#126 期末試験
昼下がりの講堂は、やけに広く感じた。
天井の魔導スピーカーから、沙羅先生の澄んだ声が響く。
「では――一年生前期・学科試験の結果を発表します」
空気が一段、重くなる。
息を呑む気配が、波みたいに座席を伝っていった。
次の瞬間、巨大なスクリーンに文字が浮かぶ。
――第一位:二名 同率一位(全科目満点)
ざわめき、というより地鳴りだった。
(……二名?)
一瞬遅れて、名前が並ぶ。
● 天竜 玲磁
● 佐々峰 紫亜
……なるほど。
そう来たか。
視線が一斉にこっちへ刺さるのを感じる。
居心地は悪いが、嫌じゃない。
紫亜の方を見ると、彼女は一瞬だけ目を見開き、
すぐに口元を押さえた。
(想定外、って顔だな)
この学年に、自分と並ぶ満点がいるなんて。
そう簡単に飲み込める話じゃない。
俺は、ただ小さく笑った。
勝ったとか、誇ったとか、そういう感覚はない。
やることをやっただけだ。
――それだけなのに、
紫亜の視線が、少しだけ鋭くなった気がした。
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次に映ったのは、三位。
● 佐々峰 莉亜
莉亜は一度だけ目を閉じて、
それから紫亜へ静かに視線を送る。
(……いい姉妹だ)
互いの努力を、結果じゃなく過程で知ってる目だ。
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四位。
● 篝火 昴
昴は息を吐いて、右手を胸の前で握りしめた。
積み上げた分だけ、ちゃんと残る。
ああいうのは、強い。
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五位には、二つの名前。
● 慈恩寺 貴満
● 水無 寡燐
貴満は眼鏡を押し上げて、
「ふっ……努力は裏切りませんね」と小さく呟く。
横の鉄駔が、無言で地味な拍手を送っていた。
寡燐は表情を変えず前を向いていたが、
ほんの一瞬、肩の力が抜けたのが分かった。
(ここが、あいつのスタートラインか)
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七位。
● 仁公儀 蒼南
蒼南は、いつも通り柔らかく笑った。
驚きはない。
“実力者なら当然”という、妙な安心感。
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八位。
● 天針 琉月
あちこちから小さな歓声が上がる。
琉月は胸に手を当てて、ほっとした顔で笑った。
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画面が切り替わり、中位の名前が流れていく。
26位:意志神 鉄駔
30位:神無月 理紅虎
52位:霞 瑞翔
鉄駔は腕を組んだまま、ぼそっと言った。
「当然だ。学問とは物質……錬金術にも通ずる」
(相変わらずだな……)
理紅虎は「よかった……」と肩を撫で下ろし、
瑞翔は、自分の順位を二度見して目をぱちぱちさせている。
(……上がったな)
あいつは派手じゃない。
でも、ちゃんと前に進んでる。
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そして、講堂の空気が一瞬で変わった。
13位:京極 陶之介
どよめきが、凍る。
成績下位の常連。
不良。
そう呼ばれてたやつが、この位置だ。
当の本人は、淡く笑った。
「理屈が通れば、勉強なんて単純なもんだ」
(……だよな)
あいつは、分かれば一気に行くタイプだ。
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続いて。
20位:幸崎 皓
視線が一斉に皓へ向く。
皓は腕を組んで、胸を張った。
「だから言ったろ。負けねえって」
後ろの方で、弥来が立ち上がりかけて
「お兄ちゃんすごい!」と叫びそうになり、
慌てて自分の口を塞いでいた。
(あれは後で絶対いじられるな)
⸻
そして、最後に。
画面が一番上へ戻り、
俺の名前が、もう一度強調される。
――全科目満点
沙羅先生の声が、静かに締めた。
「今回の結果は、努力と積み上げによって成し得たものです。
特に、成績を大きく伸ばした生徒は……誇っていい」
その瞬間、
玲磁、皓、陶之介、鉄駔、理紅虎、瑞翔——
俺たちの周りに、自然と拍手が起きた。
(……ああ)
これは、順位の話じゃない。
悪ガキトリオが。
俺たちが。
初めて“学園に認められた”音だった。
胸の奥が、少しだけ熱くなる。
(……次は、もっと面白くなるな)
俺はそう確信しながら、
もう一度、講堂を見渡した。




