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箱庭少女のロジック 〜かつて世界を滅ぼした最強のオートマタは僕の指示しか聞かないらしい〜  作者: 邑沢 迅
レガリス編

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第86話:新生チームの初任務

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 ジリウスが再起動した翌日。

 ギルド本部の受付フロアは、いつも以上にざわざわと騒がしく、職員たちが書類の束を抱えて忙しそうに右往左往していた。


「すみません、依頼の報告をしたいんですが…」


 僕はカウンター越しに、見知った受付のお姉さんへと声を掛けた。


「あっ…はい、監視者ハンドラーのコータさんですね!少々おまちくださ――」

「私が代わろう」

「事務総長…!?は、はいっ、お願いします!」


 受付のお姉さんが弾かれたように直立不動になった背後から、恰幅の良い姿が現れた。


「マクシミリアンさん、こんにちは。ウルゴ遺跡の報告の件なんですが…」

「コータ殿、ニーナ殿、ご苦労だったな。うむ、一部始終は監視鳥バードから報告を受けている」


 マクシミリアンさんが肩をすくめると、彼の肩に止まっていた丸っこい僕の監視鳥バードがパタパタと飛び立ち、僕の後ろにいたアルテアの頭の上へと移動した。


 …そこ、もうすっかり定位置になっちゃってるな。


「ここではなんだ、場所を変えよう」



 案内された先は、事務総長の執務室だった。

 無駄な装飾や派手な豪華さはないが、並べられた本棚や艶のある机など、調度品の一つ一つの質が極めて高いことがうかがえた。


「そちらが…」

「はい、ジリウスさんです」


 マクシミリアンさんが、緊張の面持ちでニーナさんに問う。

 その視線の先には、ふわりと宙に浮いたまま静かに佇む、銀髪の美男子がいた。


「ギルドの事務総長、マクシミリアンだ。よろしく頼む」


 マクシミリアンさんは、彼がかつて引き起こした『太陽事件』の記憶を押し殺すように、ジリウスへとゆっくり右手を差し出した。


「ジリウスさん。握手、握手と自己紹介だよ」


 ニーナさんが、ジリウスの耳元で小さな声で囁くのが聞こえた。

 なんか、どう見ても近づきがたいオーラを放っているイケメンが、普通の女の子に子供みたいに躾けられているのって、ちょっと面白いな…。


「ジリウスです。よろしくお願いします」


 ニーナさんの指示通り、ジリウスはスッと右手を伸ばし、穏やかな空気でマクシミリアンさんと握手を交わす。

 その様子を見て、ニーナさんはうんうんと満足そうに頷いている。だが、やはり為政者であるマクシミリアンさんは、彼に対する根本的な疑念と警戒を完全には隠せずにいるようだった。


「さて、座ってくれ」


 勧められて、僕とニーナさんはすっと革張りのソファへと腰かけた。

 …しかし、アルテアとジリウスの二人は座ろうともせず、立ったまま、じーっとマクシミリアンさんのことを見つめ続けている。


 あー…これ、二人で全く同じように『観察』してるな……。


「アルテア、座って」

「ジリウスさん、ダメだよ。マクシミリアンさんが困ってるから」


 僕とニーナさんがそれぞれ声をかけると、アルテアは僕の真横にポスンと腰を下ろし、ジリウスはふわりとニーナさんの背後にピタリと付いた。性格は少し違うように見えるけど、こういう根本的な行動パターンは一緒なんだな…。


「…おほん」


 マクシミリアンさんが仕切り直すように咳払いを一つすると、真剣な視線を僕へと向けた。


「コータ殿、まずは無事に成果があったようでなによりだ」


 彼はジリウスを一瞥する。


「はい。この通り、問題なく起動しました」

「それは何よりだ。しかし…先日の大議事堂での決定の通り、暫くは彼の様子を見てもらいたい」


 そう、ジリウスに対する疑念が完全に晴れた訳ではないのだ。


「その試金石…というわけではないが。ひとつ、ニーナ殿に依頼を任せたい」

「私、ですか?」

「うむ。ギルドの共同体レゾナントとしての、初仕事だ」


 ぱさり、と。 マクシミリアンさんは数枚の資料を机へと広げた。


「コータ殿には懐かしい土地かもしれないが…エテリス大陸の西に位置する街、『ゼノス』。この街から北に数キロ進んだエリア…ここだ。ここで現在、魔物が不自然に活発化しているそうだ」


 ゼノス。

 リブロ遺跡の調査依頼で出発してから、色々とありすぎて全然戻れていなかったな。

 デリクさんやシャオさん…他のみんなも元気にしてるのかな。


「この周辺の魔物の制圧を、ニーナ殿とジリウス殿にお任せしたい。…当然、コータ殿とアルテア殿の監視付きだがね」

「…わかりました。やろう、ジリウスさん」

「了解、ニーナ」


 ニーナさんの力強い言葉に、ジリウスも短く応えた。


「まずはゼノス・ギルドへ向かい、現地の協力者と落ち合ってくれ」

「あ、待ってください。もう一つ、ウルゴ遺跡で気になることがあります」


 僕は、例の二人組を思い出していた。


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