#114 そこまで普通を極めなくてもいいだろ
まず前に出たのは、魅亜だった。
小さく息を吸い、掌を前に突き出す。
<ブレイズショット>
炎弾が一直線に飛ぶ。
迷いはない。揺れもない。
(……震えてないな)
少し前まで、火を出すたびに肩が強張っていたのが嘘みたいだ。
炎は的の中心近くに当たり、鮮やかな赤に染めた。
沙羅先生も、特に口出しはしない。
それが一番の評価だ。
次は、遥花。
彼女は少し構えてから、地面に魔力を流す。
<アースウィップ>
足元から、複数の土のツタが走り出す。
うねるように進み、的を叩いた。
(攻撃は得意じゃないはずだけど……)
派手さはない。
でも威力は十分だし、制御も安定している。
“できない”じゃなくて、“慎重”なだけなんだよな、遥花は。
次に前へ出たのは、理紅虎。
無言で腕を引き、放つ。
<ウィンドアロー>
空気が鳴った。
鋭い。
狙いも甘くない。
的の一点に集中した風の矢が突き刺さり、
緑色が一段濃く変わる。
(……いつの間に、ここまで)
単純な威力だけなら、
同じ風属性の沙羅先生と比べても、見劣りしない。
成長が、目に見えて分かるタイプだ。
そして、瑞翔。
「……いくよ」
淡々と詠唱し、
<ウォーターボール>
水の球がすっと飛び、的に当たる。
青く変色。
(うん、普通)
可もなく不可もなく。
安定感だけは異常にある。
……と思った次の瞬間。
「もう一発」
続けて二発、三発。
全部同じ軌道、同じ威力で、きっちり的に当たる。
(……そこまで“普通”を極めなくてもいいだろ)
高校生らしい発想すら、ブレない。
瑞翔は今日も瑞翔だった。
次は——
いよいよ、俺の番か。




