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箱庭少女のロジック 〜かつて世界を滅ぼした最強のオートマタは僕の指示しか聞かないらしい〜  作者: 邑沢 迅
レガリス編

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第92話:唸る重拳と疾風の連撃

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 集落、東側。

 デリクとエレーナのペアは、悲鳴の上がる通りへと降り立ち、逃げ惑う人々を安全な方向へと誘導していた。


「うわぁぁっ!ま、魔物が…!」

「おい、こっちだ!俺らの後ろに隠れろ!」

「怪我している人がいたら、私たちに教えてください!」


 集落は混乱の渦中にあったが、初動が早かったのが功を奏したのだろう。一部の建造物が破壊されてはいるものの、最悪の被害は免れているようだった。


「ギルドの人達だ…!よかった、ありがとう!」


 安堵する村人たちを守るように前に出たデリクに、上空を旋回していた5体のガーゴイル――石造りの悪魔たちが気づくと、彼らは一斉に標的をデリクに定め、急速に距離を詰める。


「ギィィィッ!」

「きたぜ、エレーナ」

解放リリース…出力60%!」


 エレーナから放たれた光が、デリクの屈強な足元へと集約していく。


「うぉぉおおっ!断裂ブレイク!」


 ヴォルカニアでのアッシュとの死闘。 あの時、己の実力不足を痛感したデリクが、血のにじむような特訓の末に編み出した新技である。破壊力のみに頼った力押し一辺倒の戦い方を改め、両足に強大な魔力を収束させることで、機動力と破壊力の両立を可能にしたのだ。


「っしゃあっ!」


――ドゴォォォッ!!


 爆発的な初速で一気に距離を詰めたデリクは、急降下してきたガーゴイルの胴体へ、重戦車のような強烈なローキックを叩き込んだ。 凄まじい衝撃音が響き、硬い石でできたガーゴイルの下半身が粉々に崩れ落ちる。


『ギィアッ!』


 デリクのただならぬ実力を見て取った残りの4体は、一斉にその皮膜の翼を羽ばたかせ、上空へと距離を取ろうとする。


「へっ、そんなんで逃げたつもりかよ! ハァッ!」


 地を這うだけの、以前の彼ではない。デリクは魔力を込めた脚で地面を爆発的に蹴り上げ、驚異的な跳躍力で空中のガーゴイルに肉薄する。そして、空中で身を捻りながらの鋭い回し蹴りを放ち、次々に石の悪魔たちを空中で粉砕撃破していった。


 そのままの勢いで民家の壁を蹴り、軽やかに地面へと着地する。


「やったね、デリク!」

「さあ、まだまだだ!来いよ!」


「ギィィァッ!」


 残るガーゴイルたちを挑発しながら、デリクは力強く拳を打ち鳴らした。



 集落、西側。


 シャオとクローディアのペアが民家の合間に降り立つと、不意に悲痛な声が耳に届いた。


「誰か!お母さんが!誰か助けてっ!」

「シャオ、聞こえた!?」

「あそこの路地ネ!クローディア!」


 声のする方向へと素早く身を翻し、シャオは姿勢を極端に低くして飛び出す『その時』を待つ。


解放リリース…出力80%! 行って、シャオ!」


「ギィィィアッ!」


 逃げ遅れて倒れ込んだ母親を庇う少年に向け、ガーゴイルが鋭い石の爪を無慈悲に振り下ろそうとした、その瞬間。クローディアが解き放つ強化の光が、シャオの身体に収束する――。


縮勁しゅくけい!」


 トンッ、と。 まるで空間をスキップしたかのような速度で距離を詰めたシャオは、ガーゴイルの懐に潜り込み、渾身のラッシュを叩き込んだ。


「ハイハイハイィッ!」


 ドスッ!バキィッ!

 連続する鈍い音と共に、強固な石造りの身体が文字通り『削ぎ落とされて』いく。


「アイヤーッ!」


 とどめに叩き込まれた渾身の肘撃ちで、ガーゴイルの身体は完全に粉砕され、ただの石くれとなって四散した。


「大丈夫アルカ!少年!」

「あ、ありがとう、お姉ちゃん…!でも、お母さんの足が……」


 シャオが母親の足元に視線を落とすと、そこにはガーゴイルの爪にやられたと思われる、ひどく痛々しい傷があった。


「クローディア、この子とお母さんを頼むヨ!コータに知らせるネ!」

「分かったわ!でもシャオ、周り…!」

「ワタシが引き付けるアル!」


「ギィッ!」

「ギィアッ!」


 仲間が粉砕された音を聞きつけ、周囲の屋根や路地から次々にガーゴイルたちが集まってくる。 その数…ざっと10体。 鋭い殺気を放ちながら、彼らはシャオたちを完全に包囲していた。


「ハッ!雑魚がいくら集まった所で、雑魚は雑魚ヨ!」


 シャオは一息にクローディアたちから距離を取ると、路地の中央で『ドォン!』と強く震脚を一つ踏み鳴らした。


「纏めて…かかってくるネ!」


 好戦的な笑みを浮かべ、シャオは両手を構えて迫りくる石の悪魔たちを迎え撃つ。


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