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108人の勇者と奴隷とオレ あとたまに天使  作者: 東西
第一章 異世界での奴隷の拾い方
3/8

第2話 俺と異世界とおかね











「………はぁ」


 溜息をつく。

 自分の境遇についてもそうだが、何よりも目の前に広がる光景に。


「なんて、ファンタジーな」


 俺が飛ばされたそこは、巨大な城下町だった。

 知識のなかにある建造物と比較すると、ゴシック建築かロマネスク建築か。

 本で読んだものと、非常に告示している。

 こういうものを見ると、異世界であっても人の美的感覚というのはある程度収束するものなんだなと思考にふける。

 ふけるというか、現実逃避だが。

 それ以上に目立つものが、俺の目の前にはいっぱいだった。


「動物人間は、さすがに見たことないな」


 それだけではない。

 角が生えたもの、3メートルはあるかという巨人や、手が4本あったり、逆に馬のような下半身をした人…………。

 数え始めたらキリがないが、一般的には空想の世界が現実に広がり、それがすべて、この城下町の街道を埋め尽くさんばかりに歩いてる。

 もちろん普通の人間もいるが、それと同じくらいいるのではないであろうか、


「……………………………はぁ」


 もう1度溜息。

 そして、手の甲に108と刻まれた左腕に巻かれた腕時計を眺める。

 現在時刻は午後1時。

 俺がこの世界について、かれこれ1時間は立っていた。

 いい加減何か行動しないといけないんのだろうか。

 まずは自分のいる場所を確認する。

 正確な場所ははっきりしないが、街道を見渡せる程度の少し高部の位置、周りの建造物を見る限り、おそらくは教会のようなものの広場だろう。


「異世界で、教会か」


 正直あまりいい響きではないが、覚えておいて損はないだろう。


「うん」


 場所についての詳細はこれ以上分かりそうもない。

 次の行動に移ろう。

 俺は、自分の持ち物をレンガの床に広げる。

 まずは服装。おそらは死んだ時のまま、黒いジーパンにシャツにパーカー。靴や靴下、ベルトもそのままだ。これは問題はない。

 次に床に広げた持ち物。

 財布、携帯、腕時計。

 どれも変化なし、死ぬ前のまま。

 念のために携帯を立ち上げタッチしてみるが、案の定電波は通っていない。そのうち電源が切れるだろうから、一旦電源を落とす。

 幸運にも、腕時計に関しては手巻き式ものであるため、電源の心配はなし。

 財布の中身も金額も変わらず、問題なし。


「後は、……これか」


 何故か持っていたひと振りのナイフ。

 だが俺は普段、こんなものは所持していない。

 ただ、これを所持した瞬間には心当たりがある。


「俺を刺したナイフか」


 刃の形状からみて、サバイバルナイフってやつか。

 それを、じっと見つめる。


「おもったほど………」


 自分を刺したモノだが、意外にも、なにも感じなかった。

 もっと、何か感じるかと思ったが、所詮道具は道具か。

 これが悪いわけではないのだから。

 むしろ今後のことを考えると、幸運かもしれない。


「うん、こんなもんか」


 確認できることはこんなものだろう。

 取り出した持ち物を再びしまい、ナイフをベルトの後ろの部分に挟んで隠す。

 刃物を持っている人間はたくさんいたが、あえて見せることもないだろう。


「よしっ」


 後は街にでて確認することばかりだ。まあ、そっちのほうが大変なのだろうけど。

 そう思いながら、一歩踏み出す。


「っと、そうだったそうだった」


 うっかり忘れるところだった。

 あのサリエルとかいう天使に言われた言葉。

 108人目だとか、善行をつめだとか、おまけとかルールとか。

 考えてもしょうがないことばかりだが、一つだけできることがある。

 俺は、今しがた後ろに隠したばかりのナイフを取り出し。

 そしてそれを、両手で握り。


「せーの」


 思いっきり、自分の首を切り裂いた。


 そして訪れる痛覚への刺激。

 思っていたほどではない。これなら堪えられる。

 そう思いながら、自分と、辺りを確認。


「自殺出来ないとは言ってたけど」


 本来なら開いているはずの傷口はないし、なにより血が全く出ていない。

 訪れるのは、痛みだけ。

 どうやら、本当に自殺できないらしい。


「残念。まー予想範囲内だから問題ないけど」


 俺が死ぬためには、他者からの干渉が不可欠だろう。

 どこまでが自殺というのか、検証は必要だろうが。

 とりあえずは必要な確認は終了。

 ようやく街に繰り出すことにした。


「…」


 俺は広場から出て、階段を降りる。

 途中数名の猫の耳が生えた集団とすれ違ったが、俺のことを気にしてる様子はなし。

 何はともわれ、溶け込むことはできそうだ。

 細い路地を抜け、街道にでて辺りを見渡す。

 目新しいものばかりで、思わず視線が散ってしまうがそこは堪えて、真っ先に確認するべきものがある。

 辺りを見渡し、それらしいものを発見。

 おそらくはこの城下町の案内図のようなもの。

 別にどこか目的地があるわけじゃないが、俺はそれを凝視する。


「…………………………うん」


 頷く。


「読めるな」


 案内図を眺めながら、俺は呟く。

 どういう仕組みか、明らかに異国のもであるにもかかわらず、文字は読めるようだった。


「これで基本的なことは大体クリアだ」


 これがダメだった場合、かなりのことが制限されるためかなり危うかったが、一安心。

 後は、残りの不安要素を確認しにいくか。

 俺は、念のため案内図を携帯で撮影し、目的地を定め移動することにした。







 (2時間後)







