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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第二章 トレーニング編

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#139 アルナ=レグル・ファルガ

弥来の勝利が宣告された瞬間、

決闘部の空気が一段、熱を帯びた。


その中心で——

一番分かりやすく反応したのが、魅亜だった。


「……よし」


小さく、でも確かな声。


(あ、入ったな)


あの子特有の“スイッチ”だ。

普段は明るくて無邪気。

でも一度火が点くと、別人みたいに集中する。


「弥来ちゃん、やったね!」

「次、あたしも行く!」


弥来が振り返り、満面の笑みを向ける。


「魅亜なら絶対いけるよ!」

「最近、火の制御めっちゃ上手いし!」


そのやり取りを、

合研部側から紫亜が静かに見ていた。


……いや、正確には“見ているだけ”じゃない。


「魅亜」


名前を呼ぶ声は低く、はっきりしている。


「火を怖がらないで」

「制御するんじゃなく、“受け入れなさい”」


姉として、研究者として、

そして闇属性の使い手としての助言。


魅亜は一瞬だけ真面目な顔になり、

それから、いつもの笑顔で頷いた。


「うん!」


俺も、無意識に口を開いていた。


「魅亜。焦るな」

「竜は……呼べば応える」


一瞬、目が合う。


「玲磁くん、見てて!」


(ああ……これは止まらねぇな)


そのときだ。


「やれやれ……」


頭をがしがし掻きながら、

大河が一歩、前に出た。


「こういう時はよ

 俺が出るしかねぇだろ!」


合研部の重鎮。

防御と持久の要。


「相手が火なら、土で受ける」

「分かりやすくて助かるぜ」


右京先輩が淡々と告げる。


「——第3戦

 決闘部・佐々峰魅亜

 対

 合研部・玄機大河」


結界、展開。


開始。


大河は、最初から守りに入った。


「<アース・ウォール>!」


分厚い土壁が、正面にせり上がる。

いや、“壁”というより城塞だ。


(鉄壁……)


魅亜は、動かない。


深呼吸、一つ。


「……来て」


炎が、彼女の背後に集まる。


「<アルナ=レグル・ファルガ>」


——火竜。


咆哮とともに、赤金の竜が顕現した。


「なっ……!」


大河が一瞬、目を見開く。


「初手からそれかよ!?」


「うん!」

「今のあたしなら、出せるから!」


火竜が突進する。


大河は即座に重ねる。


「<アース・ウォール・ラミネート>!!」


壁、二重、三重。

土と魔力を圧縮した、破壊前提の防御。


だが——


火竜は、止まらない。


炎が“押す”んじゃない。

喰らって、穿つ。


ゴォォォン——!!


土壁が、内側から赤く染まり、

次の瞬間——


粉砕。


破片が飛び散り、

火竜の頭部が、その向こうから姿を現す。


「嘘だろ……!」


大河の結界が砕け、

勝敗が決した。


「勝者——佐々峰魅亜!」


静寂。


次の瞬間、決闘部が沸いた。


「すげぇ……!」

「今の火力、1年かよ!」


魅亜は息を整えながら、

火竜を霧散させる。


そして——

合研部の方を向き、ぺこりと頭を下げた。


「ありがとうございました!」


大河は、地面に手をついて笑った。


「……参った」

「完敗だわ」


紫亜は、満足そうに目を細める。


「よくやったわ、魅亜」


弥来が駆け寄って、肩を抱く。


「やっぱ魅亜つよーい!」


俺は、胸の奥で小さく頷いた。


(決闘部は、決闘で勝つ)

(合研部は、意味を見つける)


——そして今、

両方が、少しずつ混ざり始めている。


次に前へ出るのは、誰だ。

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