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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第二章 トレーニング編

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#120 本当に同級生だよな?

莉亜と紫亜は、魅亜のすぐそばにいた。

何度も、確かめるみたいに頬に触れて、肩に手を置いている。


……いい光景だな、と思った。


俺は少しだけ距離を空けて、その三人を眺めながら、

考えるより先に、言葉がこぼれた。


「……いいな、佐々峰三姉妹って」


自分でも驚くくらい、素直な声だった。


「みんな属性も違うし、性格もバラバラでさ。

 だから、きっと面倒なことも多いと思うけど——」


三人が、同時にこっちを見る。


「六大魔法名家に生まれた以上、

 この先、ぶつかることなんて山ほどあるだろ」


静まり返る演習場。

誰も口を挟まない。


「でも、それでいいんだよ。

 違う強さを持ってる三姉妹が、本気で向き合ったら——

 越えられない壁なんて、ねぇからさ」


……言ってから、ちょっとだけ恥ずかしくなった。


紫亜は、目を見開いたまま固まっている。

莉亜は、息を飲んだように、俺を見ていた。


(……なんだよその反応)


横で、瑞翔が何も言わずに肩をすくめているのが見えた。

たぶん、心の中では色々言ってる。


理紅虎が、小さく呟く。


「……玲磁先輩(センパイ)なんか……渋い……」


「先輩って言うな」


即座に言い返す間もなく、

虹矢が大げさに腕を組んだ。


「おまえ、いつもフザけてんのにさ……

 急に真顔で刺してくんじゃねぇよ……!」


遥花は胸に手を当てて、ふっと笑った。


「玲磁くんって……ほんと、優しいね」


……やめろ第二弾。


そんな空気の中で、

魅亜が、ゆっくりこっちを見た。


両手で、昔の火傷の跡を確かめるように触りながら。


「……玲磁」


「ん?」


「ありがと。

 今日……君がいなかったら……

 あたし、向き合えなかった」


真っ直ぐな目だった。

逃げも、遠慮もない。


「魅亜が頑張っただけだろ。

 俺は、ちょっと背中押しただけだ」


そう言うと、魅亜は小さく首を振った。


「その“ちょっと”がさ……

 ずっと欲しかったんだよ」


照れたみたいに笑う。

それを見て、莉亜と紫亜がまた泣きそうになっている。


(……ああもう)


⸻


莉亜が立ち上がった。

背筋を伸ばし、深く頭を下げる。


「1-Eクラスの皆さん。

 授業を中断させてしまい、本当に申し訳ありませんでした」


顔を上げて、はっきり言う。


「……ですが、妹を——魅亜を。

 今日ここで救ってくれて、ありがとうございます」


紫亜も、少し遅れて頭を下げた。


「あなたたち……想像以上に、いいクラスね。

 魅亜を、これからもよろしく」


その様子に、沙羅先生が一瞬だけ目を丸くする。


「……戻りなさい。

 あなたたちの授業も、まだ途中でしょう?」


「はい。ありがとうございました、沙羅先生」


「魅亜、またすぐ会いに来るわよ」


そう言って、二人は演習場を後にした。


扉が閉まる音が、妙に静かに響いた。


⸻


「——今日はここまで。

 よく頑張ったわね、皆」


沙羅先生の言葉で、緊張が解ける。


気づけば、魅亜の周りに自然と人が集まっていた。


「魅亜ちゃん……ほんとに頑張ったね。

 すごく、すごく綺麗だったよ」


「火の精霊が……嬉しそうだった。

 魅亜さんの火は、優しいね」


「見てて分かったよ。

 “怖がってる火”じゃなくて……

 “魅亜の火”って感じだった」


「今日のはマジでやばい。

 ……胸、熱くなった」


魅亜は、目を潤ませながら、

一人ひとりに頷いていく。


「……みんな、ありがと。

 あたし……やっと火を嫌わないで済む……」


俺は、軽く近づいて、

ぽん、と頭を叩いた。


「ここからが本番だぞ。

 魅亜は火属性の天才なんだからさ」


「……うん!」


その笑顔は、

さっきの巨大火竜よりも、ずっと眩しかった。

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