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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第二章 トレーニング編

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#136 実践で生きてこそ

部室に残った空気は、さっきまでの緊張が嘘みたいに緩んでいた。

魔法陣の残滓も消え、ただの放課後の匂いに戻っている。


俺は椅子にもたれ、天井を見上げながら言った。


「……思ったんだけどさ」


視線が集まる。

この間は、もう合研部ではお約束だ。


「研究部って言っても、毎日毎日こうやって理屈こねて、新しい魔法組んでるだけだと……正直、つまらなくならないか?」


言い切ったあと、少しだけ間を置く。


昴が、即座に頷いた。


「確かにな。

 完成度は上がるけど……実感が薄い」


さすが、同じ感覚を持ってる。


「実践に使えてこそ意味があるだろ

 使えない理論は、机の上の飾りだ」


紫亜が腕を組み、静かに微笑んだ。


「同意するわ

 研究は、結果が“生きて”いなければ意味がないもの」


明日香は一歩引いた位置で、俺を見ている。


「……また何か、始める気ね?」


その言い方に、ちょっとだけ苦笑する。


「まあな」


遥花が、少し前のめりになった。


「玲磁くん……何か、考えがあるの?」


俺は椅子から立ち上がり、軽く肩を回す。


「まだ時間もある。

 決闘部、覗いてみないか?」


一瞬、部室が静まった。


「たぶんだけど

 右京会長、これから決闘部に顔出すはずだ」


その名前が出た瞬間、

全員の意識が一段階引き締まるのが分かった。


大河がニヤッと笑う。


「ほう?

 それは……面白そうだな」


夢威は、眠そうなまま手を挙げた。


「決闘部……走らなくていい?

 走るならお腹すく」


「たぶん走る」


「じゃあ行く」


即決だった。


「と言うか夢威は決闘部と掛け持ちだよな?」


「……うん」


まさか忘れてたんじゃないよな……?


紫亜は興味深そうに顎に指を当てる。


「合研部の魔法を、実戦で試す……」

「いい刺激になりそうね」


明日香は少しだけ迷ってから、頷いた。


「……見学だけなら」


昴は言葉少なに、立ち上がる。


「行こう」


(よし)


俺はドアに手をかけた。


「じゃ、決まりだな」


扉を開けた瞬間、

空気が違う。


音が荒い。

魔力のぶつかる低音。

床に残る焦げ跡と、結界の軋み。


(……うわ、治安悪っ)


決闘部は、完全に“実戦の場”だった。


部室というより、半分は闘技場。

壁沿いには回復用の魔導装置、

中央ではすでに二組が対戦中。


「——いけぇ!!」

「そこだ、踏み込め!!」


怒号と歓声が飛び交う。


部員数は多い。

ざっと見ても四十人以上。


皓が、すでに汗だくで拳を鳴らしていた。


「お、来たな!」


陶之介は壁際で腕を組み、冷静に観察している。


夢威は、合研部の時と同じ顔でそこにいた。


「……ここ、眠くならない」


魅亜と弥来は、観戦席で並んで騒いでいる。


「今の避け方すごくない!?」

「いや今のは甘いでしょ!」


そして——


一番奥。


結界制御盤の前で、

腕を組んで立っている人物。


鷹波 右京。


合研部の時と同じく、無駄な動きは一切ない。

ただ立っているだけで、場を支配している。


副部長の纏彪我が、横で何かを報告していた。


右京先輩の視線が、こちらを捉える。


(……気づいたな)


金色の瞳が、一瞬だけ細くなる。


「……来たか」


それだけ。


だが、その一言で

決闘部の視線が、まとめてこっちに向いた。


(あー……完全に場違いだな、俺たち)


大河が低く笑う。


「いやぁ……」

「いい空気だ。血が騒ぐ」


紫亜は冷静に周囲を見渡す。


「ここが、実力主義の最前線……」


明日香は、無意識に一歩だけ昴の近くに立った。


俺は、小さく息を吐く。


(さて……)


研究の成果を、

“机の上”から引きずり出すには——


これ以上、いい場所はない。


右京先輩が、こちらに向かって言った。


「見学か?」

「それとも……試す気か?」


俺は、口角を上げた。


「両方、ですかね」


決闘部の空気が、

わずかに——確実に——ざわめいた。

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