#103 ランドディザスター
俺はまだ残っている魔力の余韻を感じながら、ふと思い出したように蒼南のほうを見た。
「なあ、蒼南。せっかくだし……お前もやってみるか?」
不意打ちだったらしく、蒼南は一瞬きょとんとする。
「相手は……大河がいいな。
前に戦闘術で一度当たってるし、お互いの魔力の質は分かってるだろ」
蒼南は苦笑いしながら、頭をかいた。
「僕はさ、今日は“見に来ただけ”のつもりだったんだけどなぁ……」
その横で、大河が豪快に腕を鳴らす。
「ま、いいだろ!
合体魔法なんて、昴とやって以来だしな!」
部室の空気が、少しだけ軽くなる。
夢威が、蒼南の魔力の気配を感じ取ったのか、ふわっと目を細めた。
「……蒼南の風は、むいのとは違う。
もっと、速くて……鋭い」
その一言で、蒼南の表情がわずかに引き締まった。
(たしかに)
蒼南の風は、包む風じゃない。
削る風、切り裂く風だ。
大河が一歩前に出て、足裏で床を踏みしめる。
土属性の魔力が低く、重く立ち上がる。
蒼南は深く息を吸い、視線を落とす。
「……小規模でいこう。
制御優先だ」
「おう、了解!」
二人の魔力が、ゆっくりと噛み合う。
風(仁公儀 蒼南)× 土(玄機 大河)
――<ランドディザスター>
次の瞬間、床下から圧縮された土塊が盛り上がり、
そこへ蒼南の風が横から叩きつけられた。
ドンッ――!!
爆発ではない。
“破砕”。
土が砕け、飛び散り、
鋭い風圧がそれを円状に吹き飛ばす。
小規模。
だが、密度が異常だった。
「……っ」
昴が思わず息を詰める。
「これ……直撃したら、普通に戦闘不能だぞ」
明日香が、静かに評価する。
「土の防御力と、風の加速……
単純だけど、完成度が高い」
紫亜は腕を組み、目を細めていた。
「派手さはないけど……
“実戦向き”ね。嫌な魔法だわ」
土煙が収まると、大河が満足そうに笑った。
「おお……いいなコレ!
昴の火より、手応えあるぞ!」
蒼南は少し肩で息をしながら、苦笑する。
「……だから言ったでしょ。
僕、見学だけのつもりだったんだって」
でも、その声には、ほんの少しだけ楽しさが混じっていた。
(やっぱりな)
合体魔法は、
相性と理解が揃った瞬間、一気に化ける。
俺はその様子を見ながら、次に試す組み合わせを
頭の中で、もう考え始めていた。




