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箱庭少女のロジック 〜かつて世界を滅ぼした最強のオートマタは僕の指示しか聞かないらしい〜  作者: 邑沢 迅
修復編

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第84話:灰色の記憶を抱いて

※この小説の続きをスムーズにお楽しみいただけるよう、【ブックマークに追加】を押して設定を保存してください。

「私はジリウスの『太陽』を完全には相殺することが出来ず、大陸のほぼ全土は焦土と化した。そして、役割を終えた私は神性魔導演算回路が機能を停止。タエが生き残っていることだけが観測できた最後の記録だ」


 薄暗い工場跡で、アルテアは、そのあまりにも壮絶な結末を、感情の乗らないいつも通りの声で語り終えた。


「ありがとう。…これが、神魔大戦の『神側の視点』か…」


 この世界に来てから、色々な文献でその伝承を読んだ。『1000年前の神魔大戦で、世界は一度崩壊した』と。

 それは当然、生き残った人類側の視点で残された記録であって、神の遣いとして動いていたアルテアたちの口から語られる真実には、ただただ圧倒されるしかなかった。


 そして、先日の『太陽事件』とひどく似ていた。ジリウスを操る管理端末の破壊衝動が、ウォルターのように本人の狂気による能動的なものだったか、誰かに操られていたかの違いはある。でも、起こった現象は全く同じだった。


 『神』は、いつか必ず衝突し、世界が崩壊することまでを想定して、執行端末を2機も造ったのだろうか……?ここまでくると、神が一体何を考えているのか、この世界の『理』の真相をどうしても知りたくなってくる。


ニーナさんは自分の肩を抱くようにして、震える声でぽつりと呟いた。


「タエさんは…一人きりで、あんな荒野に取り残されちゃったんだね。…ねえ、コータさん。ジリウスさんが目覚めたら、またあんなことが起きちゃうのかな。私…少し、怖いよ」


 潤んだ瞳で僕を見つめる彼女の指先は、小刻みに震えていた。

 無理もない。こんな話を聞いて、平然としていられるはずがないんだ。


「執行端末は、監視端末の指示によってのみ、破壊行動を開始する。よって、ニーナの指示がなければ、同様の事象は発生しないと断言できる」


 アルテアが、ニーナさんを見つめて言った。


 彼女なりの、フォロー…なのかな。出会った頃のアルテアなら、こんな風に相手の不安を打ち消すような言い方はしなかったはずだ。希望的観測かもしれないけれど、今のアルテアには確かに、感情に近い何かが芽生え始めている…そう思えて仕方がなかった。


「…ありがとう、アルテアさん。わかってる、わかってるんだけど…やっぱり、怖いよ」

「大丈夫だよ、ニーナさん。僕もアルテアもいるし、ジリウスだって、ニーナさんの事を待っているはずだから」

「うん…大丈夫…、大丈夫だよね!」


 僕の言葉に、ニーナさんは何度も頷く。自分に言い聞かせるように顔を上げると、そこにはいつもの、芯の強い彼女の瞳が戻っていた。


 タエさんの存在。そして、確かレガリスの王族たちは『大戦で生き残った人類の直系の子孫』として伝えられていたはずだ。


「エテリスの正史として伝えられている歴史…何かが、引っかかるんだけど…なんだろう…」

「確か、ギルド本部に資料室があったような…。戻ったら行ってみよう、コータさん」

「そうだね」


 誰か、エテリスの歴史について詳しい人はいなかったかな…。

 レガリスの王都、オーティスの知り合いと言えば…ヴィクトールさんあたりが詳しいかもしれない。今度、それとなく聞いてみよう。


 どっちにしろ、こんなところであれこれ考えていても仕方ない。

 今は戻って、ジリウスの修理を完了させるのが最優先だ。

 それに、ロックスさんとモーラさんの怪しい行動についても報告しないと。


「帰還するか、コータ」

「うん」


 僕はバッグをまさぐり、ジリウスのパーツがしっかりと入っていることを確認すると、施設の外へと歩き出す。


反重力アンチグラビティ。目標、セレスティア・ギルド本部」


 アルテアが静かに呟くと、ふわりと足元が浮き上がり、僕たちは再び大空へと舞い上がった。


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