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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第二章 トレーニング編

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#128 身体強化術

演習場に足を踏み入れた瞬間、空気が変わったのが分かった。

昼下がりの陽光が差し込む広い空間――なのに、肌にまとわりつく気配が妙に冷たい。


ざわ……ざわ……


視線が、一点に集まる。


黒と赤の装束。

無駄のない立ち姿。

音もなく、影みたいに現れたその人を見て、俺は思わず口元を押さえた。


(……いや、どう見ても忍者だろ)


軽やかに教壇へ降り立った瞬間、

空気が“授業”から“実戦”に切り替わる。


剛持 忍。

闇属性・身体強化術の専門家。


(前に皓が言ってた忍者みたいな先輩……剛持國丸だっけ。

 ……まさか親子じゃないよな?)


そんなことを考えていると、

横から低く、確信めいた声が落ちてきた。


「……本物よ」


紫亜だった。


気づけば俺は、

莉亜、紫亜、魅亜の三姉妹に囲まれ、

さらに遥花まで加わっている。


(……囲まれてない?俺)


周囲の男子たちが、

「なんだあれ」「どういう配置だよ」とヒソヒソしているのが聞こえる。


今日は皓も陶之介もいない。

どの方向を見ても、逃げ場がない。


莉亜はいつもより近い距離で、無表情のまま俺を観察しているし、

紫亜は呼吸の間まで測ってそうな視線を向けてくる。

魅亜は完全復活した太陽みたいに明るい。

遥花は、俺の袖をそっとつまんで、少し照れた顔で見上げていた。


(……ハーレムって、こういう圧なんだな)


その空気を、鋭い声が一刀で切り裂いた。


「静かに。

 ……では、身体強化術の授業を始めます」


全員が一斉に背筋を伸ばす。


――と思った次の瞬間。


「今日はよく来てくれましたね。

 大丈夫、怖がらなくていいんですよ?ふふ」


……優しい。


柔らかい微笑み。


後ろの方で、男子が数人、力尽きたように崩れ落ちる音がした。


(あ、これ……ギャップで殺すタイプだ)


莉亜がわずかに目を見開き、

紫亜は「……なるほど」と納得した顔。

魅亜は「優しいんだ……!」と感動し、

遥花は胸元に手を当てて、ほわっと息を漏らした。


俺だけが、完全に戸惑っていた。


(厳しさのあとに優しさを刺してくる……

 確かに、これは落ちる)


忍は軽く腕をクロスさせる。


次の瞬間――

彼女の周囲に、黒い残像がいくつも走った。


「身体強化術は、力ではありません。

 “流れ”です。

 魔力を筋線維に沿って通すことで、

 瞬間的に身体能力を跳ね上げる」


地面を蹴った、その一瞬。


忍の姿が、完全に消えた。


次に視界に入ったのは、

演習場中央に立つ木柱の天辺。


「――これが、基礎です」


どよめきが爆発する。


(影分身じゃない。

 高速移動の残像……やっぱ化け物だ、この人)


遥花が、袖をつまんだまま震え声で囁く。


「ほ、本当に忍者さん……」


魅亜が興奮して俺の腕を叩く。


「玲磁!あれなに!?どうやってるの!?

 火でも出来るかな!?」


「多分な……でも再現性は低い」


莉亜が冷静に補足する。


「闇属性の特性を最大限に使っています。

 ……あれを授業で見せるのは、かなり珍しいですね」


紫亜が、俺の横顔をじっと見る。


「……あなたなら、出来るでしょう。

 あの程度」


俺は肩をすくめた。


「いやいや、今日は生徒だから。

 見学モードで――」


紫亜の眉が、ほんのわずかに動く。


(嘘、って顔だな)


その瞬間、忍が音もなく地面に降り立った。


「では最初に、基礎強化の発動を確認します。

 天竜玲磁」


――来た。


演習場が、しんと静まる。


三姉妹、遥花、周囲の生徒。

全員の視線が、俺一点に集まる。


(……今日、注目されすぎじゃないか?)


俺は小さく息を吐いた。


「分かりました」


魔力を、意識的に足元へ流す。

力じゃない。流れ。


忍が、穏やかに頷く。


「その意識でいい。

 ……では、見せてもらいましょう」


足元の空気が、静かに震えた。

登場人物紹介


●剛持(ごうもち) 忍(しのぶ)

【性別】女

【適性】闇

【魔力値】745

【担任】3-A

【担当】実践科目・身体強化術

【年齢】40

【髪色】黒と赤

【瞳】赤色

くノ一のような出で立ちの女性教師。闇属性に適性を持ち、忍者のように身体を強化したり、幻惑をするのが得意。2-Bには、剛持(ごうもち) 國丸(くにまる)という、同じく忍者のような息子がいる。

性格は厳しそうに見えるが優しく、学生たちはそのギャップに倒れる。

現に、最初厳しく、後優しくという指導が癖になっており、生徒からも懐かれている。

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