#33 ホームルーム
翌朝・1-Eホームルーム
教室にゆるいざわめきが広がる。
入学して数日、緊張はほぐれ、少しずつクラスの色が見え始めていた。
沙羅先生が黒板に数項目を書き並べる。
「本当は初日にやる予定だったけれど…今日はクラスのスローガン、委員、役割分担などを決めるわ。
ちょっと上級生の授業に呼ばれているので私は席を外します。
戻るまでに話をまとめておくように」
そう言い残し、颯爽と出て行った。
教室が一瞬で自由時間の空気に変わる。
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瑞翔がぽつりと言う。
「……じゃ、決めないと怒られるよな。どうする?」
理紅虎がゆっくり頷く。
「スローガンって、どういうのがいいんだろう……?
“みんなで仲良く”とかは普通すぎるし……」
「いや普通で良くねぇか?」
虹矢が雑に口を挟む。
「つーかよ、うちのクラスあんま尖ってる奴いねえし、無理すんなよ」
「こら虹矢くん、言い方が……」
遥花が苦笑して止める。
桃色の長髪がふわり揺れた。
魅亜は机に身を乗り出し、元気よく手を挙げる。
「はいっ! うち、“優しいクラス”がいいと思います!
遥花ちゃんもいるし、みんな話しやすいし!」
「わ、わたしはそんな……」
遥花は頬を赤らめた。
瑞翔が噴き出す。
「遥花さんが優しいのは同意だけど、“優しさ基準のスローガン”って珍しいな……」
俺も一言。
「“のびのびやろうぜ1-E”とか?
俺としては怒られにくい方向に持ってくと嬉しいんだけど」
「それお前が得するだけだろ」
虹矢が即ツッコミ。
理紅虎はふっと笑った。
「でも……玲磁らしさあっていいかも。
“のびのび”って、みんな当てはまりそう」
「じゃあ、“のびのび1-E”でよくね?」
「略し過ぎだよ、虹矢くん……!」
とは言いつつ、案外みんな嫌ではない顔だった。
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■ 02 役割分担の雑な話し合い
魅亜が突然言い出す。
「学級委員は……瑞翔くんじゃない?」
「なんでだよ!?」
「落ち着いてて、なんか“雑務を任せても安心”みたいな雰囲気ある!」
「褒められてる……のか?」
玲磁が言う。
「瑞翔なら賛成。まあ俺よりは向いてるわ」
「比較対象に俺を使うなよ……!」
その隣で理紅虎が小声で手を挙げた。
「あの……もし瑞翔くんが委員なら、ぼくは副委員やってみたい。
少しだけ、そういうのに挑戦してみたいから」
「おお、理紅虎くんが!」
魅亜がぱあっと明るくなる。
瑞翔は完全に押され気味。
「えぇ……みんながいいなら、別に俺でいいけど……」
「決まりだな!」
玲磁と虹矢がなぜか“代表者側の顔”でうんうん頷いた。
遥花が微笑む。
「よかったぁ……瑞翔くんなら、きっと上手にまとめてくれますよ」
「……プレッシャーがすごいんだが」
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スッと扉が開き、沙羅先生が戻ってきた。
「――決まった?」
「はい! 瑞翔委員長と理紅虎副委員、あとスローガン“のびのび1-E”です!」
魅亜が元気よく挙手。
玲磁の内心は(ちょっと待て、本当にこれ通る?)だったが、もう遅い。
沙羅先生は腕を組んで、静かに聞いた。
「……なるほど。“のびのび”。
――あなたたちらしいわね」
なぜか笑っていた。
「じゃあこれで進めましょう。、
スローガンが“のびのび”なら、
その分、締めるところはしっかり締めてもらいますからね?」
玲磁がぎくりと固まる。
(なんで俺を見ながら言うんだよ……)
クラスは笑いに包まれ、
1-Eの“空気”がここにひとつ完成した。
あれよあれよの内に学級委員長をされられる瑞翔。




