第79話:ウルゴ遺跡と不敵な笑み
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セレスティアにあるギルド本部から北。
僕とニーナさん、そしてアルテアの三人は、反重力でウルゴ遺跡に向けて空を飛んでいた。
「あの、コータさん」
隣を飛ぶニーナさんが、控えめに声をかけてきた。
彼女が身を包んでいるのは、以前のイグニス軍の真っ赤な軍服ではない。
僕と同じ、動きやすさを重視したギルドの制服だ。
「どうしたの?」
「遺跡って、具体的には何があるの?」
「そうか、ニーナさんは遺跡探索は初めてなんだね。遺跡って呼ばれてる場所には、1000年前…神魔大戦時の基地とか、当時の住居なんかが残ってるんだ」
「なるほど…だから今回、ジリウスさんの修理パーツもあるかもってことなんだね」
「その通り。遺跡によっては、クラウドサーバ…神様のサーバとの接続が一瞬成功して、毎回新しい情報なんかが手に入れられることもあるんだ。もしかしたら、遺跡にはWi-Fi的なものが飛んでるのかも」
「クラウド…Wi-Fi…なんだか、急に私たちの世界っぽい雰囲気だね…」
「だよね。もしかしたら、1000年前のエテリスは、僕らがいた現代のもっと先の未来…みたいな感じなのかもしれないね」
そんな地球の歴史とエテリスの謎について考察していると、前方を飛んでいたアルテアがスッと速度を落とした。
「コータ、目的地が近い。…生体反応検知。数、2」
「あ、あれだね。また魔物が棲みついてるのかな?」
眼下には、緑に飲まれかけた廃墟らしき建造物が見えてきた。
「この反応は…おそらく、人間。いや…魔物…」
「……?アルテアが言い淀むなんて、珍しいね」
「…とにかく、降りてみましょう」
ニーナさんの提案に従い、僕たちは高度を下げていく。
どんどんと遺跡に近づくにつれ、得体の知れない緊張感が増してきた。
アルテアの精緻なスキャンで特定できない生体反応って、一体なんなんだ…?
「っと…あれ、起動してる……?」
遺跡の入り口に降り立つと、いつもの遺跡探索とは明らかに様子が違っていた。
目の前の、廃墟寸前とも言える工場のような施設からは、ズズズ…と低い駆動音が鳴り響き、すでに何らかのシステムが起動しているようだった。
いつもであれば、アルテアがアクセスしてシステムを起動させたり、何かしらのアクションが必要なはずなのに。
「コータ、気をつけろ。近づいてくる」
アルテアの鋭い警告が響く。
誰だ?
誰っていうか、そもそもそれは人間なのか…? 身構えた僕たちの前に、施設の物陰からゆっくりと二つの人影が姿を現した。
「あら、誰かと思ったら…見つかっちゃったみたいねぇ」
「コータ、ニーナ、コンニチハ」
そこにいたのは、ギルドで先日顔を合わせたばかりの二人組だった。
「ロックスさんに、モーラさん…!?なんでこんな所に?ギルドの依頼でしょうか?」
驚きのあまり間抜けな声を出してしまったが、ふとロックスさんの言葉が引っかかった。
『見つかった』って言わなかった…?
「ちょっと、探し物を、ね」
怪しげに微笑むロックスさん。その笑顔の奥に、得体の知れない冷たさを感じて背筋が粟立つ。
「アルテア…さっきの特定できない生体反応って、この二人のことでいいんだよね?」
「間違いないようだ」
「明らかに人間…だよね。アルテアさんのセンサーの故障…なのかな?」
ニーナさんも不思議そうに首を傾げる。
「やっぱり、神サマが造ったモノね…鋭くて嫌になっちゃうわ」
「ッハ!」
ロックスさんがため息をついた次の瞬間。
「障壁」
「うわぁっ!?」「きゃっ!」
隣にいたモーラさんが、突然僕とニーナさんに向かって凄まじい速度で飛び込んできた。
目にも止まらぬ奇襲だったが、寸前のところでアルテアが展開した障壁に弾かれ、モーラさんは軽い身のこなしでロックスさんの元へと戻っていく。
「コータ。モーラに敵意はないようだが、消去するか?」
「いや、やめて…消去はしないで」
物騒すぎるアルテアの提案を慌てて制止する。
それにしても、この二人は一体何者なんだ…?
「コラ!だめよ、モーラ。そもそも私たちじゃ、アルテアちゃんには敵わないわ」
「確カメタカタ…彼ガ執着スル…執行端末」
「もう…。ごめんね、私たちはもう行くわ。また遊んで…ねっ」
ロックスさんがバチンと艶やかなウインクを飛ばした瞬間――。
二人の姿は、文字通りかき消えるようにその場から消滅してしまった。
「アルテア、反応追える…!?」
「シグナルロスト。不可能だ」
空間転移…?
アルテアのセンサーですら追えないなんて。 一体、あの二人は何者なんだ…。
「モーラさんの言ってた、『彼』って…誰の事でしょう…?」
ニーナさんが、怯えたような、不安げな表情で呟く。
アルテアの検知失敗。
ロックスさんが言った『見つかった』。
モーラさんが言った『彼が執着する執行端末』。
わからないことだらけだ…。
ギルドに戻ったら、このことも報告しておこう。
「…敵意は無かったみたいだし、深追いしても仕方ない。とにかく、今はジリウスのパーツを探そう」
僕は嫌な予感を振り払うように、薄暗い遺跡の奥へと足を踏み出した。
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