#137 部活対決
右京会長の一言で、場の流れが決まった。
「せっかくだ」
「研究部と決闘部、即席で一戦やる」
ざわ、と空気が揺れる。
部活対抗——その言葉だけで、決闘部の温度が一段上がった。
「ルールは公式準拠」
「致命打なし。結界破壊で勝敗を決める」
右京の視線が、俺たち合研部に向く。
「誰が出る?」
紫亜が、一歩前に出た。
迷いのない動きだった。
「最初は私が行くわ」
「“研究だけの部活”じゃないところを、見せてあげたい」
(さすがだな……)
その瞬間。
「なら、俺だろ!」
決闘部側から、弾けるような声。
幸崎皓が、腕を鳴らしながら前に出てきた。
「合研部相手の一戦目!」
「景気づけにちょうどいい!」
雷の魔力が、もう漏れている。
右京先輩が短く頷いた。
「——第1戦
決闘部・幸崎皓
対
合研部・佐々峰紫亜」
結界が展開され、
中央の闘技スペースが切り取られる。
(1年同士……でも、魔力値は紫亜が上)
(問題は——初動だ)
紫亜は静かに立つ。
闇が、彼女の足元で呼吸するように揺れている。
皓は、逆に落ち着きがない。
いや——違う。
(あれは……)
「——行くぞ!!」
開始の合図と同時だった。
皓が、詠唱なしで踏み込む。
「<ライトニング・バースト>!!」
雷光が爆ぜる。
床を蹴った瞬間に加速、直線距離を一気に詰める。
「速っ……!」
遥花の声が遅れるほどの初速。
紫亜の影が、反応する前に——
雷が、結界ごと叩き込まれた。
闇の膜が歪み、悲鳴を上げる。
「っ……!」
紫亜は即座に後退、影を重ねて距離を取ろうとする。
「<シャドウ——>」
詠唱途中。
「遅い!!」
皓は止まらない。
雷を纏った拳が、
闇を“貫通”するように突き抜ける。
バキン、と乾いた音。
——結界、破壊。
勝敗は、一瞬だった。
「勝者——幸崎 皓!」
決闘部が沸く。
「っしゃあ!!」
「さすが皓!!」
「先手必勝すぎだろ!!」
紫亜は、結界の向こうで小さく息を吐いた。
悔しさよりも、冷静な分析の目。
「……なるほど」
「雷は、考える前に来るものね」
皓は肩で息をしながら、満面の笑みを浮かべる。
「悪いな!」
「考える前に倒すのが、俺のやり方だ!」
(くそ……)
俺は歯を食いしばる。
(実力差じゃない)
(完全に、初動で持っていかれた)
右京先輩は、淡々と告げた。
「これが“実戦”だ」
「考えた魔法ほど、発動前に潰される」
そして、こちらを見る。
「次は誰だ?」
合研部の背中に、
本物の緊張が走った。
——部活対抗決闘は、
まだ始まったばかりだった。