 現在午後4時過ぎ。

 俺は、巨大なテントが連なるバザールから外に出る。

 結果としてはかなり問題の残る結果だった。

 いや成果がなかったわけではない。

 文字と同レベルに重要だった言語の疎通は問題なかったわけで、これは十分に収穫だった。

 何より、人間以外とも喋れたのは大きい。

 獣人族と呼ばれる彼らの知能は、人間と大差はなかった。

 むしろ積極的に商売しているくらいだった。

 そんなことより、俺は頭を抱えていることがある。


「…金がない」


 想定していたことだが、さすがに日本円での代用はできなかった。

 明らかに専用の通貨が流通している。

 そして、商売している人間を見る限り、それの取得方法は日本と大差ないのだろう。

 つまりは何らかの労働をし、それの報酬として受け取るという仮定を踏まなければならない。


「あー、よわった」


 思わずしゃがみこむ。

 例え雇ってもらったとしても、当面の資金すらない。

 つまりは、しばらくは寝食にすら困る状況だということが確定している。

 くそ、あの天使め。異世界に送るならせめてそれぐらいの準備ぐらいよこして欲しい。この土地の天候は分からないが、ヘタすると凍死か餓死だ。

 別に無理して生きたいわけではないができればそれは避けたい。さすがにきつい。


「あー、どうすっかなぁ」


 借金をするか。いやそもそもこんな身分不明な俺に貸してくれる人などいるのか。

 なかなか瀬戸際にたたされていることを自覚して、さらにへこむ。


「…あ、あのー」


 肩を叩かれた、ような気がした。

 振り返る。


「あのー、大丈夫ですか?、どうかしましたか?」


 猫耳で、民族衣装のようなものを着た、赤毛の女の子が立っていた。

 ……あーそうだそうだ、獣人族獣人族。

 コスプレじゃ、ないんだった。


「…あ、すみません邪魔でしたね」


 そういえば道にしゃがみこんでいるんだった。これは邪魔だな確かに。


「すぐどきますね」


「あ、いえ!、そうじゃなくて!」


「はい?」


 なんだろう。他に何か問題でもあっただろうか?。

 もしかして独特の法律とかそういうものがあり、知らず知らずうちに俺はそれに抵触していたとか。

 …………………………うーん。

 考えてもしょうがない。問題があれば対処しよう。


「なんでしょうか?」


「いえ、あの、何かお困りのようだったので」


「はぁ…」


「どうされたのかと思いまして……」


 その子は、少し照れたかのように視線をそらす。

 左にそらしたということは何か誤魔化そうとしているのか。

 なんだろう?。

 まあ、せっかく話しかけられたんだ。少し話してみよう。


「ちょっと金銭的に………」


 これはちょっと直接的すぎるか。


「実は、旅をしていまして。この街に来たばかりなんで、職がなくて困ってるんですよ」


「…あー、どうりで。全然見たことない服装だなぁって。髪の色とか真っ黒で」


 なるほど。そんなに格好は馴染めてなかったのか。

 ちょっとショック。


「ギルドには向かわれました?」


「ギルド?」


 聞きなれない言葉だ。


「はい。そこで、職業や依頼の募集や登録を出来るので、1度向かわれた方がいいと思いますよ」


「………なるほど」


 あれか。ハロー○ークみたいなものか。

 でもこれは大きな収穫だ。もしかすると日雇いとかもあるかもしれない。

 …………………………それにしても。


「ありがとう」


 猫耳さんの手を握る。

 他人に親切にしてもらうのはいつぶりか。

 見返りのない親切なんてあるんだなぁと、少し感心。


「あ、いえ、そんなそんなっ!」


 猫耳さんが手をぶんぶん振って謙遜する。

 耳が揺れているところなんかが、なんともかわいい。


「出来れば名前を教えてもらってもいいですか?」


 ………………あ。

 しまった。

 勢いで聞いたが、これではまるでナンパじゃないか。

 さすがに警戒されるんではないか。


「あ、はい!私、ミーシャっていいます!」


 満面の笑みで答えてくれるミーシャ。

 なんていい子なんだと俺の中で賛辞が絶えない。

 まるであれだ、太陽のようだ。

 拍手喝采。


「ありがとう、ミーシャ」


 目的地は決まった。

 後は案内板の画像を下に向かえばいい。

 俺はミーシャの手を離し、移動を開始する。


「あ、あの!」


