#95 説明の天才
二人とも、全身から「絶対無理」を発していた。
だけど、俺は胸を張って言った。
「俺が教える。お前ら二人は筋はいい。魔法の応用力も実技の理解力も高い……知識が無いだけだ。だったら教えりゃいい」
皓は後ろにのけ反り、陶之助も首を振る。
「いやいやいやいや! それが一番むずいっての!!」
「知識が入らねぇから困ってるんだろ……」
言葉を投げるだけで、二人の嫌がる姿がまさに“悪ガキトリオ感”全開だ。
俺が次の言葉を口にしようとしたそのとき、廊下の角から風がぱたりと通り、影が現れた。
「──やりなさい、三人とも」
沙羅先生だった。まるでずっと聞いていたかのように腕を組み、俺たちを見下ろす。
「沙羅先生!? なんでいるんだよ!?」
皓が飛び跳ねる。
先生の緑の瞳が、順番に俺たちを射抜く。
「これは三人全員のためになる。玲磁、あなたにも必要な事よ」
鋭い声。でもどこか誇らしげで、胸の奥が熱くなる。
「今まで“できてしまっていた”ことを、他人に論理立てて教える──それは、自分の理解を完璧に近づける最高の訓練」
少し目を見開く。
「……“先生”としての勉強ってやつか?」
「そう。教える側ほど成長するの。あなたは天才だけど、まだ“説明の天才”ではない。頭で分かっているなら、言語化できるはず──その練習よ」
皓と陶之助が顔を見合わせる。
皓がぽつり。
「……そこまで言うなら……やってみてもいいけど……」
陶之助も目を閉じてため息。
「そこまで本気なら、付き合ってやるよ」
先生は満足そうに頷く。
「よろしい。三人まとめて“教師冥利”ってやつね。期末まで二ヶ月。努力しなさい。突破してみなさい。あなたたち三人なら──3位総ナメはともかく、いい線は行くでしょう」
俺はニッと笑い、拳を突き出した。
「よっしゃ、やるか。最下位トリオの逆襲、ここから始めんぞ」
夕陽の中、三つの拳がぶつかった。
──悪ガキトリオ、学年トップへの反逆、始動。




