めた。


(……悪くねぇ昼だな)


無表情で大盛りを完食する寡燐の横で、

夢威は眠りかけ、

遥花は和ませ、

昴は騒ぎ、

俺は――自然と笑っていた。


こうして、ひとり増えた輪は静かに広がっていく。

玲磁は、元気な人や積極的な人には自然と群がられる分、

物静かな人には自分から話しかけにいくタイプです。

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