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箱庭少女のロジック 〜かつて世界を滅ぼした最強のオートマタは僕の指示しか聞かないらしい〜  作者: 邑沢 迅
修復編

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第83話:そして、世界は灰へ染まった

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 アルテアの口から淡々と語られる『神魔大戦』の真実。

 それは、あまりにも凄惨で、理不尽なものだった。


「…神魔大戦って、ジリウスの監視端末だったウォルターって人が、ほぼ一人で引き起こしたものだったの…?」

「タエさん、名前の響きからして日本人…だよね…」


 次から次へと明かされる真実に、ツッコミどころが多すぎて頭が混乱してくる。


「ねえ、アルテア…。アルテアは、タエさんのこと、ちゃんと覚えてるの?」

「記憶ストレージには存在している」


「今、当時のことを思い出すと…どうかな」


 人間を理解しようとしている今のアルテアは、破壊を嘆き、必死に止めようとしていたタエさんの叫びを、どう感じているのだろうか。


「彼女の主張は、今の私なら『人間としての尺度』で解釈可能だ」


 アルテアは、微かに目を伏せるようにして言った。

 やっぱり…アルテアは明らかに変わってきている。ただの機械ではなく、心というものを、感情というものを理解しようとしているんだ。


「コータさん、私、続きが…」


 隣を見ると、ニーナさんが少し興奮した面持ちでアルテアを見つめていた。

 無理もないよな。荒唐無稽すぎて、まるで映画か神話の物語でも聞いているような気分になる。


「アルテア、そのあとはどうなったの…?」



 『神の使い』がもたらした終末は、文字通りあっという間の出来事だった。


 ものの数日で、世界の80パーセントは灰燼に帰し、焦土と化した。

 残るは、現在のレガリス王国にあたる地域――王都オーティス付近を残すのみ。


 タエは、ウォルターとジリウスの破壊を止めるため、最後の砦であるオーティス上空まで二人を追ってきていた。

 しかし、空に浮かぶタエとアルテアの姿を、追い詰められた人類が見逃すはずがない。

 彼らは最後の抵抗とばかりに、残存するありったけの火力をタエたちへと集中させていた。


「もう、私は敵やないんやって…!」

「タエ、無意味だ」

「決めつけんとって!言葉が通じる人間なんやから、やってみんとわからんやろ!」


 轟音と爆発の中でアルテアと口論していると、遠くの空から二つの人影――ウォルターとジリウスがこちらに向かってくるのが見えた。

 それと同時に、四つの『絶望』が空に揃ったのを見て人類側が完全に心を折られたのか、あるいは単純に残弾が尽きたのか…。次第に人類からの激しい弾幕は薄くなり、やがて完全に沈黙した。


 静まり返った絶望の空で、2組が対峙する。


「もう少し抵抗してくれないと…手ごたえがないよ」

「ここも、壊すんか」


 ウォルターの狂気に満ちた言葉を、タエは冷めた視線で睨みつける。


「そうだね。タエも一緒にやるかい?主要な拠点は、ここで最後だ」

「…分かった。アルテア」

「タエ、無意味だ。出力は完全に拮抗している」


 タエの鋭い声に、アルテアが珍しく制止の言葉をかける。


「もしかして、私たちと戦うってことかい!?それはいい!ジリウス、どうなるかな?」

「2号の言う通り、我々の出力は拮抗している」

「ジリウス…つまらないよ。やろう、全力で…!」


「了解、ウォルター。――太陽ギルティバーディクト


 ジリウスが右腕を振り上げた瞬間。 目を覆うような絶対的な光と熱を伴い、上空に巨大な『太陽』が出現した。


 『太陽事件』の比ではない、神に造られた素体から放たれる、純粋な破壊に満ちた太陽。


「アルテア!」


「了解、タエ。――相殺ロウリバーサル


 対するアルテアは、キラキラとした宝石の様な眩い輝きをその身に纏い、ジリウスの生み出した太陽へと真っ直ぐに突撃する。


「すごい…!完璧だ…」


 ウォルターはその神話のような光景を恍惚とした表情で眺め、対するタエは、絶望と悔しさの滲む表情でそれを見つめていた。

 『太陽』がさらに巨大化すると、それに呼応するようにアルテアの『宝石』がその熱と光を吸い上げていく。


「本当に、互角なのか。ジリウス、出力を上げて。――そして、僕をタエの近くに」


「了解、ウォルター」


ゴゥッ、と大気を焦がす轟音をあげ、太陽がさらに肥大化する。

そして、アルテアとジリウスが魔力を拮抗させているその死角から、ウォルターがタエへと肉薄した。


「え…」


「はははっ!」


 ゴッ…


 という鈍い音と共に、ウォルターの拳がタエを思い切り殴りつけた。

 さらに何度も、何度も、何度も。


「がっ…!」


「どうだい? これじゃあ、指示ができないだろう!」


「アル、て……ア……っ」


 激痛で意識が飛びかけ、タエの指示が数瞬だけ遅れた。

 神にも等しい互角の力比べにおいて、それは致命的すぎる隙だった。


 拮抗が崩れ、太陽が限界を超えて肥大化していく。


 アルテアを、空を、世界を、全てを飲み込むほどの巨大な光。


「世界の終わりだ…!私の手で、終わらせるのだ!」


 ウォルターの狂気的な歓喜の声と共に――太陽が爆ぜた。


 世界が、白に染まった。



 次にタエが気が付いた時。 彼女は、波の音が響く砂浜に倒れ伏していた。


「ウチ…生きとる…?アルテア…どこや……」


 フラフラと立ち上がり、周囲を見渡す。

 そこには、空を埋め尽くしていた戦闘機も、巨大な都市の面影もなかった。

 見渡す限り続くのは、何もかもが消し飛んだ、灰色の荒野だけ。


 タエは、ただ一人。


 当てもなく、荒野へと歩き出した。


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