#116 まぜこぜの魔法
次は虹矢の番だ。
「いくぜ! 俺様の魔法!
<ンヌラァァァ!>」
(……まず詠唱をどうにかしろ)
そう思った瞬間には、もう遅かった。
魔力が、歪む。
いや、歪むどころじゃない。
散らばった。
氷の弾。
電気の渦。
鉄の塊。
火の蛇。
——四方向に、同時に、バラバラに。
「うわわ、なんだこりゃ!」
理紅虎が思わず身を引く。
「だめだ……あさっての方向に飛んでる……」
瑞翔が冷静に、しかしはっきり失敗を告げる。
「虹矢くん……」
遥花は心配そうに声を上げる。
事実、的には一切当たっていない。
魔法は空を切り、地面をかすめ、霧散した。
完全な失敗作。
俺は額を軽く押さえた。
「あ〜あ……また“まぜこぜ”だな」
属性の切り分けができてない。
魔力はあるのに、制御が追いついてない典型だ。
でも——
「どんまい! 前より強くなってるよ!」
魅亜が、即座にフォローを入れる。
沙羅先生も、否定しない。
「焦らなくていいわ。
虹矢くん、魔力量は前より“2”ほど上がっている」
(2……)
つまり、10が12になったってことか。
普通なら誤差みたいな数字だ。
でも——
「喜んでいいのかわっかんねぇけど!」
虹矢は満面の笑みで拳を突き上げた。
「喜ぶぜ! よっしゃあああ!!」
(……こいつ、ほんとメンタル強ぇな)
失敗しても折れない。
むしろ前に進む。
属性はぐちゃぐちゃ。
詠唱は意味不明。
でも——
(こいつは、絶対に伸びる)
そう確信できるくらいには、
虹矢の背中は、もう前を向いていた。




