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箱庭少女のロジック 〜かつて世界を滅ぼした最強のオートマタは僕の指示しか聞かないらしい〜  作者: 邑沢 迅
レガリス編

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第90話:試練の理、上がる黒煙

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 決起会から一夜明けた翌朝。僕たち8人はギルドの依頼である魔物討伐に向けて、ゼノスの北の空を飛んでいた。


「何回飛んでも、全然慣れないネ…」

「そうかしら?私は景色が良くて楽しいけど」

「足が地面についてないって、妙な感覚ですよね!」


 アルテアの反重力アンチグラビティで、空を移動する一行。クローディアさんとエレーナさんはすっかり空の旅を満喫して余裕そうだが、シャオさんだけは相変わらず飛行が苦手らしく、真っ青な顔でグロッキーになっていた。


「そうだ、アルテア。前から気になってたんだけど、魔物って、そもそも何なの…?」


 僕は、隣を涼しい顔で飛んでいるアルテアに質問を投げてみた。すると、アルテアは左手を腰に当て、右手の人差し指をビシッと立てて『えっへん!』とばかりに胸を張った。


「コータさん。魔物というのは、神が造り出した『神造生命』ですの!」


 ああっ、忘れてた……!昨日の夜から、まだ『お嬢様モード』のままだった……。真面目な話をしているのに、頭に全然入ってこない。拠点に帰ったら、絶対に通常の人格インターフェースを再インストールしてもらおう…。


「神造生命…?神様が造った生命ってこと?」


 ニーナさんが、自身の隣を飛ぶジリウスへと問いかける。


「その通りです、ニーナ。1000年前の神魔大戦の後、生き残った人類に更なる『試練』を与えるために造られたものです」

「造られたものだとして、倒しても倒しても湧いてくるのはなんでだ?」


 腕を組んで飛んでいたデリクさんが、純粋な疑問を口にする。確かに、魔物が討伐を繰り返しても絶滅しないのは何故なのか。通常の動物のように生殖機能があるのか…いや、アンデッドのネクロマンサーやスケルトンに、どう見てもそんな機能があるようには思えない。


「『神の理』の根底のプログラムとして、この世界に常に一定数作り出されるように実装されています」


 ジリウスが淡々と答える。アルテアと一緒に遺跡を巡ったり、過去の記録を見たりしてきた中で、何度も聞いた『神の理』という言葉。


「だとすると、神魔大戦の以前は、エテリスに魔物なんていなかったんだね。…人類が発展しすぎて、またその『理』を侵そうとしないように、魔物という脅威を与え続けることで、人類の文明の発展にある程度の制限を課しているってことなのかな…」

「その『神』ってのは、やっぱ気に入らねぇな。俺たち人類を、手のひらで転がしてるつもりかよ。けっ」


 デリクさんが、空に向かって吐き捨てるように毒づく。乱暴な言い方だけど、彼の言葉は割と核心を突いているのかもしれない。


 物理法則を完全に無視する、アルテアとジリウスという執行端末。 無から無限に生み出される、魔物。そのすべてが『神』による観測、もしくは何かの実験のためだとしたら…。

 いや、待てよ。 じゃあ、その神に造られたアルテアのセンサーですら検知できない、ロックスさんやモーラさんたちって、一体何者なんだ…?彼らは、神の理の外の…。


「あ、見えてきました…!集落が…襲われてます!」


 考えを巡らせていると、ニーナさんの切羽詰まった声が響いた。遠くの眼下に見える、山間の小さな集落から、黒い煙が上がっている。街の防壁の周囲を、多数の魔物が群がって襲っているのが見えた。


 アルテアの瞳がチカチカと明滅し、一瞬で広域スキャンを走らせる。


「地中に巨大な生体反応、サンドワームが1体。他に中型の魔物、ガーゴイルが20…いや、30体いますわ!」

「わかった!皆さん、僕とアルテアは上空から全体のバックアップと援護に回ります!実働の方はお願いします!」


 僕の言葉に、全員の顔つきが一瞬で切り替わる。


「シャオ、生きてる?やるわよ」

「やるネ!やるネ!」


 さっきまでグロッキーだったシャオさんが、顔色を一瞬で戻してやる気満々、と言った風情で独特の構えを取る。


「いこう、デリク」

「っしゃあ!」


 エレーナさんが言うと、デリクさんが両手を胸の前でガンガンと合わせてニヤリと笑う。


「ジリウスさん、街を守りましょう」

「了解、ニーナ」


 頼もしいゼノスの仲間たちと共に、僕たちは黒煙の上がる集落へと急降下した。


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