↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第二章 トレーニング編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
137/430

#132 二番手の男

掲示板に貼り出された瞬間、空気が変わった。


一位の欄。

仁公儀 蒼南——記録は、誰が見ても異常な数値。


「……だよな」


どこからともなく、そんな声が漏れる。

学年中がざわつくのも無理はない。


その少し脇で、

俺と皓と陶之介と昴は、自然と固まっていた。


皓が腕を組んだまま、ぽつりと言う。


「入学試験総合二位。中間テスト二位。短距離走も二位。

 合研部の副部長……」


一拍置いて、続ける。


「昴ってさ。何でもできるし、確実に俺より強ぇのに……

 いっつも“二番手”だよな」


嫌味はない。

純粋な疑問と、どこか敬意が混ざった声だった。


……だからこそ、次の反応に少し驚いた。


「——そうなんだよ」


昴が、被せるように軽く笑う。


「俺も“そこ”は、ずっと気にしてる」


(……本気で?)


思わず目を丸くする。


冗談みたいな口調だけど、

その目の奥には、はっきりした熱があった。


一位を見ている目だ。

届かない場所を、ちゃんと見据えてるやつの目。


(ああ……こいつ、やっぱり狙ってるんだな)


その空気を、陶之介が低く切った。


「……嫌味じゃねえのが、逆にムカつく」


昴が目を瞬かせる。


「え? なんでだよ」


陶之介は視線を外さず、淡々と続けた。


「近いうちに決闘でやろう。

 どっちが上か、はっきりさせたい」


静かな声。

でも、奥底に火がある。


昴は一瞬だけ驚いた顔をして、

すぐに口角を上げた。


「いいね。それ。

 ……正直、ずっと言ってほしかった」


(あー……こいつら)


俺は内心で苦笑する。

この学年、闘争心が健全すぎる。


――その少し後ろ。


空気が、ひんやりと変わった。


氷の気配。


振り向くと、明日香が立っていた。

氷の走法で“滑るように”駆け、十八位に食い込んだ実力者。


昴を見る目は、まだ少し硬い。

でも、前よりほんのわずかに柔らかい。


「……昔から、足速かったよね」


乾いた声。


「あんた、ずっと」


そこには、記憶と未練が混ざっていた。


昴の表情が、一瞬だけ固まる。

それから、気まずそうに頬をかいた。


「明日香の氷も、すごかったよ。

 あの安定した滑り……まだ伸びる」


褒め言葉を受けても、

明日香の視線は横に流れる。


……まだ、完全じゃない。


あのときの一言は、

今も氷の中に残ってる。


でも。


明日香の肩が、ほんの少しだけ緩んだ。

体が、わずかに昴の方を向く。


それを見て、俺はその場を離れながら小さく呟く。


(……もう少し、だな)


皓が後ろ手に頭を組んで言った。


「まあ、昴なら大丈夫だろ。

 あいつ、根は真面目だし」


陶之介も、低く同意する。


「篝火は、言葉選びを間違えただけだ。

 修復は可能だろう」


少し離れた場所で、

昴がまだ背を向けたままの明日香に、声を落とす。


「……次は、ちゃんと話したいな」


明日香は振り返らない。


聞こえなかったふり。


でも――

その耳が、ほんのわずかに赤くなっているのを、

俺は見逃さなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。