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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第二章 トレーニング編

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#146 モンスター

翌日。


アルテリア魔法学校の全校生徒が、講堂に集められていた。

天井の高い円形の大広間。段状に並ぶ客席は、ほぼ満席だ。


ざわめきが残る中、壇上に立つ二人の姿に、次第に空気が引き締まっていく。


ひとりは、校長・助川 劉。

そしてもうひとり。

魔法史担当、式神(しきがみ) 詳(しょう)。


「静粛に」


詳の声は、拡声器を使わずとも講堂全体に澄み渡った。


「本日の講義は、『モンスターという存在』について。

 皆さんがこれから魔法使いとして生きていく上で、避けて通れない話です」


リュウ校長が一歩前に出る。


「まずは、世界の前提から確認しよう」


校長の背後に、魔法陣が展開され、地図が浮かび上がる。


「この世界には、現在——日本しか国が存在しない」


それは、知っているはずの事実。

だが改めて口にされると、どこか重い。


「海の向こうには大陸がある。

 しかしそこには、古代よりモンスターが棲み付き、定住は極めて困難……実質、不可能だ」


地図の向こう側が、暗く染まる。


「人類がこの島国に留まらざるを得なかった理由」

「それが、モンスターだ」


詳が引き継ぐ。


「モンスターとは、魔力環境によって自然発生、あるいは変異した生命群の総称。

 単純な獣から、意思と知性を持つ存在まで、多岐に渡ります」


空中に、次々と幻影が映し出される。


まずは——


「【スライム系】」


ぷるぷると揺れる半透明の個体。


「最下層から最上位まで幅が広い」

「油断した初心者を最も多く飲み込んできた系統でもあります」


客席のあちこちで、小さく息を呑む音。


「【ネポネポ系】【ゴブリン系】【オーク系】」


次々と切り替わる幻影。

数が多く、集団行動を取るもの。

知恵を持ち、武器や魔法を使うもの。


俺は、無意識に腕を組んでいた。


(……こうやって並べられると、改めて異常な数だな)


詳の説明は淡々としているが、どこか冷酷だ。


「【ゾンビ系】【スケルトン系】【ゴースト系】。

 これらは“死”と魔力が結びついた存在。

 倒したと思っても、条件次第で再生・増殖します」


遥花が、わずかに身をすくめる。


「【ドラゴン系】」


講堂の空気が、変わった。


巨大な影。

翼。

圧倒的な存在感。


「単体で国家災害級。

 遭遇した場合、逃走が最優先です」


そして——


詳は一拍、間を置いた。


「ここからが、本日の重要事項」


幻影が一段階、重々しいものへ変わる。


「三大災害魔獣」


名前が、順に浮かび上がる。


「ナイトコーリャス」

「ドライクス」

「ミノテック」


ざわめきが、はっきりと広がった。


「これらは、過去に人類文明を滅ぼしかけた存在。

 討伐ではなく、“封印”という形でしか対処できなかった例もあります」


そして最後に——


講堂全体を包む、圧。


「属性王」


詳の声が、わずかに低くなる。


「火・水・風・土・光・闇・氷・雷・熱・空・森

 それぞれの属性の頂点に立つ存在」


炎に包まれた不死鳥。

深海を覆う影。

風を裂く獣。


「彼らは、災害ですらありません

 ——概念そのもの」


誰も、言葉を発せなかった。


リュウ校長が、最後に締めくくる。


「君たちは、これからこれらと“向き合う側”になる

 倒す者、守る者、研究する者……立場は違えど、無関係ではいられない」


視線が、全校生徒に向けられる。


「だからこそ、学べ。

 力だけでなく、知識を。

 恐怖だけでなく、理解を」


俺は、静かに息を吐いた。


(……合研部でやってること)

(間違ってなかったな)


魔法とは、

ただ強くなるためのものじゃない。


——生き残るための、学問だ。


講堂を満たす静寂の中、

その現実だけが、全員の胸に深く刻まれていた。

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