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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第二章 トレーニング編

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#140 忍者の子

「……おなかすいた……から……やる……」


静まり返った決闘場に、

場違いなくらい気の抜けた声が落ちた。


……いや、どういう理屈だよ。


俺が視線を向けると、

夢威が、いつもの眠そうな目で前に出ていた。


「私、掛け持ちだけど……」

「今日は、合研部として出る……」


ざわ、と空気が揺れる。


決闘部側から誰かが笑いかけた、その瞬間。


夢威が、ぽつりと続けた。


「……國丸先輩、いるんでしょ?」


——その名が出た瞬間だった。


すっ。


音もなく、

“そこにいなかったはずの場所”から、

人影が現れる。


「ふむ」


低く、落ち着いた声。


「拙者でござるか」


忍者のような装束。

顔の半分は布で隠れ、気配が——薄い。


(……いたのか? 今まで)


「剛持 國丸……」


身体強化術・忍先生の一人息子。

二年生。決闘部でも別格の存在。


「闇属性。速度特化。隠密と瞬発の化け物……」


俺の口から、自然と情報が漏れる。


「夢威……」

「あれが國丸先輩だ。適性、どう見ても闇だぞ」

「……いけそうか?」


夢威は首を振った。


「ううん……」

「國丸先輩、超強いよ……」

「でも……速い人と走るの、嫌いじゃない」


それだけ言って、

結界の中へ、ふらっと入る。


右京先輩の声。


「——第4戦

 決闘部・剛持國丸

 対

 合研部・風鈴夢威」


開始。


次の瞬間——


消えた。


いや、正確には二人ともだ。


「はっ……?」


視界が追いつかない。


風が弾け、

影が跳ねる。


夢威の移動は相変わらず“点”だ。

重い一歩、軽い一歩、

踏んでいないはずの空間を蹴って跳ぶ。


「速い……!」


誰かが呟く。


だが——


國丸は、その“点”の先にいる。


「——そこ」


低い声と同時に、

影が夢威の足元に絡みついた。


「わ……」


夢威が体勢を崩す。


その瞬間、國丸は踏み込まない。

すでにそこにいる。


(……速さの質が違う)


夢威は“風になる”。

國丸は——消える。


闇の中で、

一瞬だけ交差する二つの影。


次の瞬間。


「——勝負あり」


國丸の手刀が、夢威の首元で止まっていた。


完全に、取られている。


結界解除。


夢威はその場に座り込み、

ぽそっと言った。


「……負けた……」

「でも……速かった……」


國丸は一礼する。


「良い風でござった」

「拙者も、少々楽しかった」


その一言で、

場の空気がざわめいた。


——夢威を相手にして、余裕。


(……上級生の壁、か)


俺は歯を食いしばる。


ここまで——


第1戦、決闘部の勝ち。

第2戦、決闘部の勝ち。

第3戦、決闘部の勝ち。

第4戦、決闘部の勝ち。


流れは、完全に決闘部。


「……まずいな」


思わず、声に出ていた。


「ここまで全部、決闘部が持っていってる」

「ダメ元とは言え……」

「ここまでやられるとは、正直思ってなかった」


右京先輩は、腕を組んだまま、何も言わない。


だがその視線は、

もう“勝敗”じゃなく——


次に出てくるやつを見ている。


(……さて)


(この流れ、誰が止める?)


俺の中で、

静かに覚悟が固まり始めていた。

登場人物紹介


●剛持(ごうもち) 國丸(くにまる)

【性別】男

【適性】闇

【総合順位】31位/150人

【学科】54位/150人

【実技】7位/150人

2-Bでトップクラスの実力者。忍者のような出で立ちで、3-A教師である剛持 忍の息子。古風な口調だが、優しさは親譲り。

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