 後ろから、ミーシャの声が聞こえた。

 どうやら呼び止められたらしい。

 まだ何かあったっけ?。


「なに?」


 聞き返す。


「あの…、えっと、…お名前」


「うん?」


「お名前、…なんていうんですか!」


 …あ。

 そうだそうだ。

 名乗られたからには、ちゃんと名乗らねば。

 異世界でも、礼儀は大事だ。


「九郎。九郎っていいます」


「くろう…………。はい、クロウ!ですね」


 ミーシャがほほ笑む。

 ……うん、やはり素晴らしい。

 世の中が、こんな子ばっかりだったらいいのにな。


「頑張ってくださいね!」


 そう言われて、俺は送りだされた。

 お金が溜まったらお礼くらいには来よう。

 最低でも死ぬ前には。

 そう、軽い決意をして、俺はギルドに移動する。
















 そして1時間後。

 俺はギルドの前で打ちひしがれていた。

 さっきと、状況はそっくりだ、

 なんてことはない。

 また、金の問題だ。



(30分前)



 途中少し迷ったが、どうにかギルドに到着することが出来た。


「予想よりもだいぶでかいな」


 ハロー○ークを想像していたから、ギャップが激しい。

 到着したギルドはまるで、軽い神殿のようだった。

 人の行きかいも非常に多い。

 その流れにそって、俺もなかに入っていく。


「……すごい人だな」


 予想はしていたが、さすが職業紹介所。

 普通ぽい人から、剣とか槍とか盾とか持った人までたくさんいる。

 先ほどミーシャに珍しいというようなことを言われたので、あまり目立たないようにしながら、受付のようなとこに向い、声をかける。


「すみません」


「はい、ようこそギルドへ。どのようなご用件でしょうか?」


 受付のお姉さんっぽい人が、慣れた笑みで返してくれた。

 この辺は、なんだ。やっぱりどこ言っても同じようなもんだなと、少し郷愁を感じてみた。


「職を探してまして」


 自分で言ってて、少し不思議な気持ちになってしまった。

 これがあれか、ニートの気持ちか。

 

「ご職業をお探しですね。ご希望はございますか?」


「即日で給料がでるものがいいんですけど」


 とりあえずは当面をしのがなければならない。

 それ以上の希望は無いし、正直まだこの街の通貨の価値も分からないため、体で覚えるしかない。


「はい、ございますよ」


「よし」


 なんとかなりそうだ。


「それでは登録を確認しますので、こちらに手をかざしていただけますか?」


 そう言ってお姉さんは、透明な水晶のようなモノを、俺の前に差し出した。

 …なんだこれ?、登録?。

 よくは分からないが、とりあえず右手をかざしてみる。


「…………………………」


 何も起こらない。

 お姉さんを見る。

 お姉さんも、怪訝そうにこちらを見ていた。


「…申し訳ありませんが。登録はお済みですか?」


「いえ。今日この街に来たばりなので、してないと思います」


 登録とか。

 とことんハロー○ークじゃないか。


「なるほど。では初めにこの街での冒険者登録をしていただきますので」


「はい」





「2000ガル頂きます」





「はい?」


 思わず、聞き直してしまった。

 実際は聞こえていて、ただの現実逃避なんだけれど。


「登録料として2000ガル頂きます」


「………………」


 そして時間は現在に戻る。

 ガル…、確かこの街の通貨の名前だ。

 いやいや、そんなことは今はどうでもいい。

 まさか登録に手数料を取られるとは、これは想定していた中では最悪だ。

 一応、後払いの交渉もしてみたが、身分がはっきりしない俺では、どうしようもなかった。

 やはりお金を借りるか、いや結局はまた身分の問題ではじかれるだけだ。


「さて、どうするか」


 他に、金銭を手に入れる方法に思考を巡らす。

 いくつかあるが、あまり時間をかけるのはよくない。

 短時間で、効率的に。

 出来れば、返金が必要の無いような形で。


「……………………あ」


 一つあった。

 思い出すまでに結構時間がかかったが、これでいこう。

 やっぱり多少慣れたやり方の方が、しっくりくるし。

 そうしよう。


「そうだ、カツアゲをしよう」

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