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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第一章 入学編

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#32 合体魔法研究部

放課後、中央棟の端にある小規模の部室棟。

新品の札が掲げられた扉には――


「合体魔法研究部」


俺は、その文字を見ただけで思わず笑った。


中へ入ると、先にすばるが荷物を片付けていた。


「おー、玲磁れいじ。今日から正式スタートだな。

 沙羅さら先生も“監督はするけど邪魔はしない”って言ってたから、

 安心して研究しようぜ」


「ああ、存分に暴れ……るのはまずいか」


「ははは。あくまでも常識の範囲と言いたいが、せっかくやるなら常識を超えた研究も必要だろ」


「お、さすが副部長。いいこと言うね」


椅子に腰を下ろすと、

部室の扉がコツコツと二回ノックされた。


ゆるく髪を揺らしながら入ってきたのは――夢威むい


「やっほ……部室、ここで合ってるよね。午前ぶり」


眠そうな目で、しかし迷いなく俺の隣に座る。


「夢威、お前ほんと自由だな」

「うん。自由だよ。……あ、入部届、出してきた」


机にぽん、と書類を置く。


昴がそれを見て嬉しそうに笑った。


「歓迎する。初回メンバーが増えると助かるよ」


夢威は軽く会釈だけして、

部室をきょろきょろ眺め始めた。


「ここ、落ち着くね……眠りやすそう」

「寝るな」

「努力はする……」


俺と昴が同時にツッコむ。

初日からこの空気、悪くない。


そこへ、もうひとつ影が差した。


扉が開き、風がひと筋抜ける。


「失礼するわね。初回だから、私も顔を出しておくわ」


沙羅先生だ。


仕事用の表情というより、

“子どもたちが何やら面白いことを始めるのを見にきた大人”の顔。


「活動方針は聞いているわ。

 合体魔法――実現したら相当に危険で、

 相当に価値がある技術ね。

 ただし、玲磁くん」


「分かってますよ。“暴走はなし”。でしょ?」


「当然よ。あなたの“あれこれ”は私の監督下のみ。

 部でも同じ。約束を破ったら――分かってるわよね?」


「……はいはい。減点でしょ。

 おとなしくしてますって」


沙羅先生は満足そうにひとつ頷く。


「なら良いわ。あとは好きにしなさい。

 必要な設備があれば申請して。ちゃんと通すから」


「うお、沙羅先生が優しい……」

「優しいわよ? いつも」

「いやいやいやいや」


俺と昴が揃って後ずさる。

夢威は「ふふ……」とだけ笑った。


沙羅先生は部室を一巡し、


「昴くんと夢威さんも、彼が暴走しないようによく見ておくこと」


と釘をさし、


「期待してるわよ」と小さく残して去っていった。


扉が閉まると、しばしの静寂。


沈黙を破るように俺が一言。


「じゃ、とりあえず……何からやる?」


昴は机に肘をつき、考える。


「合体魔法って言っても範囲が広い。

 まずは“属性同士の接点が生まれる瞬間”を観察したい。

 同時詠唱でも、交互展開でもいい。

 試運転って感じだな」


夢威がのそっと手を挙げる。


「風……なら、いつでも出せるよ。

 軽いやつなら疲れないし」


「じゃあ、それだ。まずは風を中心に――」


俺は立ち上がり、指先に魔力を集める構えをしたが、


「……あ、そうだ。俺、制限かかってたんだ」


昴がすかさず笑う。


「玲磁、お前はまず“企画側”な。

お前の魔法は段階を踏んでからな」


「くそ……まぁ仕方ねぇか」


夢威は小さな風の球を浮かせながら言った。


「でも……玲磁の“時”と合わせるの、楽しみ……

 暴走しなければ、だけど」


「お前まで言うのかよ」


笑い声が部室に広がった。


合研部の初日。

 まだ形にならない魔法と、形になり始めた関係だけがそこにあった。


合研部 ― 初の実験:火 × 風


昴が立ち上がり、指先に赤い魔力を灯した。


「よし、まずは俺の火と夢威の風だな。

 風で火を伸ばすんじゃなく、“混ぜる”イメージでいこう」


「……うん。やってみる」


夢威は小さく息を吸い込み、

指先からそっと“揺れない風”を生み出す。

彼女の風は軽いが、精度が高い。軌道が乱れない。


俺は椅子の背にもたれながらそれを見ていた。


「まずは個々で魔力を安定させて……」


昴が火球を拳大に収束させる。

赤橙の球が“音もなく静かに”燃えている。


夢威はその周囲を薄い風の膜で包んだ。


「いくよ、昴……」


「来い」


風が火に触れた瞬間――


ぼうっ


一瞬、火が強く燃え上がる。

けれどそれは“風に煽られただけ”の普通の反応。


俺が即座に指摘する。


「今のはただの強火。

 風が燃料になってるだけで、“合体”じゃないな」


昴はうなずき、夢威と視線を合わせる。


「夢威。風の“回転”使えるか? 渦にして火の核に混ぜる」


「できる……と思う。

 風を“軸”じゃなくて、“器”にする」


夢威の指先が静かに回転を描く。

風が輪のように昇り、その中に昴の火球が吸い込まれる形になる。


昴は火力をあえて抑えた。

燃えすぎると風が吹き飛ぶ。


「……頼む」


夢威の風が火を包み込んだ瞬間――


ひゅるるる……っ ぼっ


火が風の軌道に沿い、螺旋状の炎が形成される。

火が風に“運ばれている”のではなく、

風の回転そのものが火の形を決めていた。


昴が思わず声を漏らす。


「……これ、普通の“ファイアストーム”よりもずっと安定してるぞ」


夢威も、珍しく瞳を開いた。


「ん……うん。

 昴の火、あんまり暴れなかった……

 風に“寄り添ってた”……」


俺は立ち上がり、近づく。


「熱も均一だな。

 炎の中心の温度、ほとんどブレてない。

 これ……合体の一歩じゃね?」


「だよな! 夢威、やっぱすげぇよお前!」


夢威は照れたように頬をかいた。


「えへ……でも、疲れた……ちょっとだけ……」


炎が自然消火した直後――

部室の扉がコンッと小さく鳴る。


沙羅先生が顔を覗かせた。


「……あなたたち、いま何したの?」


昴の表情が若干青くなる。

「あの、まだ小規模で……」


俺は謎の言い訳、

「爆発はしてません!」


夢威は冷静に、

「風と火をちょっと回しただけ……」


沙羅先生は深いため息をつき、

しかしどこか嬉しそうでもあった。


「……はぁ。

 正式初日からもう“成果”を出すとはね。

 でも、くれぐれも暴れないこと。

 危険を感じたら、即止めるから覚悟しときなさい」


「了解でーす」


俺は口では軽く答えながらも、

胸の奥が強くざわめくのを感じていた。


……これ、本当に成功するかもしれない。


合体魔法という夢が、

小さな螺旋の火風と共に、現実味を帯び始めていた。

部活動紹介


■1. 合体魔法研究部(合研部)


部長:天竜 玲磁

副部長:篝火 昴

顧問:如月 沙羅(属性攻撃演習)


活動内容:

新設部。複数属性を組み合わせた“合体魔法”の研究・開発。

既存の魔法体系を超える新魔法を創出する革新的な部。


主な部員:

天竜 玲磁、篝火 昴、風鈴 夢威


部員募集中!

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